- 発売日
- 2023年09月29日
- 出版社
- 日本評論社
- 編著等
- 三輪佳子
2000年以降の生活保護制度激動の20年を、国・自治体の関係や省庁間の折衝、審議会や司法判断を分析し、政策決定を方向付けてきた要因を明らかにする意欲作。
目次
表紙
はしがき
目次
第Ⅰ部 「費用分担」は国と地方のパワーバランスをどう変えてきたのか
序章 生活保護の2000年代とは
序-1.はじめに
序-2.生活保護政策をめぐる研究動向および中央と地方のパワーバランス
序-3.本研究の目的と方法
序-4.本書の構成
第1章 生活保護における権限と費用の分担
1-1.新生活保護法成立までの費用分担
1-2.救護法から新生活保護法成立までの整理
1-3.サンフランシスコ講和条約締結と第一次「適正化」(1954)
1-4.第二次臨調答申による第二次「適正化」と国庫補助率見直し(1983-1988)
1-5.地方分権改革の始まりと費用分担(1989-2000)
1-6.三位一体改革、そして費用分担の見直しへ(2001-2004)
1-7.費用分担の見直しから「適正化」へ(2005)
1-8.「適正化」から新たな「分担」へ(2006-2022)
1-9.人数において最大のステークホルダーとしての生活保護受給者の出現(2015-)
1-10.生活保護における費用分担と地方の位置づけの変化
第2章 国からの生活保護費予算は何を制御していたのか
2-1.生活保護政策決定と実施における組織連関
2-2.国からの生活保護費予算による制御の流れ
2-3.費用負担率の変化が「投資効果」に与える影響
2-4.生活保護が消滅した場合、誰が何を制御する必要があるのか
第3章 費用分担は国と地方の関係をどう変えたのか
3-1.2006年、なぜ「財源なき権限移譲」の中で「財源を失わない権限移譲」が実現したのか
3-2.「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(2003~2004年)
第4章 生活保護基準決定に関する財務省と厚生労働省の攻防(2000-2009)
4-1.2001年~2009年における社会保障政策の推移の概略
4-2.生活保護基準の「物価スライド」に関する検討
4-3.水準均衡方式における参照階層に関する検討
4-4.「参照階層」という厚生労働省のレジスタンス
第Ⅱ部 費用分担は、どのように「ワークフェア」政策を促進したのか
第5章 生活保護分野における「ワークフェア」概念の出現と発展(1945-2009)
5-1. ワークフェアの起源――20 世紀後半における「働かざる者、食べるべからず」の社会実装
5-2.米国における「ワークフェア」の出現と普及
5-3.福祉国家の成立と「ワークフェア」出現まで
5-4.米国、および各国における「ワークフェア」の出現と福祉国家の関係
5-5.「 積極的」就労促進の諸相――アクティベーションはワークフェア政策を成功に導いたか
5-6.日本人の勤労観と「働かざる者、食べるべからず」への異議申し立て
5-7.日本の社会保障政策は、どのように「ワークフェア」概念を取り込んだのか
第6章 生活保護政策における「ワークフェア」概念の出現と発展
6-1.生活保護制度改革以前(1945-2000年前後)
6-2.生活保護制度改革の開始から民主党政権成立まで(2001-2009)
第7章 民主党政権下における生活保護政策(2009-2012)
7-1.母子加算と老齢加算の「明暗」(2009)
7-2.脅威視された「その他の世帯」と地方発の「適正化」提案(2009-2010)
7-3.東日本大震災と「国費100%」を切り口とした地方の発言力増大(2011)
7-4.実現に向かう地方発「適正化」(2012)
第8章 第二次安倍政権成立以後の生活保護政策(2012.12-2022)
8-1.改正生活保護法および生活困窮者自立支援法の成立と「物価偽装」(2013)
8-2.日本の住環境から切り離される生活保護の「住」(2014)
8-3.ネグレクトされる寒冷地の生活保護受給者たち(2015)
8-4.「 引き下げ部会」に対する部会長代理の異議申し立て(2016)
8-5.とめどない権利剥奪に向かう生活保護(2017)
8-6.生活保護世帯の子どもたちに対する「選択と集中」(2018)
8-7.証言台に立つ元部会長代理(2019)
8-8.「生活保護は権利です」という厚生労働省のアピール(2020)
8-9.深刻化するコロナ禍、被虐待経験者らの「選択肢をください」(2021)
8-10.基準引き下げへの行政のアクセル、司法のブレーキ(2022)
第9章 生活困窮者の社会的包摂が就労支援と生活保護利用抑制に収斂 した過程、およびその後――「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」(2012-2013)と関係者インタビューより――
9-1.生活困窮者自立支援法は社会保障制度なのか
9-2.「 生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」以前の「自立」概念の議論
9-3.「 生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」における「自立」概念の議論
9-4.「 生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」(2012-2013)について
9-5.「自立」の名のもとに防衛された、支援しない「自由」
第Ⅲ部 生活保護の政策決定を方向づけるもの
第10章 生活保護における政策決定モデルの検討
10-1.生活保護における組織連関モデルへの変化の反映
10-2.2001年以後の生活保護政策決定の力学、および方向転換の可能性
終章 セーフティネットのある日本を実現することは可能なのか
終-1.総括─生活保護制度改革は、例外的な「財源つき権限移譲」だったのか
終-2.結局は「財源なき権限移譲」であった生活保護制度改革
終-3.「セーフティネット」のある日本を実現するために
附章 厚生労働省「生活扶助相当CPI」に関する批判的言説、計算方式、および使用された数値の検討
附-1.生活扶助相当CPIの特徴
附-2.生活扶助相当CPIの出現と2013年の生活保護基準見直し
附-3.立法の場における検討
附-3-1.福島みずほ(社会民主党)による国会質疑(2013年2月)
附-3-2.長妻昭(民主党(当時))による国会質疑(2013年4月~ 8月)
附-3-3.辰巳孝太郎(共産党)による国会質疑(2014年6月)
附-4.学術界による検討
附-5.生活扶助相当CPIの内実
附-5-1.計算内容への疑義
附-5-2.物価指数の計算手順
附-5-3.厚生労働省が行った計算と妥当性の検討
附-6.ラスパイレス方式の計算原理と厚生労働省の計算との関係
附-7.パーシェ方式の計算原理と厚生労働省の計算との関係
附-8.統計局方式で計算した場合との差異
附-9.テレビやPCの支出額割合の過大評価
附-10.不適切な「根拠」に基づく政策決定への批判
あとがき
参考文献
奥付