- 発売日
- 2024年09月30日
- 出版社
- 日本評論社
- 編著等
- 川岸卓哉、佐々木司、高橋賢司
いまだ後を絶たない日本独自の過労死問題。睡眠科学と医学からのアプローチを活かし、健康と安全の見地から労働時間規制を再考。
目次
表紙
総目次
詳細目次
序章 日本の働き方の何が問題なのか、日本の労働時間規制の何が問題なのか
1 法律学と医学、睡眠の科学の調和の必要性
2 本書の視点
3 本書の構成
第1章 過労死が止まらない――現行制度の限界
1 過労死遺族の声
[1]長時間・深夜不規則労働の末に過労事故死で亡くなった24歳の息子
[2]働き者の母を亡くして遺された子どもたち
[3]長時間・不規則労働によるうつ病発症による過労自殺
[4]遺族たちの声が訴えるもの
2 「過労死」のあゆみ
[1]「過労死」認定基準改定のあゆみ
3 過労死等防止対策推進法の制定
4 過労死認定基準と改正前労働基準法のダブルスタンダードの矛盾を解消した働き方関連法
5 それでも止まらない過労死
第2章 日本の労働法制の何が問題なのか――工場法上の就業時間規制から現代の「働き方改革」まで
1 労働時間法制の歩みとあり方
[1]労働時間法制の端緒
[2]労働基準法の制定と歩み
[3]働き方改革
[4]小括
2 日本の経済社会の構造的な問題点
[1]従来の労基法上の規制の限界
[2]労働時間をめぐる雇用社会の現状
[3]過労死・過労自殺を生み出す社会的背景と構造的な要因
第3章 間違いだらけの働き方・休み方の「常識」――「 疲労の進展」と「疲労の回復」から日本人の働き方を科学的に診断する
1 睡眠と疲労
[1]「疲労」は「蓄積」するのか?
[2]過労死認定基準と睡眠
2 睡眠の「量」と「質」――過労死の原因となる睡眠のメカニズム
[1]睡眠の量と睡眠の質
[2]徐波睡眠の出現様式とレム睡眠の出現様式
[3]徐波睡眠はストレスに弱い
[4]睡眠経過
[5]レム睡眠の抑制からアロスタシス崩壊へ
3 まとめ
第4章 過労死・過労自殺につながる健康障害とその背景
はじめに
1 医学が眼を逸らしていた「過労死」、行政も抵抗
2 医学が課題とした過労死
[1]日本産業衛生学会「循環器疾患の作業関連要因検討委員会」
[2]第2次委員会
3 筆者の検討の紹介
[1]東北における過労死事例検討
[2]自営業者での検討
[3]過労死・過労自殺の主要因「夜勤」についての取り組み
[4]夜勤労働者対象の健診解析の示すもの
4 過労死(過労自殺)の予防に向けての活動
[1]過労死予防につながる健診・健康管理のありかた――背景をみずに語られる「生活習慣病」「メタボリック症候群」
[2]過労死の予防にまず必要なのは睡眠障害の元凶である夜勤の制限・削減
[3]職場・生活にはびこるストレス過重負荷軽減への取り組み
[4]職場・生活の場での禁煙の推進
[5]これからの過労死対策・予防の活動を進めるうえでの重要な留意事項
おわりに
[1]夜勤の制限の必要性
[2]「複合負担」の回避の取り組みの必要性とその点を考慮した法規制の必要性
〈追記〉「医師の働き方改革」によって過労死は防止できるのか
[1]医師の働き方改革――過労死水準の2倍の上限規制
[2]過労死の不安を抱えながら働く医師たち
[3]求められる、医師を増員したうえでの働き方改革
[4]「医師の過剰」「医師の偏在」という誤解
[5]水面下で進行する疲労による「不健康」を見逃す危険
[6]「支え=犠牲」で無理やり成り立たせている過重労働から脱却を
第5章 疫学からみた急性心筋梗塞と労働時間との関係
1 疫学とは何か
[1]疫学と病態生理学のちがい
[2]疫学と病態生理学の関係
2 急性心筋梗塞に関する疫学研究
[1]急性心筋梗塞と労働時間
[2]「日本における急性心筋梗塞の危険要素としての労働時間――症例対照研究」
[3]研究から得られた2つの結論
3 疫学と法学との親和性――政策提言との関係で
[1]労働法における規制の方向性の評価
[2]医学がもつ課題
[3]国勢調査と人口動態統計を疫学的に活用するための国勢調査コホートの提言
[4]リスク管理としての疫学と法学との親和性
