インド進出にあたってどのような拠点を設立するべきか
国際取引・海外進出 当社もインドに拠点を設立しようと思っています。インドにおける会社は、日本の株式会社に相当するものと思ってよいのでしょうか。
また、支店、駐在員事務所というものもあると聞いていますが、 会社とは何が違うのでしょうか。
当社は製造業を営んでおり、インドにおいても製造を行うつもりですが、どのような拠点を設立するのがよいでしょうか。
インドにおいて事業活動を行う拠点を設立する場合、会社(Company)、支店(Branch)、駐在員事務所(Liaison Office)を設立することが考えられます。
インドにおける会社は、基本的な性質において日本の株式会社に近いものと考えられます。支店、駐在員事務所は、会社とは異なり、その活動範囲に制約があります。支店、駐在員事務所が製造業を行うことはできませんので、ご質問の場合は、会社を設立することになります。
解説
インドにおいて事業活動を行う拠点を設立する場合、会社(Company)、支店(Branch)、駐在員事務所(Liaison Office)を設立することが考えられます。
なお、このほかに、プロジェクト・オフィス(Project Office)というものが利用されることがありますが、やや特殊な制度であり、製造業を営む一般的な日系企業のインドにおける拠点として利用されることは想定しにくいものです。
会社(Company)
会社は、インドの会社法(Companies Act, 2013)に基づいて設立することができます。
会社にもいくつか種類がありますが、事業活動を行う拠点としては、株式による責任制限がされた会社(株主有限責任の原則が採用された会社)が選択されることがほとんどであるため、一般的な用法において単に「会社」といったときには、株式による責任制限がされた会社を指します。
株主が会社の所有者であり、配当受領権、残余財産分配請求権、株主総会における議決権行使等の権利を有すること、業務執行機関として取締役会が設置されること(所有と経営の分離)などから、基本的な性質において日本の株式会社に近いものと考えられます。
もっとも、インドの会社には監査役の制度がなかったり、一定の規模の会社には会社秘書役(Company Secretary)という制度があったり、と日本の株式会社とは異なる面もあります。
会社は、原則として定款に記載された目的の範囲の事業を行うことができます。もちろん外資規制やその他の業法規制などによって会社が事業として行うことができないものはありますが、「会社」であるという事実そのものからは、基本的に行える事業の範囲に制約はありません。事業を行う拠点としては、自由度が高いものと言えるでしょう。
なお、会社には、定款に株式の譲渡制限規定のある会社とない会社があり、前者を非公開会社(private company)、後者を公開会社(public company)と呼びます。前者は、日本法でいう閉鎖会社に近く、公開会社と比較するとガバナンスや運用に関する規定が緩やかであるため、特段の事情がなければ、日系企業がインドに置く拠点としてのインド子会社は非公開会社として設立されている場合がほとんどです。
支店(Branch)
支店は、外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)とその下位規則に基づき、あくまで外国法人の一部として設立されるものです。その事業活動は、以下の範囲でなければなりません。
支店の活動可能範囲
- 商製品の輸出入
- 専門的サービスまたはコンサルティングサービスの提供
- 本社として行う調査活動
- 本社または海外の関連会社とインド内国会社との間の技術上や財務上の提携のプロモーション
- 本社または関連会社のインド国内における代表としての行為、本社の買付け、販売代理店としての行為
- インド国内における情報技術及びソフトウェア開発に関するサービスの提供
- 親会社または関連会社の製品に関する技術サポートの提供
- 外国航空会社・船舶会社
駐在員事務所(Liaison Office)
駐在員事務所は、支店と同じく外国為替管理法とその下位規則に基づき、あくまで外国法人の一部として設立されるものであり、一般的にはインド進出の調査段階に利用されることが多いものです。許される活動の範囲は以下のようにさらに限定されています。駐在員事務所は、事業活動により独自に収益をあげることもできません。
駐在員事務所の活動可能範囲
- インド国内における本社または関連会社の代表または代理
- 商製品の輸出入のプロモーション
- 本社または関連会社とインド内国会社との間の技術上や財務上の提携のプロモーション
- 本社とインド国内企業との間のコミュニケーション窓口業務
以上に見られるとおり、支店、駐在員事務所ともに、活動可能範囲に製造は含まれておらず、インドにおいて製造を行う場合の拠点としてはふさわしくありません。この場合は、会社を選択すべきことになります。
法人形態 | 特徴 |
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会社 (Company) |
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支店 (Branch) |
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駐在員事務所 (Liaison Office) |
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アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業
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