- 発売日
- 2017年02月01日
- 出版社
- 勁草書房
- 編著等
- 林紘一郎
「営業秘密は知的財産としてではなく、秘密として管理すべき」「ヒトがデータを所有するのではなく、データがヒトと帰属関係を持つに過ぎない。あくまでもデータが主体」「情報流通の不可逆性を前提にすれば、差止と削除命令など手続的な正義実現の重要性が増す」など、情報法に特有の法的現象を摘出したリーガル・マインドを提示する。
目次
表紙
まえがき
目次
第1章 情報の特質と法のあり方
1 情報法の非連続とレイヤ構造
「モヤモヤ感」が残る「情報法」
「情報法」の連続と不連続
レイヤ構造が基本
2 主体と客体の新しい見方
法の主体に関する情報学的な見方: Inforg
法人の二面性の示唆するもの
法の客体に関する所有権中心の見方と情報学的な見方
3 情報の不確定性
情報とはなにか(吉田説)
情報とはなにか(西垣説)
データ・情報・知識の3相(phase)
情報の機能に着目した3層(レイヤ)構造
4 情報法の3つのレイヤ
意思表示の手段としての情報
法的規律の手段としての情報
法的規律の対象としての情報
5 自己責任原則から手続的正義まで
名宛人と自己責任
救済措置の再検討:削除命令と差止命令
刑事罰の有効性と限界
実体と手続,事前と事後
初期値過敏性とデフォルト設定,オプト・インとオプト・アウト
6 インターネットの特性と法
サイバー法・インターネット法・情報法
インターネットの時間と空間
インターネットの基本理念と法
第2章 法的規律の対象としての情報:有体物アナロジーの工夫と転回
1 「情報の自由な流通」と「公正な利用」原則
情報流通の保護と禁止,事前の権利付与と事後の利益救済
原則と例外,例外の例外としての「公正な利用」
名誉毀損における「公正な表現」の調整原理
FFI + FUIを主張する別の理由
フェア・ユース論の根拠
2 知的財産(情報財)の保護と著作権の代表性
インセンティブの強弱による知的財産の分類
公開を前提にした事前の権利付与
創作と改変,法的保護と市場志向
参照モデルとしての著作権の適格性
グーグル・ブックス訴訟と有体物アナロジーからの脱却
3 秘密情報の保護と管理責任
自己管理責任付き秘匿権と知的財産型との対比
SecretとConfidential
Secret対Confidentialと差止制度
秘密の有効期限と管理責任
公開と秘匿のマネジメント
4 個人データの保護とプライバシーの保護
個人データと個人情報の混同
名和の7分類と匿名加工データ
客体論の限界と新たな展開
個人データ漏えいとプライバシー侵害の関係
再出発の起点と関係論の妥当性
理性的理解と感性的理解
プライバシー侵害の主観性克服への道
3つのアンバンドリング
5 「自由な流通」が禁止あるいは制約される情報
言論法の貢献とそれを超える試み
マルウェアという著作物とper se違法の困難性
6 有体物アナロジーの工夫と転回
「電磁的記録」による有体物とデジタル財の橋渡し
e 文書法による読み替え
有体物=所有権アナロジーの限界
第3章 品質の表示と責任:情報による品質保証の可能性と限界
1 品質保証
品質保証と情報の役割
見えない品質の保証=品質セキュリティ
製造物責任法と有体物アナロジーの限界
2 表示の偽装と法的対応
構造計算書の偽造か耐震強度の偽装か
2007年以降の偽装の実例
偽装に対する法的対応
表示の有効性と追跡可能性(トレーサビリティ)
内部不正と会社(業界)ぐるみ
3 品質表示の同意と第三者認証
インフォームド・コンセントという同意
品質保証の4つの手段
「信頼できる第三者」モデルと責任の加重あるいは軽減
第三者の要件(欠格事項)
情報行為における相互チェックの不可欠性
4 法人の意思表示と責任
法人の公衆に対する意思表示と責任のあり方
法人の民事責任としての「コミットメント責任」仮説
仮説と類似の発想?
禁反言の法理や表明保証との関係
5 情報管理の手続的保証
「情報の適切な管理」への合理的な期待と責任
営業秘密管理指針:StandardからRuleへ?
ISMS万能主義と法学者の対応
経営(マネジメント)と実務(マネジメント・システム)の乖離
経営の品質管理:内部統制と取締役の責任
内部統制,コーポレート・ガバナンス,ITの活用
第4章 情報法の将来:情報によって法律行為を規律する
1 参照モデルとしての「信任」関係
「一般的信頼」と「信任」(あるいは「信認」)
契約関係と信任関係
忠実義務・財産の分別・利益の吐き出し
信任関係と情報提供義務・守秘義務
関係法的見方としての信任
職業的懐疑心への期待と「安心から信頼へ」
2 「誤りやすい個人」と信頼関係
「合理的な個人」から「誤りやすい個人」へ
「情報をシェアするため」の信頼と「シェアすることによる」信頼
3 関係としての権利
所有のバーチャル化と情報に対する権利
「帰属・使用権」と「利用・収益権」のアンバンドル
参照モデルとしての著作権と「帰属権」という発想の原点
権利のアンバンドルと「権利を専有する」
権利の本質論と「ほどよい関係論」
4 IDの不可欠性とヒトと機械の関係
IDがなければ存在しえない,IDがあればIE(Identifiable Entity)になれる
信頼に基づくID認証連携と電子署名・電子認証
再び岩井とサイモンに訊く
人間とコンピュータの「ほどよい関係」
5 情報によって法律行為を規律する
メタデータとログ:情報による規律の基本要素
PC遠隔操作による誤認逮捕事件
電磁的証拠の重要性と司法の改革
メタデータと立法の改革
権利表明としてのメタデータの活用(登録・公示制度の見直し)
情報的行政行為から行政Inforg論へ
引用文献
索引
奥付