- 発売日
- 2017年02月25日
- 出版社
- 法律文化社
- 編著等
- 山下眞弘
第一線の研究者が多分野にまたがる事業承継問題を縦横に論じる。重要判例・学説を漏れなく解説しながら、最新の実務と留意点を簡潔に紹介する理論実務書。手に取りやすい文体や体裁を意識し、各章冒頭に要旨を、章末に参考文献を付す。
目次
表紙
はしがき
目次
凡例
第1章 相続と中小企業の事業承継―実務上の留意点と法務
1 はじめに
2 事業承継とは
(1) 準備は早めに
(2) 承継の方法
(3) 承継を進める際の注意事項
(4) 後継者や関係者への働きかけ
(5) 親族外の役員や従業員に承継
(6) 社内に後継者がいない場合
(7) M&Aを行うと役員はどうなるか
3 株式相続による事業承継
(1) 会社法106条の趣旨
(2) 何が問題となるのか
(3) 後継者への株式承継の方法と留意点
(4) 非公開会社の株式評価
4 相続による支配権剥奪を防ぐ方法
(1) このような事態を防止する方法
(2) 名義変更について留意すべき事項
5 資産を譲渡する場合の注意点
(1) 売買や生前贈与
(2) 遺言や死因贈与
(3) 遺言書の種類と留意点
(4) 遺言執行者の履行代行(復任権)
6 その他の留意点
(1) 後継者は保証人になる義務があるか
(2) 事業承継に要する費用
(3) 複数の子どもに会社を承継させる方法
(4) 事業承継対策を講じていなかった場合の対策
7 信託による事業承継
(1) 遺言による事業承継の問題点と限界
(2) 信託制度
(3) 信託による解決
(4) 信託と課税
(5) 信託登記の目的
(6) 一般社団法人を通じた信託の活用例
(7) 受託者の資格要件
(8) 事業信託
8 事業承継と税制
(1) 自社株の相続・遺贈・生前贈与
(2) 相続時精算課税と遺留分
(3) 非上場株式の譲渡と税
9 事業承継と労働者の処遇
(1) 何が問題か
(2) 事業譲渡の場合
(3) 会社分割の場合
第2章 事業譲渡に関する会社法規制
1 事業の譲渡等
(1) 会社法467条以下の規制内容
(2) 事業譲渡の特性――合併・会社分割とも比較して
(3) 事業譲渡の解釈問題
2 事業譲渡の承認
(1) 会社法467条の趣旨
(2) 事業の譲渡・譲受け
(3) 事業の全部譲渡と重要な一部譲渡
(4) 事業譲渡の解釈問題
3 事業譲渡等の承認を要しない場合
(1) 会社法468条の趣旨
(2) 略式事業譲渡――特別支配会社
(3) 簡易事業譲受け――小規模譲受けの特例
4 反対株主の株式買取請求制度
(1) 会社法469条の趣旨
(2) 買取制度の新しい機能
(3) 新旧2種類の価格算定基準
(4) 平成26年改正による買取請求後の撤回規制
(5) 略式事業譲渡・簡易事業全部譲受と買取請求排除
5 株式の価格決定
(1) 会社法470条の趣旨
(2) 公正な価格としての株式評価
(3) 裁判所による「公正な価格」の解釈
(4) 買取価格決定前の支払制度
(5) 買取の効力発生時点の変更
第3章 事業の重要な一部譲渡
1 本章の目的
2 事業譲渡の意義
(1) 組織的財産と事実関係
(2) 最高裁判決の解釈
3 会社分割と事業性
(1) 制度創設時における会社分割の対象
(2) 会社法における会社分割の対象
(3) 会社分割と競業避止義務
4 事業の重要な一部の基準
(1) 会社法制定前の議論
(2) 会社法における量的基準と質的基準
5 今後の課題
第4章 会社分割・事業譲渡の接近化
1 本章の目的
2 会社分割と事業譲渡
(1) 事業譲渡における事業性
(2) 判例における事業譲渡の意義
(3) 会社分割制度の創設
3 会社分割と事業性の要否
(1) 創設時における会社分割の対象
(2) 会社法における会社分割の対象
(3) 事業性の要否をめぐる議論
4 事業譲渡に係る法規制と会社分割
(1) 会社分割と競業避止義務
(2) 会社分割と商号続用者責任
(3) 会社分割と「債務の履行の見込み」
(4) 会社分割の当事会社
5 機能接近化と実務上の課題
(1) 事業譲渡に係る規制の類推適用
(2) 詐害的会社分割に関する会社法改正法案と事業譲渡
(3) 労働契約承継の効力
(4) 新しい法制の動向
