- 発売日
- 2010年05月31日
- 出版社
- 有斐閣
- 編著等
- 大垣 尚司
豊富な金融実務経験と、大学における講義経験をもとに、「金融」に必要な法律知識と、それを金融実務上でどう活用すべきかということを、実務に即しながら、図やコラムを多用し、わかりやすく解説している。金融マン必携の書。
目次
表紙
目次
はじめに
1 本書の位置付け
2 本書の狙い
3 本書の読み方
(1) 金融の教科書として
(2) 法学部や法科大学院における副読本として
4 参照基本書
(1) 法律の基本書
(2) 金融関連の参考書
第1章 金融の基本概念①金融―現在価値―リスク
1 金融とは何か
(1) ファイナンスの定義
(2) 広義のファイナンス
(3) 金融技術
(4) 調達から投資へ
(5) 金融商品
(6) ファイナンスは誰のためにあるのか
2 現在価値という概念
(1) 何でもキャッシュフローの額で評価するということ
(2) 人間の値段①
(3) 中間利息と現在価値
(4) ファイナンスの定義再論
(5) 割引率の力
(6) 人間の値段② 生命保険
(7) 生命保険料の計算
(8) 判例再考
3 リスクという概念
(1) リスクと不確実性の違い
(2) 純粋リスクと投機的リスク
(3) リスクの定量化
第2章 金融の基本概念②企業-バランスシート-金融仲介
1 事業と企業
(1) 資本主義ともうけ
(2) 事業・営業(business)
(3) 企業(enterprise)
(4) プロジェクトとゴーイングコンサーン
(5) 会社
2 企業と経営者
(1) 資本家と労働者
(2) 経営者と投資家
(3) 理念型としての株式会社
3 情報の非対称性とエージェンシーコスト
(1) 情報の非対称性
(2) 不確実性とエージェンシーコスト
4 バランスシートと企業ファイナンス
(1) 企業ファイナンス
(2) 計算書類と財務諸表
(3) 複式簿記
(4) 貸借対照表(バランスシート)と損益計算書
(5) バランスシートとファイナンス活動
5 金融仲介と金融機関
(1) 金融仲介
(2) 講学上の投資銀行と商業銀行
第3章 金融の基本概念③デット-エクイティー-資本市場
1 資金調達の種類
(1) デットとエクイティー
(2) その他の資金調達形態
(3) 日本企業の資金調達状況
2 財務レバレッジ
3 デットvs.エクイティー
(1) デットのエクイティーに対する優先性
(2) デットとエクイティーの商品性の違い
4 最適資本構成
5 投資ファイナンスと資本市場
(1) 資本市場
(2) 資本市場の機能
(3) プライマリー市場(発行市場)とセカンダリー市場(流通市場)
(4) 金融商品取引法と市場規制
(5) 有価証券とデリバティブ
6 さまざまな金融商品市場
(1) 取引所市場と相対(あいたい)市場
(2) 金融商品取引所
(3) 金融商品取引所でない取引所
第4章 株式会社におけるエクイティー型投資ファイナンス①起業と株式の設計
1 株式会社による起業のメリット
(1) 資金提供者からみた有限責任の原則
(2) 権利関係の明確化と有価証券化
(3) 財務の透明性――不確実性の低減
2 起業―株式会社の設立
(1) 起業とビジネスモデル
(2) 事業計画の策定と事業資金の確保
(3) 創業時のファイナンスとエクイティー調達の必要性
(4) 会社(事業主体)の設立
(5) 会社組織の設計――定款の作成
3 金融商品としての株式の設計(1)――出資と利益分配のデザイニング
(1) 金融商品としての株式
(2) 出資の設計
(3) 配当等の設計
4 金融商品としての株式の設計(2) ―― 支配権のデザイニング
(1) 支配権の意義
(2) 支配権の制限
(3) 属人的種類株式
第5章 株式会社におけるエクイティー型投資ファイナンス②株式の流通と出口戦略
1 起業後の会社と出口戦略
2 株式の償還
(1) 株式償還の意味
(2) 存続中の会社による出資の払戻しの法律構成
3 金融商品としての株式の設計(3)――特殊な償還条件
4 金融商品としての株式の設計(4)――譲渡制限と出口保障
(1) 譲渡制限株式
(2) 譲渡制限株式の出口保障
5 上場(listing),IPO(initial public offering)
(1) 上場とIPOの定義
(2) 取引所と市場
(3) 上場の手続
6 市場を通じた投資回収
(1) 有価証券としての株式
(2) 株式売却の方法
(3) 証券取引所での取引
(4) 株式投資とキャピタルゲイン
7 証券流通とその担い手
(1) 証券会社
(2) 金融商品仲介業者
(3) 私設取引システム(PTS)
第6章 株式会社におけるエクイティー型投資ファイナンス③自己金融と増資による資金調達
1 エクイティーファイナンスとしての自己金融
