BUSINESS LAWYERS LIBRARY

中国のデジタル戦略と法

発売日
2022年11月15日
出版社
弘文堂
編著等
石本茂彦、松尾剛行、森脇章、岡野寿彦、小野寺良文、角本和理、胡悦、田中信行、劉淑珺

ICTの社会実装が他国に先駆けて進み、デジタル化の最先端を爆進する中国。市民生活の福利増大という「光」と、いわゆる「信用スコア」に代表される監視社会化の懸念という「影」とが同居している。本書は、日本もいずれ迎えるデジタル社会の展望と課題をあぶり出すべく、中国のデジタル戦略とそれを支える情報法体系を分析。中国法やその実務に精通した第一人者たちの解説により、欧州や日本とも全く異なる「国家安全」を頂点に紐づけられた中国独特の情報法のあり方が浮かび上がる。ここでしか読めない深い考察に満ちた、関係者必見の一冊。

目次

表紙

はしがき

目次

第0章 本書の概要 ――情報法にみるデジタル中国の光と影――[石本茂彦]

1. はじめに

2. 各章の概要

2.1 第1章 「中国デジタル化の進展と法整備の課題」(執筆担当:岡野寿彦)

2.2 第2章 「国家安全と情報法」(執筆担当:石本茂彦)

2.3 第3章 「個人情報の保護と国家のデータ利用」(執筆担当:松尾剛行/胡悦)

2.4 第4章 「ネットワーク安全法と対中ビジネス」(執筆担当:森脇章)

2.5 第5章 「情報分野における中国競争法の動向―プラットフォーム関係を中心に―」(執筆担当:松尾剛行/劉淑珺)

2.6 第6章 「データローカライゼーション」(執筆担当:小野寺良文)

2.7 第7章 「デジタル人民元の背景と展望」(執筆担当:岡野寿彦)

2.8 第8章 「社会主義市場経済における暗号資産をめぐる法」(執筆担当:角本和理)

2.9 第9章 「監視社会への歩み―国家にとっての個人情報―」(執筆担当:田中信行)

3. 注目トピックと各章での言及

4. 結語

第1章 中国デジタル化の進展と法整備の課題[岡野寿彦]

1. 中国インターネットビジネスの進展と法的課題

1.1 中国プラットフォーム経済の進化プロセス―消費者の利便性、体験を起点とする「ニューノーマル」創り

1.2 データインテリジェンス(データとAIの活用)をめぐる競争―個人情報保護の強化

2. 中国政府のIT政策と法整備―データの活用をめぐる戦略とルール形成

2.1 中国政府のIT政策―インターネットをエンジンとする経済社会の構造改革

2.2 科学技術強国の建設と規制ポリシーの変化

2.3 中国発デファクト標準とデータの活用をめぐるルール形成

3. 中国情報法の整備の動向

3.1 個人情報保護法の制定

3.2 プラットフォーマーの市場支配力と競争環境の整備(独占禁止法)

3.3 ビッグデータ等の情報保護(不正競争防止法)

3.4 協業ネットワークにおける企業間の責任関係

4. 中国政府のプラットフォーマー規制強化―イノベーションと規範化のリバランス

4.1 プラットフォーマーへの規制強化の分析観点

4.2 中国の「制度」としての国家と企業の関係性

4.3 民間企業に期待する/認める事業範囲の再整理

4.4 米中対立が激化する中で貧富の格差など「中国国内の矛盾」解消を目的とする政策体系の構築

4.5 プライバシー保護、公正な市場競争、不正競争の防止など世界的な法制化・運用の動向も踏まえてルール化を進める動き

コラム イノベーションと規範化・個人情報保護―医療テックの進展と法整備

第2章 国家安全と情報法[石本茂彦]

1. はじめに

1.1 国家安全・国家主権と情報

1.2 本章の構成

1.3 「信息」と「情報」

2. 中国の安全保障観と国家安全法制

2.1 歴史的視点

2.2 総体的国家安全観

2.3 国家安全法

2.4 刑法(国家安全危害罪)

2.5 国家安全に関する主な法令

2.6 「経済安全保障」という視点

3. 情報の国家的コントロール

3.1 安全保障と国家的情報コントロール

3.2 国家による情報(インテリジェンス)の収集

3.3 国家による情報の管理と利用

3.4 情報の流通・国外移転

4. ネットワーク/データ安全法と国家安全

4.1 サイバー/データ主権の確立

4.2 党による主導

4.3 ネットワーク安全法の主な内容

4.4 データ安全法の主な内容

4.5 重要情報インフラの保護・規制

4.6 重要データ等のデータローカライゼーション・越境移転規制

4.7 ネットワーク/データ安全審査

4.8 ネットワーク/データ安全保護義務と罰則

5. 技術情報の輸出と国家安全

5.1 安全保障貿易管理と国際輸出管理レジーム

5.2 中国の輸出管理制度

5.3 技術輸出管理

6. 暗号法と国家安全

6.1 暗号規制と安全保障

6.2 暗号法の制定

6.3 ブロックチェーン等

7. ITと経済安全保障的産業政策

7.1 「中国製造2025」

7.2 「情報化」と産業政策

7.3 軍民融合と先端産業の支援

7.4 補助金等の施策

7.5 標準化戦略

8. 結語

第3章 個人情報の保護と国家のデータ利用[松尾剛行/胡悦]

