- 発売日
- 2020年07月22日
- 出版社
- 弘文堂
- 編著等
- 太田勝造、笠原毅彦、佐藤健、西貝吉晃、新田克己、福澤一吉
条文と判例の丸暗記のための「したごしらえ」のような法学入門ではなく、21世紀の法学入門の創造のために、法学、法社会学、AI研究、脳科学の研究者が、議論を重ねて執筆した「新しい法学入門」です。法が対象とする社会領域の実態とダイナミクスを理解すると、法と社会の相互作用が見えてきます。その相互作用を洞察する上で、最も変化が激しく、最も法的問題が多発し、最も法学が取り組まなければならない分野を各章で取り上げました。AI時代に必要な、文理融合・学際的視点からみた法学の世界が広がります。
目次
表紙
はしがき
目次
序章 はじめに―学際分野としての法学
はじめに―学際分野としての法学
コラム1 鼓腹撃壤とコースの定理
コラム2 法学教育のユーモア
第1章 法の解釈適用とは?
1-0 課題設定
1-1 ルールの解釈適用―日常の具体例から
1-1-1 おかず交換物語―AさんとB君のケース
1-1-2 おかず交換物語―CさんとD君のケース
1-1-3 CさんとD君の約束の解釈適用
1-1-4 Cさんの事実認定
コラム1 一般市民が刑事裁判をする:裁判員裁判
1-2 法の解釈適用とは?―日常のルール解釈との対比
1-2-1 法規範の基本構造
1-2-2 法の解釈適用―当てはめ判断
コラム2 法的判断としての解釈
1-3 事実認定とは?―日常のルール解釈との対比
1-3-1 証拠、間接事実、主要事実
1-3-2 三段論法
1-3-3 経験則三段論法モデルとその限界
1-3-4 確率判断としての事実認定―ベイズモデル
1-3-5 ベイズ意思決定論での確率概念
コラム3 プロスペクト理論
1-4 法的推論とは?
1-4-1 法的三段論法
1-4-2 複数規範の法的推論
コラム4 法の解釈適用の現実
1-5 創造的法解釈とは?―エヴィデンス・ベース・ロー
1-5-1 役に立つ法の分業による実現
1-5-2 立法事実アプローチ
コラム5
第2章 伝統的法学と21世紀法の政策科学
2-0 課題設定
2-1 伝統的法学の特色
2-1-1 比較法の重視
2-1-2 過去志向
2-1-3 個別志向
2-1-4 言語操作志向
2-1-5 排他志向
コラム1
2-2 伝統的な法学における裁判のモデル
2-2-1 要件・効果の発想
コラム2
2-2-2 概念法学
コラム3
2-3 エヴィデンス・ベース・ロー:立法事実アプローチ
2-3-1 法的道具主義
コラム4
2-3-2 法的道具主義の特色
コラム5
2-3-3 法と社会の共進化モデル
コラム6 ジム・クロー法
2-3-4 立法事実アプローチ
コラム7
2-3-5 エヴィデンス・ベースの法と社会の共進化
コラム8 「善い」共進化と「悪い」共進化?
第3章 法と意思決定
3-0 本章の構成と課題設定
3-1 トゥールミンの論証モデル
3-2 2つの論証タイプ:演繹的論証と帰納的論証
3-2-1 演繹的論証
3-2-2 帰納的論証
コラム1 根拠の信頼性と導出の妥当性
3-3 論拠を介して根拠が解釈される
3-4 暗黙に用意されている論拠
コラム2 9.11テロと論拠
3-5 トゥールミン・モデルのまとめ
3-6 法的三段論法:法的意思決定をするための論証法
3-6-1 法規範
3-6-2 要件事実
3-7 事実認定:法の世界vs 科学の世界
コラム3 法の世界の確率観vs 科学の世界の確率観
3-8 事実認定における理論的バイアス
3-9 法的証拠vs 科学的証拠
3-10 違法収集証拠の排除と実験補助仮定
3-11 意思決定を左右する論理的誤り
3-12 意思決定を左右する認知的誤り
第4章 社会秩序と法
4-0 課題設定
4-1 社会秩序
4-1-1 社会秩序とは?
4-1-2 社会秩序のモデル化
4-1-3 社会秩序としてのナッシュ均衡の評価
コラム1 検察官と刑事被告人の間の司法取引
コラム2 豊川信用金庫事件
4-2 法の正当性
4-2-1 投票による多数決の望ましさ―メイの定理
4-2-2 多数決の結果の正しさ―陪審定理
4-2-3 多数決の問題点:循環
コラム3 いろいろなパラドクス的状況
4-2-4 法のパラドクス
コラム4 噓つきのパラドクス
コラム5 国際私法の反致
4-3 社会秩序の法的制禦
4-3-1 法強制
コラム6 人々はなぜ法に従うのか?