2 キャッシュフロー
(1) キャッシュフローとは何か
(2) フリーキャッシュフロー
(3) 営業活動によるキャッシュフロー
(4) 利益とキャッシュフローの相違
(5) 現金保有の是非
3 増資:資金調達手段としての株式
(1) 新株発行
(2) 新株発行の形態
(3) 株式ファイナンスの特殊性
4 増資(1)――株主割当増資
5 増資(2)――公募増資
(1) 公募増資
(2) 公募増資と証券会社
(3) 公募・売出しにおける情報開示
(4) 新株予約権の意義と段階的公募増資スキーム
6 増資(3)――第三者割当増資
(1) 通常の文脈
(2) M&Aの文脈
(3) 事業再生の文脈
7 株式分割・株式無償割当・株式併合
(1) 株式分割
(2) 株式無償割当て
(3) 株式併合
第7章 デットファイナンスの基礎
1 デットファイナンスとは何か
(1) 定義
(2) 種類
(3) 金利
(4) デットファイナンスの法的形態
(5) 債権と責任財産
2 信用リスクと投資採算
(1) 信用リスク
(2) 投資採算分析
(3) デット提供者からみた投資採算分析の方法
3 証書貸付
(1) 前文(preamble)
(2) 定義規定(definition)
(3) 貸付人の貸出義務(commitment)
(4) 資金使途(use of proceeds)
(5) 借入申込手続と貸出前提条件(conditions precedent)
(6) 元本返済(repayment,amortization)
(7) 期限前弁済(prepayment)
(8) 金利,利払い方法(interest rate,interest payment)
(9) 費用負担・租税公課の負担(expense,tax indemnification)
(10) 債権保全関連の規定
(11) 相殺予約(set-off clause)
(12) 弁済充当の指定
(13) 債権譲渡(assignment clause)
4 債権保全関連の規定とコヴナンツ(covenants)
(1) 表明・保証と貸出しの前提条件
(2) 期限の利益喪失事由
(3) コヴナンツ(責任財産の維持と監視)
5 手形貸付と銀行取引約定書
(1) 短期融資の手段としての手形貸付
(2) 投資ファイナンスへの転用
6 当座貸越
(1) 本来の当座貸越
(2) 融資型当座貸越
7 融資枠契約(コミットメントライン)
(1) 融資枠契約の意義
(2) 貸出義務と約定料
(3) 極度枠と限度枠
(4) 融資枠の信用リスク
(5) 約定料の理論値
第8章 金利の基礎知識
1 金利とは何か
(1) さまざまな金利
(2) 法的にみた金利:利息債権
2 金利と期間
(1) 金利の期間構造
(2) 短期金融市場と債券市場
(3) 固定金利と変動金利
3 金利決定のメカニズム
(1) 資金調達コスト
(2) その他の調達原価
(3) 信用リスクプレミアム
(4) その他のプレミアム
4 金利提示の方法と基準金利の種類
(1) 内部コスト型
(2) 市場金利連動型
5 銀行と金利リスク
(1) 金利リスク
(2) 金利スワップ
(3) コア預金とBISの金利リスク規制
(4) 金融機関債
6 金利の規制
(1) 臨時金利調整法
(2) 利息制限法
(3) 出資法と貸金業法
(4) 遅延損害金の規制
第9章 間接金融機関
1 金融と業者規制
2 間接金融機関
(1) 間接金融と間接金融機関
(2) わが国における業態区分の特徴
3 銀行
(1) 法的位置付け
(2) 銀行と決済
(3) 銀行の信用創造機能と預金保険
(4) 銀行の種類
4 協同組織金融機関
(1) 法的位置付け
(2) 協同組織金融機関の種類
(3) これからの協同組織金融機関
5 信託銀行と信託会社
(1) 信託の基礎
(2) 信託銀行(trust bank)
(3) 信託会社(trust company)
6 保険会社
(1) 保険とは何か
(2) 保険業の規制
(3) 間接金融機関としての保険会社
第10章 市場型デットファイナンス
1 債券とは何か
(1) 意義
(2) 直接金融としての債券調達
(3) 流通市場とデット調達
2 債券の種類
(1) 公共債
(2) 社債
(3) 証券化商品
3 債券の条件
(1) 償還条件
(2) 金利条件
(3) 社債の信用補完
4 格付
5 会社法による社債の法規整
(1) 発行に係る決議要件
(2) 社債管理の法技術
(3) 社債管理者設置強制の例外
6 債券募集の仕組み
(1) 主幹事・社債管理者・財務代理人の選定
(2) 格付の取得
(3) 社内手続と弁護士の選定
(4) 法定開示の実施,目論見書等の作成
(5) 需要予測に基づく条件決定
(6) 債券の募集,引受け
