BUSINESS LAWYERS LIBRARY

棋譜に著作権はあるのか

発売日
2026年06月03日
出版社
弘文堂
編著等
松尾剛行

棋戦における棋譜は著作権で保護されるのか? 保護されなくてもよいのか? 将棋ファンによる棋譜の利用はどこまで認められるべきか?――こうした「棋譜」をめぐる法的保護の問題について詳述。棋譜の保護については法学界のみならず、将棋界においても重要な論争となっており、すでに多くの事件が裁判で争われ、大きな話題になっています。裁判所がどのような根拠に基づき、どの範囲で棋譜を保護するとしているのかを明らかにするとともに、将棋界の発展とファンの自由の調和という観点から、バランスのとれた棋譜利用ルールのあり方を提言。

目次

表紙

目次

第1章 注目を集める、棋譜に関する判決

1 棋譜の法的保護とは

(1) 棋譜の「独占権」の根拠は?

(2) 著作権による保護の可能性

(3) 不法行為による保護の可能性

2【リアルタイム配信逆転不法行為事件】

(1) 事案の概要

(2) 裁判の構造に関する若干の補足

(3) 棋譜が著作権で保護されるかに関する言及

(4) 不法行為を否定した一審の判断

(5) 不法行為を肯定した控訴審の判断

3【非リアルタイム配信非不法行為事件】

(1) 事案の概要

(2) 裁判所の判断

4【棋譜当日再現動画損害賠償命令事件】

(1) 事案の概要

(2) 非リアルタイムで損害賠償を認める!

(3) 不法行為性

(4) 損害

まとめ

コラム 民事訴訟の基本

第2章 変化を迫られる、「棋譜独占権」という伝統的なビジネスモデル

1 主催者=新聞社が棋譜を秘匿し、自社紙面で独占公開するビジネスモデル

2 リアルタイム配信の広がり

3 「公式配信」の種類

4 収益源の多様化

5 棋譜そのものの提供を超えた、棋譜に付加価値をつける動き

6 裁判例にみる棋譜の価値

(1) 【リアルタイム配信逆転不法行為事件】控訴審判決の関連する判示

(2) 【棋譜当日再現動画損害賠償命令事件】

(3) 裁判所の見解をどう理解すべきか

まとめ

コラム 不法行為とは

第3章 棋譜ガイドラインをひもとく

1 ガイドライン制定に至るまで

2 ガイドラインとその内容

3 ガイドラインに対する評価

(1) 全ての棋戦を網羅しているわけではない

(2) ガイドラインの内容の不統一性

(3) ファンの利用に対して厳しいルールを示す棋戦も

(4) 配信者はガイドラインを遵守しているのか?

4 ガイドラインと萎縮効果

(1) 2種類のガイドライン

(2) 萎縮効果を防ぐために

(3) 現行の棋譜ガイドラインに関する疑問

まとめ

コラム ガイドライン未制定の棋戦は自由に棋譜を利用することができる?

第4章 棋譜は著作権で保護されるか

1 著作権とは何か

(1) 情報に関する強力な独占権としての著作権

(2) 著作権の対象――著作物

2 棋譜の著作物性について最終的な判断が下されたことはない

(1) 【リアルタイム配信逆転不法行為事件】の衝撃的な判断

(2) 【リアルタイム配信逆転不法行為事件】を正しく理解する

(3) 棋譜の著作物性に関する裁判所の姿勢

3 著作物とは何か

(1) 著作物であることの意味

(2) 著作権法の目的

(3) 著作物の定義

(4) 棋譜との関係で特に問題となる要件

4 棋譜の著作物性に関する学説

(1) 学説概観

(2) 肯定説

(3) 否定説

(4) 中間説、その他

5 どのように考えるべきか

(1) 考えの筋道

(2) 何を検討対象とするか

(3) 否定説のポイント

(4) 私見

まとめ

コラム 訴訟における当事者の意向の尊重

第5章 著作権と不法行為の関係を明らかにした最高裁判決(北朝鮮映画事件)