第6章 睡眠科学からみた夜勤・不規則労働と勤務間インターバル
1 夜勤・不規則労働と睡眠科学
[1]睡眠のリズム
[2]概日リズムは強固であるため夜勤時の疲労は大きい
[3]覚醒のリズム
[4]ルーテンフランツ9原則
2 勤務間インターバルと睡眠科学
[1]勤務間インターバルに関わる医学的知見
[2]勤務間インターバル制度は睡眠の質を高める
3 まとめ
第7章 〔事例研究〕どのような働き方が危ないか――長時間労働、深夜・不規則労働の危険な組み合わせ
はじめに
1 不規則勤務が原因となった各裁判例
[1]頻繁な勤務シフト変更を繰り返したマクドナルドハンバーガー店の店長代理の過労死
[2]不規則勤務が当初の予定どおりでも過労死は起こり得る――ライジングセンターセキュリティーサービス警備員過労死事件池袋労基署長(ライジングサンセキュリティーサービス)事件
[3]勤務間インターバルが確保できなかった結果の過労死――国立循環器センター看護師過労死事件国(国立循環器センター)事件
[4]ホワイトカラー会社員が陥る不規則勤務による過労死――ヘキストジャパン事件三田労基署長(ヘキストジャパン)事件
2 交替制勤務・深夜勤務を過労死の原因とした裁判例
[1]交代制勤務に潜む危険――警視庁警察官の過労死事件地公災基金東京都支部長(警視庁)事件
[2]交代制勤務を繰り返しても慣れることはない――工場の交代制勤務の労働者の過労死豊田労基署長(トヨタ自動車)事件
[3]毎日の深夜勤務自体の過労死の危険――トラック運転手の過労死事件福岡東労基署長(蔣田運送)事件
3 交代制勤務と過労自殺――ニコン・アテスト偽装請負過労自殺事件
[1]交代制勤務の果ての自死
[2]交代制勤務が精神疾患を引き起こすことを示す科学的知見
4 深夜・不規則労働が引き起こす過労事故死――グリーンディスプレイ青年過労事故死事件
[1]深夜不規則勤務後の通勤帰宅途上の過労事故死
[2]長時間の断眠が事故を起こすメカニズム
[3]求められる過労事故死対策
5 裁判例分析のまとめ
[1]裁判例分析のまとめ
[2]裁判例を踏まえた過労死を防ぐための最低限の上限規制の方向性
[3]勤務間インターバルの重要性
第8章 実現可能な労働法制改革の方向性――EUの労働時間規制
はじめに
1 EC指令の経緯と根拠
2 EU指令2003/88における労働時間と最長労働時間(労働時間の上限)規制
[1]週最長労働時間の規制
[2]休憩
[3]休息時間
[4]深夜労働ないしシフト労働
[5]適用除外
[6]休暇
結びに代えて
第9章 実現可能な労働法制改革の方向性――ドイツの労働時間規制
はじめに
1 ドイツの労働時間法
[1]労働時間の上限
[2]休息時間
[3]休暇
[4]閉店時間と日曜・祝祭日
[5]深夜労働
2 ドイツの協約上の労働時間規制
[1]週35時間制への金属産業での労使の闘い
[2]この解決への労働法学者による評価
[3]週35時間制へのその後の展開
[4]開放条項、遮断効をめぐる法的な争い
[5]90年金属産業の協約と有利性原則
[6]協約規制の緩和と労働時間の柔軟性をめぐる動向
[7]その後の政府による提案
[8]労働協約上の労働時間規制
3 労働時間管理からの個人化・個別化
[1]ドイツにおいて進む労働時間管理からの個人化・個別化
[2]労働時間の個人化・個別化の概要
4 ドイツ労働時間の実務
[1]S社の労働時間
[2]K社の労働時間
[3]O公団(有限会社)の労働時間
5 結びに代えて
第10章 [提言] あるべき労働時間規制のベストミックス
1 日本におけるあるべき労働時間法制
[1]従来の議論
[2]あるべき労働時間法制
[3]深夜労働の制限
まとめ
2 日本における勤務間インターバル制度の現在地
[1]勤務間インターバルの「努力義務」化
[2]過労死防止大綱での目標設定
[3]日本における勤務間インターバル制度
[4]過労死認定基準と勤務間インターバル
[5]勤務間インターバルの質的側面「つながらない権利」
[6]法規制化へ向けた今後の課題
[7]法制度としての勤務間インターバル規制
立法提言(まとめ)
特別寄稿 刊行に寄せて
あとがき
奥付