4-3-2 法による正当化と説得
4-3-3 法の情報的効果
4-3-4 法のシグナリング効果
コラム7 ハンディキャップ原理
4-3-5 バトナとしての法
第5章 AI時代の法秩序
5-0 課題設定
5-1 ネット社会とは?
コラム1 インターネットって何?
5-2 インターネットの特質と問題点
5-2-1 情報の民主化
5-2-2 編集者の不在
コラム2 インターネット上では著作権を主張してはならない?
5-2-3 プロバイダの責任
5-3 新しい事象と法制度の対応
5-3-1 電子商取引(EC)
コラム3 六法とは
5-3-2 民法
5-3-3 商法
5-3-4 民事訴訟法
5-3-5 刑法・刑事訴訟法―サイバー犯罪条約
5-4 21世紀の法律への影響
5-4-1 物から情報へ
5-4-2 サイバー空間の拡大―「仮想」空間?
5-4-3 お金の持つ意味―ブロックチェインが変える未来
5-4-4 GAFA
5-5 AIが法制度に与える影響
第6章 法律エキスパートシステムと法的推論モデル
6-0 課題設定
6-1 法律エキスパートシステムとは
6-2 法律家の思考(法的推論)のモデル
6-2-1 基本的な法的推論のモデル
コラム1 法令を命題論理式にすることの難しさ
6-2-2 高度な法的推論のモデル
コラム2 ニューラルネットと深層学習
コラム3 2種類の否定
6-2-3 弁護士/ 検察官の弁論モデル(議論モデル)と裁判官の判決モデル
コラム4 ゲーム木の探索
6-3 論理型言語PROLOG
6-4 法律エキスパートシステムの紹介
6-4-1 英国国籍法の相談システム
6-4-2 判例を利用した論争システムHYPO
6-4-3 SPLIT-UP
6-4-4 ハイブリッドな法的推論システム:HELIC-II
6-4-5 ハイブリッドな法的論争システム例:New HELIC-II
6-4-6 法律エキスパートシステムの課題
コラム5 機械学習の法律業務への応用
6-5 要件事実論と人工知能
第7章 ニューロ・ローへ向けて
7-0 本章の構成と課題設定
7-1 脳神経科学と倫理
7-2 脳神経科学と自由意志、道徳的判断、自己責任
7-2-1 自由意志と脳にまつわるリベットの実験
コラム1 自分で自分をくすぐっても、くすぐったくない
7-3 責任能力を脳神経科学で決定する
7-3-1 精神鑑定の問題点
7-3-2 虚偽発言と脳神経科学
コラム2 言語の生物学的基礎
7-4 ニューロ・イメージング(Neuroimaging)
7-4-1 虚偽検出・精神障害鑑定とニューロ・イメージング
7-4-2 fMRIの虚偽検出の再現性と妥当性
コラム3 純粋失読と視覚・言語離断症状
7-4-3 経頭蓋磁気刺激法(TMS : Transcranial Magnetic Stimulation)
7-5 裁判所が採用する科学的証拠の基準
7-5-1 有罪・無罪の決定と脳画像診断結果
7-5-2 処罰・刑罰の執行と脳画像診断
7-6 脳神経科学的知見の証拠能力の現状のまとめ
第8章 情報刑法―序説
8-0 はじめに
8-1 課題設定
8-2 三分法というモデルの紹介(情報/データ/存在形式)
8-3 情報とデータ
8-3-1 導入としての思考実験―営業秘密とコンピュータ・データ
8-3-2 情報とデータの関係
8-3-3 文脈により変容し得る情報の価値
コラム1 情報のわいせつ性の判断手法
8-3-4 データのレイヤーにある議論
コラム2 日本の不正アクセス罪の特徴
コラム3 サイバー・フィジカル・セキュリティの保護の必要性
コラム4 言語選択と情報:情報の評価と情報の伝達可能性の評価の分離
8-4 存在形式:有体物か否かという問題の一般化
コラム5 データ損壊と器物損壊の関係
8-5 三分法の全体にまたがる規制?
8-6 まとめ
第9章 最終章―結びにかえて
9-1 多層で入れ子構造の人間社会の法的制禦
コラム1 入れ子構造のホロホロ鳥社会
9-2 シームレスにつながった個人:今後の課題
コラム2 アンビヴァレンツなヒト
9-3 終わりに
事項索引
著者紹介
奥付