1 北朝鮮映画事件を検討する意義

2 北朝鮮映画事件とは

(1) 事案の概要

(2) 裁判所の判断

(3) 裁判所の判断の意味

3 北朝鮮映画事件を踏まえた学説の議論

(1) 不法行為と著作権の関係一般の議論

(2) 北朝鮮映画事件と棋譜の相違

(3) 特段の事情の具体的内容

4 バンドスコア事件

(1) 事案の概要

(2) バンドスコア事件判決

(3) 本判決の評価

まとめ

コラム 不正競争防止法違反にならない事案について不法行為で保護した事案

第6章 棋譜の無断利用者の動画削除に関する二つの事件

1 動画プラットフォームにおける権利侵害通告の違法性

(1) はじめに

(2) 編み物系配信者事件

(3) 不正競争防止法の営業誹謗

2 【リアルタイム配信逆転不法行為事件】一審――棋譜の権利者敗訴

(1) 事案の概要

(2) 本判決の判断

(3) 囲碁将棋チャンネルの主張方法に課題があったこと

(4) 本判決を支持する見解

3 【リアルタイム配信逆転不法行為事件】控訴審――棋譜の権利者勝訴

(1) 控訴審判決

(2) 判決変更の理由

(3) この判決の判断は正当か

(4) 「著作権侵害」と通告すべきであったか

4 【非リアルタイム配信非不法行為事件】一審判決――棋譜の権利者敗訴

(1) 事案の概要

(2) 一審判決

(3) 評価

5 【非リアルタイム配信非不法行為事件】控訴審――棋譜の権利者敗訴(ただし、少額の賠償という一審の結論は維持)

(1) 配信者による控訴

(2) 判決

(3) どのように評価すべきか

まとめ

コラム VTuber事件

第7章 棋譜の無断利用を理由とした損害賠償請求に関する【棋譜当日再現動画損害賠償命令事件】

1 はじめに

2 事案の概要

3 裁判所の判断

4 この判断をどのように評価すべきか

(1) 従来の考慮要素と類似する考慮要素を考慮していること

(2) ガイドライン批判を害意としてではなく妨害の悪質性の評価事情としていること

(3) 読売新聞らと配信者の間の競合関係を肯定

(4) 以上を踏まえての総括

まとめ

コラム 判決どうしが相互に矛盾してもいい?

第8章 結局、どの範囲まで棋譜を許可なく利用することができるのか

1 かなり明確になった部分

(1) 商業的に競合するようなリアルタイムの棋譜の利用は営業妨害の不法行為が成立する可能性が高い

(2) ファンがすでに情報を取得済みの場合は不法行為となる可能性が低い

(3) ファンによる軽微な指し手の投稿が不法行為となる可能性は極めて低い

2 現時点でもなお曖昧な部分

(1) ファンによる活動の限界

(2) リアルタイムではないが近接する時期の配信の場合

まとめ

コラム 広告収入等について

第9章 棋譜を著作権・不法行為以外の方法で保護できるか

1 契約による保護

(1) 契約違反

(2) 利用規約の効力は、広告目的の配信者かファンかで変わること

(3) 動画プラットフォームの仕組み上の制約

2 限定提供データ

(1) 限定提供データとは

(2) 限定提供データによる保護の可能性

(3) 限定提供データの保護の限界

まとめ

コラム 「他の方法で保護できる場合に不法行為で保護すべきか」

第10章 ビジネスモデルの維持・発展と将棋ファンの自由とのバランスのために

1 将棋界の発展が重要であること

2 バランスのとれたものとなるよう、ガイドラインを改訂すべきこと

(1) 現在のガイドラインはバランスのとれたものか?

(2) ガイドライン改訂の提言

(3) ガイドラインの執行を徹底すべきこと

(4) ガイドラインを「紳士協定」とする考えについて

3 様々なビジネスのあり方を模索すべきこと

(1) 棋譜の許諾範囲を広げることによるビジネスの多角化

(2) その他のビジネスモデル上の模索について

まとめ

コラム バランスの重要性

終章 棋譜をめぐる議論は他分野に応用できるか

1 AI生成物の議論

2 スポーツデータ

3 声優等の声の保護

4 ネタバレ

5 その他

まとめ

コラム もっと法律を学びたい方へ

補章 【棋譜当日再現動画損害賠償命令事件】控訴審判決

1 【棋譜当日再現動画損害賠償命令事件】について

2 棋譜の著作権による保護論争に決着をつけた?

3 棋譜の保護の一般論について

(1) 棋譜は知的財産?

(2) 裁判所の判断に対する評価

4 本件における棋譜の保護について

(1) 裁判所の判断

(2) 裁判所の判断に対する評価

5 棋譜の無断利用による損害賠償について

(1) 大幅な賠償額の減額!

(2) 民事訴訟法248条

(3) 裁判所の読売新聞の損害に関する判断

(4) 評価

(5) 日本将棋連盟の損害について

まとめ

あとがき

さらに棋譜の法的保護について知りたい人のために

将棋にまつわる裁判

巻末資料:北朝鮮映画事件以降の主な不法行為否定例

奥付

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