オンラインサービスの利用規約を有効なものにするためには

IT・情報セキュリティ

 消費者向けのオンラインサービスを提供しています。あるユーザが、利用規約で禁止する行為をしたため、当社の判断で一定期間のアカウント利用を停止しました。ところがそのユーザは、「規約など読んでいない」とクレームを言ってきました。「読んでない」というユーザにも利用規約は適用されるのではないでしょうか。

 利用規約は、契約条件の一部を構成するものですから、単にウェブサイトに掲載してあるというだけでは適用するのは難しいでしょう。例えば、ユーザ登録や、商品の発注の際に、利用規約の内容を表示し、同意を示すチェック、クリック等があれば、原則として「読んでいない」ことを理由に利用規約の適用を排除することはできないと考えられます。

解説

目次

  1. 「利用規約」は掲載するだけでは足りない
  2. 「利用規約」を契約に組み入れるための条件
  3. ユーザに不利益な内容は慎重な運用が必要

「利用規約」は掲載するだけでは足りない

 インターネットを使った通販等の取引や、SNSなどのオンラインサービスにおいて、事業者がユーザに守ってもらいたいこと、理解してもらいたいことを「利用規約」等の文書に記載することが一般的です。しかし、「利用規約」の内容が、事業者と利用者との間の契約に組み入れられ、双方当事者が拘束されるためには、単にウェブサイトに「利用規約」が書かれたページのリンクを掲載するだけでは足りず、ユーザが、その内容を確認し、その内容に同意していることが必要です。

 オンラインサービスの利用も、契約である以上、両当事者が、その契約条件を理解した上で、それに従うという意思表示がなければならないからです。しかし、オンラインサービスにおいては、取引当事者が対面で取引を行うわけではなく、書面の取り交わしが行われることは稀で、電気通信回線を介して情報のやり取りだけに過ぎないため、どのような行為があればユーザが理解し、それに同意しているといえるかどうかが問題になります。

「利用規約」を契約に組み入れるための条件

 上述のとおり、電気通信回線を介したやり取りでは、ユーザが、真に利用規約の内容を確認し、それに同意しているということを確かめる方法はなく、あくまで外形的な行為によって判断せざるを得ません。この点について、経済産業省 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」平成27年4月版(以下単に「準則」といいます)の i23頁では、契約に組み入れられる例として次のような場合を挙げています(下線は筆者)。

  • ウェブサイトで取引を行う際に申込みボタンや購入ボタンとともに利用規約へのリンクが明瞭に設けられているなど、サイト利用規約が取引条件になっていることが利用者に対して明瞭に告知され、かつ利用者がいつでも容易にサイト利用規約を閲覧できるようにウェブサイトが構築されていることによりサイト利用規約の内容が開示されている場合
  • ウェブサイトの利用に際して、利用規約への同意クリックが要求されており、かつ利用者がいつでも容易にサイト利用規約を閲覧できるようにウェブサイトが構築されていることによりサイト利用規約の内容が開示されている場合

 他方で、組み入れられない例として下記の場合を挙げています。

  • ウェブサイト中の目立たない場所にサイト利用規約が掲載されているだけで、ウェブサイトの利用につきサイト利用規約への同意クリックも要求されていない場合

 オンラインゲームの利用規約の内容が合意内容に含まれるか否かが争われた事例(東京地裁平成21年9月16日判決(平20(ワ)第36662号))では、ユーザが、登録の際に規約が表示された画面において「承諾する」とのボタンをクリックした記録があったことから、仮に当該ユーザが各条項に目を通していなかったとしても、規約の内容に従うことに同意したものだと認められており、同様の判断をする他の裁判例もあることから、裁判所も準則と同様の立場に立つものと考えられます。

図:利用規約の組み入れが認められると考えられる例

 上記の図は、準則の例を参考にした画面の構成案です。ユーザ登録するためには、「利用規約の内容に同意します。」のチェックをした上で、登録することを必要としています。事業者は、チェックがされている場合のみ登録可能にすることが必要でしょう。

ユーザに不利益な内容は慎重な運用が必要

 準則が掲げるような例をそのまま実装すれば、必ずユーザの同意を得ていたと評価できるかどうかは、慎重な判断が必要です。

 例えば、詳細は割愛しますが、消費者契約法8条では、事業者の責任を全部免除するような規定は無効だと定めています。

 こうした強行規定に反する条項は、たとえ形式的に同意を得ていたとしても効力を生じないのはもちろんのことですが、たとえ明示的に強行規定に反しないとしても、サービスの性質から合理的に推測される範囲を超えた内容(例えば、天気予報に関する情報提供のアプリにおいて、端末内の連絡帳情報をすべて提供することに同意を与えるもの等)については、規約を表示し、同意クリックをしていたとしても、ユーザがその条件に拘束されることに承諾していたと評価できない場合もあり得るでしょう。

 また、消費者契約法3条1項は、消費者との契約の内容は「明確かつ平易なもの」となるよう配慮する義務を定めています。ユーザへの制約が大きい条件については、単に利用規約の目立たない個所にこっそりと書いておくような「不意打ち」を避け、丁寧かつわかりやすい説明が求められます。

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