1. 中国におけるデジタル社会発展に対する姿勢とその特徴

1.1 中国におけるデジタル社会の発展―コロナ対策を例にとって

1.2 デジタル社会を支える新技術の情報法上のリスク

1.3 国家・政府による、新技術を活用した市民の情報の利用

1.4 本章の視座

2. 中国の個人情報保護制度の概要

2.1 概観

2.2 個人情報保護法

2.3 公法

2.4 私法

2.5 刑事法

2.6 ガイドライン

3. 中国のプライバシー保護制度の概要

4. 中国の個人情報制度の特徴―国家の関与

4.1 民間の個人情報利用に関する国家の関与(安全評価、承認等)

4.2 国家によるデータ管理がもたらす問題

4.3 国家の個人情報利用に関する規定

4.4 信用システムに関する具体例

5. 本章で検討していない法令等

5.1 不正競争防止法

5.2 独占禁止法

5.3 その他の最近の法令の動き

第4章 ネットワーク安全法と対中ビジネス[森脇章]

1. はじめに

2. ネットワーク安全法等の概要―日系企業がすべきこと

2.1 主体の類型

2.2 主体ごとに要求される体制整備、制限および義務

3. 法令遵守の先にあるもの―日本企業ができること

3.1 「似て非なる中国法」

3.2 中国の特色ある社会主義

3.3 日本企業ができること―まとめにかえて

第5章 情報分野における中国競争法の動向――プラットフォーム関係を中心に――

1. はじめに

2. 独占禁止法

2.1 情報分野(主にプラットフォーム)に関連する法令およびガイドライン等

2.2 市場支配的地位の濫用

2.3 事業者結合

2.4 それ以外の類型

3. 不正競争防止法

3.1 不正競争防止法

3.2 ネットワーク不正競争禁止規定

3.3 不正競争防止法に関する事例

4. 将来的な動向および課題

4.1 個人情報保護と独占禁止法

4.2 アルゴリズムによる独占協定に関する意思の連絡

第6章 データローカライゼーション[小野寺良文]

1. はじめに

2. 中国のデータ囲い込み戦略

3. 中国のデータ越境移転規制

3.1 規制の全体像

3.2 ネットワーク安全法

3.3 データ安全法

3.4 個人情報保護法

4. データの国内保存義務

4.1 ネットワーク安全法

4.2 個人情報保護法

5. 結語

第7章 デジタル人民元の背景と展望[岡野寿彦]

1. デジタル・エコシステムの形成における金融機能の役割と課題

1.1 金融機能を活用したエコシステム構築―テンセントの事例

1.2 民間企業主導のエコシステム形成による金融政策への影響

1.3 「民間企業と政府の役割」「イノベーション創出と規範化」とのバランスをとり直す動き―デジタル化時代の国家とプラットフォーマーの関係

2. デジタル人民元の目的と特徴・課題

2.1 デジタル人民元の目的

2.2 デジタル人民元の試験運用の状況

2.3 デジタル人民元の特徴

2.4 デジタル人民元の対外的なインパクト

コラム デジタル化による中国社会の変容―アリババ「相互宝」(相互監視型医療共済)

第8章 社会主義市場経済における暗号資産をめぐる法[角本和理]

1. はじめに

1.1 社会的背景

1.2 分析視角―ブロックチェーン・エコシステムの三層構造モデル

1.3 叙述の順序

2. 暗号資産と民法典

2.1 民法総則(2017年10月1日施行)について

2.2 民法典(2021年1月1日施行)について

3. 仮想通貨と法

3.1 はじめに

3.2 仮想通貨の具体例

3.3 仮想通貨に関する社会問題

3.4 通知等

3.5 法的争訟例

3.6 若干の考察

4. ブロックチェーンと法

4.1 はじめに

4.2 法律・規則等

4.3 中国におけるブロックチェーン活用事例

4.4 若干の考察

5. 中央銀行デジタル通貨(デジタル人民元)と法

5.1 はじめに

5.2 中央銀行デジタル通貨の取扱いに関する議論

5.3 中央銀行デジタル通貨をめぐる中央銀行と関係者の法律関係に関する議論

5.4 中央銀行デジタル通貨をめぐる法規制に関する動向

5.5 若干の考察

6. 新たな暗号資産と法

6.1 はじめに

6.2 デジタル証券

6.3 デジタルコレクション

6.4 若干の考察

7. まとめと今後の展望

第9章 監視社会への歩み――国家にとっての個人情報――[田中信行]

1. はじめに

2. 監視社会化への背景

2.1 改革開放政策による社会変動

2.2 IT時代の治安管理

3. 平安都市が目指した社会

3.1 急増する紛争と悪化する治安

3.2 平安都市建設の展開過程

3.3 烏坎村事件の衝撃

4. 中国的監視社会の特徴と問題点

4.1 社区矯正制度に潜む危機

4.2 個人のものではない「個人情報」

5. 強まる国の管理

5.1 混合所有制改革がめざすもの

5.2 東方網力の国有化

6. おわりに

6.1 アップルの恐るべき打算

6.2 国有化政策の見直しはあるか

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