第5章 商号続用責任規制の解釈論と立法論
1 何が問題なのか
(1) 譲渡会社の商号続用と譲受会社の無限責任
(2) 企業再建と第二会社方式の活用
(3) 事業譲渡と会社分割の意義
2 会社法22条1項の立法趣旨
(1) 本条導入の経緯
(2) これまでの本条の趣旨説明
(3) 本条2項・3項の趣旨
3 最近の関連裁判例
(1) 商号と屋号の続用
(2) 譲渡会社の略称を商号の一部に用い標章も用いた最新事例
(3) 債権者の主観を不問とした事例
4 商号続用基準か詐害性基準か
(1) 学会で提案された新基準
(2) 詐害性基準の問題点
(3) 商号続用責任規制の混乱原因
5 詐害事業譲渡規制の新設
(1) 平成26年改正と商号続用責任規制
(2) 解釈論の限界
(3) 立法論の検討
第6章 会社分割における債権者保護―平成26年会社法改正前の議論
1 本章の目的
2 最高裁平成24年10月12日判決の評価
(1) 本判決の要旨
(2) 本判決の意義
(3) 本判決の評価
(4) 近年の下級審の立場
3 民法上の詐害行為取消と法人格否認の法理
(1) 詐害行為取消権の法的性質
(2) 詐害行為取消と法人格否認の法理の適用関係
4 会社法改正要綱と民法改正中間試案の関係
(1) 要綱による規制
(2) 要綱の趣旨
(3) 民法改正中間試案による詐害行為取消規定
(4) 民法改正中間試案と会社法改正要綱の適用関係
5 今後の課題
第7章 株式・現金・預貯金・国債・投信受益権の相続
1 会社法と相続法の対話
(1) 会社法106条の法意
(2) 本章の検討課題
(3) 相続法との対話
2 遺産共有の性質論―共有・合有論の意義
(1) 株式共有の特殊性
(2) 共有説・合有説に共通の問題
(3) 合有説の実質的意義
3 現金・預貯金・国債・投信受益権の相続
(1) 現金
(2) 預貯金(金銭債権)
(3) 国債・投資信託受益権
4 相続株式の準共有―支配権の争奪
(1) 当然分割の立場
(2) 準共有(判例・通説)の立場
(3) 実質論からする検討
(4) 相続法理と事業承継の視点
5 遺産分割協議による解決と実務
第8章 非公開会社の株式相続と会社法
1 はじめに―相続法と会社法の交錯
2 株式相続の効果―共有か当然分割か
(1) 準共有とする立場
(2) 当然分割とする立場
(3) 準共有か当然分割か
(4) 相続法理の視点
3 権利行使者の権限とその指定方法
(1) 権利行使者の権限に制約があるか
(2) 権利行使者の指定――全員一致か過半数か
(3) 議決権の不統一行使
(4) 会社法制定後の参考判例
4 会社側からの権利行使の認容
(1) 判例の立場と評価
(2) 会社法106条但書の適用範囲
(3) 違法状態の是正と議決権行使
(4) 会社法制定後の参考判例
5 おわりに―円滑な事業承継の実現
(1) 経営承継円滑化法の活用
(2) 相続人に対する株式売渡請求
(3) 株式相続と事業承継
第9章 事業譲渡・会社分割と労働契約
1 何が問題なのか
2 事業譲渡と労働契約の承継
(1) 事業譲渡の意義
(2) 事業譲渡と労働契約の承継
(3) 事業譲渡と労働契約承継に関する原則論
(4) 原則論への批判と解決の方向
3 会社分割と労働契約の承継
(1) 会社法における会社分割の対象
(2) 日本IBM事件最高裁判決
(3) 判決の評価
4 解決の方向
(1) 会社法における労働者の位置づけ
(2) 会社分割における労働者保護
(3) 労働契約承継法の類推適用
(4) 事業譲渡に係る「原則非承継説」からの反論
5 おわりに
(1) 今後の課題
(2) 労働契約承継法に係る規則・指針の改正
(3) 改正後の実務対応
第10章 事業承継と信託の活用
1 信託の活用
(1) 遺言代用信託
(2) 他益信託
(3) 後継ぎ遺贈型受益者連続信託
2 信託活用と民法
(1) 相続財産・遺留分算定基礎財産
(2) 遺留分減殺請求の対象、相手方および効果
3 信託活用と会社法
(1) スキーム1
(2) スキーム2からスキーム4
4 会社法との関係で生じる議論
(1) 自益権と共益権の分属
(2) 非公開・中小会社の場合
(3) 公開・上場会社の場合
(4) 実質的理由の補足
索引
著者紹介
底本奥付
電子版奥付