- 発売日
- 2023年02月24日
- 出版社
- 日本評論社
- 編著等
- 金尚均、石塚武志、魁生由美子、濵口晶子、山本崇記
在日コリアン、被差別部落出身者への差別を主な対象として、インターネット時代のヘイトスピーチを社会学と法学から検討する書。
目次
表紙
はしがき
総目次
詳細目次
序章 権利侵害情報による被害救済
1 はじめに
2 憲法
3 民法
4 行政法
5 刑法
6 ネット対策
第1章 部落差別に関する司法判断の経過と有害情報対策の課題
1 部落差別への法的接近――本章の目的
2 問題意識と背景――パラドキシカルな事態の出来
(1) 部落差別に対する司法判断への視点――権利か差別か
(2) 部落差別を捉える手法をめぐる分岐
(3) 「部落差別の実態」と差別被害のリアリティ
3 部落差別の定義をめぐる葛藤――制度的把握の変遷
(1) 部落差別解消推進法(2016)
(2) 同和対策審議会答申(1965)
(3) 同和対策事業特別措置法(1969)以降
(4) 人種差別撤廃委員会(2018)
4 司法判断の現代史
(1) 類型
(2) 具体的な事例
(3) 司法判断の特徴と課題――小括として
5 部落差別規制における法制度の可能性――和歌山県/湯浅町を事例に
(1) 湯浅町部落差別をなくす条例(2019)の新規性
(2) 条例制定までの過程
(3) 制定以後の運用――モニタリング/制裁/救済に着目して
6 法制度がもたらすパラドクスに抗する――当事者の「具体性」
(1) 司法的暴力
(2) 具体性のありか――カミングアウトの構造を捉える
(3) パラドクスを超えるために
第2章 ネットモニタリングの現状――ネット上の差別情報に対する行政機関の対応状況
はじめに
1 ネットモニタリング事業に関する全国的な動向と今後の課題
(1) モニタリングにとりくむきっかけ
(2) ネットモニタリング事業に関する兵庫県内の動き
(3) 部落差別動画削除のとりくみについて
(4) ネットモニタリング事業に関する全国的な動向
(5) 今後の課題
2 香川県におけるネットモニタリング事業――自治体の施策と課題
(1) インターネット上の 差別書き込み――問題発生の現場で
(2) 自治体の問題把握と施策
(3) モニタリング実務担当者へのインタビュー
(4) 対抗する方法と今後の課題
第3章 ヘイトスピーチ規制の合憲性をめぐる議論と表現の自由法理
1 本章のねらい
2 表現の自由の法理――学説と最高裁
(1) 憲法学における表現の自由法理の概要
(2) 表現の自由に関する判例理論についての一般的理解
3 従来の差別的表現・ヘイトスピーチ規制をめぐる消極説・積極説の論拠
(1) 従来の規制消極説の論拠
(2) 従来の規制積極説の問題提起
4 近時の学説に基づくヘイトスピーチ規制の位置付け
(1) 表現の自由法理に忠実であることとヘイトスピーチ規制
(2) 表現の自由の最大限の保障とヘイトスピーチ規制の許容
(3) 表現の自由の保護領域論とヘイトスピーチ
5 表現の自由法理をこえて
(1) 差別構造におけるマイノリティとマジョリティの位置付け
(2) 表現の自由の問題から、人格権・平等原則の問題へ
第4章 インターネット上の集団に対する差別的言動による人格権侵害
1 本稿の課題
2 人格保護の前提としての完全かつ平等な人格の承認の要請
(1) 私法上の人格保護の前提
(2) 人格権の内包とその解釈規範
(3) 判例上の「名誉」による保護の限界
3 平穏生活権侵害による保護の可能性とその意義
4 おわりに
第5章 「全国部落調査」復刻出版差止等請求事件を通して考察する差別表現規制の法理
1 はじめに(問題の所在)
2 「全国部落調査」復刻出版差止等請求事件とは
(1) 事実の概要
(2) 原告が主張した権利侵害の内容
(3) 立証の困難
(4) 東京地判令和3・9・27 LEX/DB文献番号25572247
3 「差別されない権利」の必要性
(1) 東京地裁判決による救済範囲の「限定」
(2) 「差別されない権利」によって救済されるべき人々の存在
(3) 東京地裁判決が示した「差別されない権利」の必要性
4 被差別当事者団体が原告になることの重要性
5 おわりに
第6章 インターネット上のヘイトスピーチ・差別に対する行政的対応
1 はじめに
(1) インターネット上のヘイトスピーチ・差別に対する行政的対応の意義
(2) 本章が対象とする情報
2 差別解消三法の制定と人権擁護行政
(1) 差別解消三法の制定
(2) 解消法・解消推進法の規定による要請
(3) 法務省の人権擁護機関によるインターネット上のヘイトスピーチ・差別への対応
(4) 人権擁護機関による対応の実効性
3 地方公共団体における対応
(1) 地方公共団体における条例整備やモニタリング事業の試み
(2) 大阪市条例等による拡散防止措置、公表
(3) 検討
4 プロバイダ、プラットフォーム等を通じた対策
(1) プロバイダ、プラットフォーム等を通じた対策の必要性
(2) プラットフォームサービスに関する研究会・インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会
(3) 想定されている、ヘイトスピーチ・差別への対応の全体像
(4) プラットフォーム事業者の自主的取組みを評価するためのポイント
(5) 有識者検討会が示す、違法・有害情報の削除等の判断基準
(6) インターネット上の違法・有害情報にかかる「共同規制的枠組み」の意義
5 おわりに
第7章 インターネット上の法益侵害に対する刑事的対応
1 はじめに
2 インターネット上のヘイトスピーチと刑事的対応の枠組み
(1) インターネット上のヘイトスピーチと刑事法
(2) 立法論の可能性
(3) 解釈論の可能性
3 インターネット上のヘイトスピーチと現行刑法
(1) 問題の所在
(2) 被害者が特定可能な規模の集団
(3) 被害者が特定可能な集団に絞り込む方法
(4) まとめ
4 プロバイダの刑事責任
(1) 問題の所在
(2) 不作為正犯
(3) 作為正犯
(4) 作為幇助犯
(5) 共同正犯
(6) まとめ
5 インターネット上の表現の特性
(1) インターネット上の表現の特性
(2) 被害の継続性
(3) 被害の集中性
(4) 作出された公然性
(5) まとめ
6 おわりに
第8章 インターネット上の表現による法益侵害の継続とその削除
1 インターネット上の情報による被害の特殊性と被害の最小限化
(1) 問題の所在
(2) ドイツネットワーク法執行法とその改正の動向
(3) 削除の意味
(4) 削除の問題性
(5) 小括
2 偽情報への対応とその課題
(1) 誘因としての偽情報
(2) 偽情報の影響
(3) 偽情報の問題性
(4) 外国における偽情報の取り扱いの動向
(5) ドイツにおける現行法上の偽情報の規制
3 おわりに
奥付