インドの法制度の特色と日本の法制度との違い
国際取引・海外進出インドの法制度の特色を教えてください。日本とは違って判例が重視される法体系であると聞きましたが、明文の法令だけでなく、判例も熟知していないといけないのでしょうか。また、立法、行政、司法はどのように機能しているのでしょうか。
インドの法制度は、コモンロー(common law)という法体系を採っています。もっとも、ビジネスに関する法令の多くについては成文法が存在しています。立法、行政、司法が互いに抑制することを目指した三権分立制度を採用しています。
解説
インドの法体系はコモンロー
インドは、英国の植民地であった歴史的沿革から、英国の法制度の影響を強く受けており、コモンロー(common law)という法体系を採っています。コモンローとは、イギリスにおいて発展した先例(判例、伝統、慣習等)に重きを置く法体系です。日本は成文法を法源の基礎とする大陸法(civil law)の法体系を採用しています。コモンローと大陸法は、発想を異にしており、しばしば対比して論じられます。
もっとも、ビジネスとの関係では、ビジネスに関する法令の多くについては成文法が存在しており、商取引における基本的なルールを定めています。裁判所における判断もこのような成文法を基礎として解釈されることが通常です。
成文法のない判例上の法理も少なからず存在しますが、このようなケースは日本においてもありえ、インドにおいて通常のビジネスを遂行していく過程でコモンローと大陸法の差異を意識することは多くはありません。
インドと日本の法体系の違い
国 | 法体系 | 概要 |
---|---|---|
インド | コモンロー (Common Law) |
判例や慣習などの先例に重きを置く ただし、ビジネスにおいては成文法が存在する |
日本 | 大陸法 (Civil Law) |
成文法を法源の基礎とする |
インドの三権分立制度
インドも日本と同様に、三権分立の制度を採用し、立法、行政、司法が互いに抑制することを目指しています。
立法 - 両院制
インドの連邦議会は両院制を採っており、上院(Council of States)と下院(House of the People)によって構成されています。上院はラジャ・サバ(Rajya Sabha)、下院はロク・サバ(Lok Sabha)と呼称されています。法案は原則として両院により可決されることが必要ですが、下院の判断が優越する場合もあります。
また、法案が法律として成立するためには、さらに大統領の同意が必要であり、大統領は法案に対する拒否権を有するといえますが、大統領が拒否権を行使したことはこれまでにありません。
行政 - 実質的トップの首相と名目的な大統領
実質的な行政のトップは首相(Prime Minister)です。国家元首は大統領(President)ですが、大統領は首相が長を務める閣僚会議(Council of Ministers)の助言に基づき職務を執行するものとされており、その地位は名目的なものと解されています。
この点で、インドの大統領は、アメリカ合衆国における実質的・具体的な行政権を有する大統領とは大きく異なります。
司法 - 最高裁判所を頂点とする構造
インド憲法141条は、最高裁判所により宣言された法は、インド領内の全ての裁判所を拘束するとしており、インドの司法制度は、最高裁判所を頂点として構成されることを明示しています。
米国と異なり、連邦裁判所と州裁判所という二元的な構造ではなく、1つの最高裁判所のもとに単一のヒエラルキーが形成されています。最高裁判所に違憲審査権が付与されており、司法権の独立の保障に関する規定も存在します。

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