(7) 社債原簿の調製,社債振替のための手続,券面の調製
7 債券ファイナンスと市場規制
(1) 行為規制と不公正取引の規制
(2) 開示規制と内部者取引の規制
(3) 開示規制の例外
第11章 市場型間接金融①シンジケートローン
1 市場型間接金融とは何か
(1) 市場型間接金融の定義
(2) 伝統的金融仲介との対比
2 市場型間接金融の2つの文脈
(1) 第1の文脈(市場型与信)
(2) 第2の文脈(間接型証券投資)
3 シンジケートローンとは何か
4 シ・ローン普及の背景
(1) 情報生産のあり方
(2) 投融資からの収益性の悪化
(3) 金商法の規制の回避
(4) 私募債との商品性の相違
5 シ・ローン契約を読む
(1) 契約全体の構成
(2) 貸出義務とその履行
(3) 利息等の按分計算
(4) 回収における貸付人間の公平の確保
(5) エージェントと利益相反
第12章 市場型間接金融②ローンセール市場
1 ローンセールとは何か
(1) ローンセールの定義
(2) ローンセールの合理性
2 古典的ローンセール:担保的利用
(1) 手形市場
(2) 抵当証券
(3) 住宅ローン流動化
3 BIS対策とオフバランス化のためのローンセール――売切型の登場
(1) BIS規制
(2) BIS対策
(3) 貸付債権流動化
(4) ローン・パーティシペーション
(5) 信用リスク削減手法と証券化
4 不良債権の処理とローンセール
(1) 不良債権処理の開示
(2) 税務上の配慮と損失の確定
(3) 不良債権回収業務の分離
5 正常債権の売買
(1) 正常債権売買の目的
(2) ローンのプライシング
6 クレジットトレーディング
第13章 市場型間接金融③投資ファンドと投資理論のつかみ
1 投資ファンドとは何か
(1) 間接型証券投資
(2) 投資ファンドの定義
(3) 投資ファンドの種類
(4) 投資ファンドの合理性
2 投資理論のつかみ
(1) 価格理論(pricing theory)
(2) ポートフォリオ理論(portfolio theory)
3 さまざまな投資ファンド
(1) アクティブ運用vs.パッシブ運用
(2) ヘッジファンド
(3) ベンチャーキャピタル,プライベートエクイティーファンド,企業再生ファンド
(4) ファンド・オブ・ファンズ
第14章 市場型間接金融④投資ファンドとCIV
1 投資ファンドの関与者
(1) 集団投資のための主体(CIV)
(2) 運用者
2 ファンド型商事信託
(1) ファンド型商事信託に関する法規整
(2) ファンド型商事信託の種類
(3) 信託の課税
3 投資信託法に基づく投資ファンド
(1) 投信法のCIV
(2) 証券投資信託と委託者指図型投資信託
(3) クローズド投信と会社型投信
(4) 不動産投資ファンドの導入
(5) 不動産事業者と上場REIT
(6) 信託会社と委託者指図型投資信託
(7) 運用業者,行為規制の金商法への統合
(8) 私募投信
4 組合型投資ファンド
(1) 組合とは何か
(2) CIVとしての組合契約
(3) 投資事業組合(任意組合型)
(4) 投資事業有限責任組合
(5) 匿名組合型投資ファンド
5 変額保険・変額年金
(1) 運用商品としての生命保険と利差配当
(2) 変額生命保険・変額年金保険
(3) CIVとしての保険契約
第15章 信用補完①破綻前信用補完と責任財産の保全措置
1 信用補完総論
(1) 信用補完とは何か
(2) 信用補完の諸相
2 破綻前における信用補完
(1) 返済確保のための措置
(2) 非金銭的信用補完
3 責任財産の保全
(1) コヴナンツ等の利用
(2) 責任財産保全のための措置
第16章 信用補完②人的信用補完
1 実損填補型人的信用補完
(1) 保証
(2) 有価証券保証の法技術
(3) 連帯債務の利用
(4) 債務引受によるもの
(5) 損害担保契約
(6) 念書
(7) 保険契約による信用補完
2 インデックス型人的信用補完
(1) クレジットデリバティブ
(2) クレジットデフォルトスワップ(CDS)
(3) CDS取引による信用補完の流動化
第17章 信用補完③物的信用補完
1 総論
(1) 物的信用補完の定義
(2) 物的信用補完の種類
(3) 人的信用補完vs.物的信用補完
2 責任財産操作型物的信用補完
(1) 責任財産型担保権
(2) 優先劣後構造(破綻後)
(3) ノンリコース特約
3 特定財産分離型物的信用補完
(1) 土地に対する担保設定
(2) 事業資産への担保設定
(3) 非事業資産・遊休資産への担保設定
(4) 不動産プロジェクトと収益執行
(5) 動産固定資産を用いた物的信用補完
4 多数債権者のための物的信用補完
(1) セキュリティートラスト
(2) 担保付社債信託
参照文献等
事項索引
判例索引
奥付