- 発売日
- 2024年10月30日
- 出版社
- 慶應義塾大学出版会
- 編著等
- 呉 迪
近代日中両国の憲法思想。その淵源はどこにあるのか。日本・中国、両国における憲法の基本概念から解きおこし、当時の中国の憲法制定と明治憲法、そして相互の憲法学の関係、また近代における中国の憲法学教育における日本的要素をも考察しながら、両国の憲法、憲法学の継受と発展の歴史を繙く。19世紀末から20世紀初頭の清朝末期、中華民国初期にかけての中国における立憲構想や制憲活動に対する、大日本帝国憲法(明治憲法)、また明治期以降の日本憲法学が与えた影響について、多角的な観点から実証的に考察する比較法制史研究。
目次
表紙
まえがき
目次
凡例
序章
第一節 歴史の背景
第二節 先行研究
第三節 研究目的
第四節 各章の構成と要旨
第一章 近代日中両国における 憲法の基本概念(キーワード)の定着と連鎖
第一節 はじめに
第二節 明治日本を介しての憲法の基本概念の創成と伝播
(一) 近代東アジアの憲法の基本概念の淵源
(二) 憲法の基本概念の近代中国への流入
第三節 明治日本における憲法の基本概念
(一) 国体――固有語としての基本概念
(二) 政体――転用語としての表現
(三) 主権――借用語としての用法
(四) 統治権――和製語としての起源
(五) 明治憲法学における憲法の基本概念
第四節 近代中国における日本憲法の基本概念の継受と発展
(一) 清末民初期の憲法成立過程における憲法の基本概念
(二) 統治権・主権の継受および発展
(三) 国体・政体に対する継受および発展
(四) ソビエト憲法学の導入と憲法の基本概念
第五節 おわりに
第二章 近代中国の憲法制定と明治憲法
第一節 はじめに
第二節 近代中国の憲法制定の源流
(一) ドイツ国法学における歴史主義と実証主義
(二) 穂積八束と「実証主義」憲法論
(三) 有賀長雄と「歴史主義」憲法論
第三節 清国末期の憲法制定における明治憲法の参照
(一) 「第一次政治考察」と『予備立憲上諭』の公布
(二) 「第二次憲政考察」と『欽定憲法大綱』の制定
(三) 統治権論を中核とする『大清帝国憲法草案』
第四節 中華民国初期の憲法制定と有賀長雄
(一) 清国皇帝の退位詔書と中華民国臨時約法
(二) 憲法顧問としての有賀長雄の活躍
(三) 中華民国初期における明治憲法の継受――統治権移転論
(四) 袁世凱の帝政問題に対する有賀の態度
第五節 中華民国1936年憲法草案と1947年憲法制定における主義、政体と国体
(一) 三民主義の提出と五権憲法の構想
(二) 「主義冠国体(主義で国体を縛る)」憲法の制定
(三) 「主義冠国体(主義で国体を縛る)」立法の動機
第六節 おわりに
第三章 近代中国憲法学の変遷と明治憲法学
第一節 はじめに
第二節 「近代中国憲法学」の草創期――予備立憲運動以前の憲法学の著作
(一) 湯寿潜の『憲法古義』
(二) 王鴻年の『憲法法理要義』
第三節 留日学生における憲法学研究の集大成――保廷樑と『大清憲法論』
(一) 保廷樑(1874年–1947年)と『大清憲法論』登場の背景
(二) 国権憲法学の基本的理論構造
(三) 国権憲法学の特徴
(四) 保廷樑の憲法学者育成論
第四節 憲法草案に見る憲法学(一)――第一歴史古文書館所蔵『清政府擬定憲法草稿』
(一) 『清政府擬定憲法草稿』の構成とそれを巡る論争
(二) 『清政府擬定憲法草稿』の分析
第五節 憲法草案に見る憲法学(二)――張伯烈と『仮定中国憲法草案』
(一) 張伯烈(1886年–1934年)と『仮定中国憲法草案』の構成
(二) 『仮定中国憲法草案』の背景たる憲法学体系
(三) 『仮定中国憲法草案』の特徴
第六節 辛亥革命以降の君主制憲法草案――馬吉符と『憲法管見』
(一) 馬吉符(1876年–1919年)と『憲法管見』の構成
(二) 『憲法管見』の分析
第七節 1947年の憲法解釈学における国体、政体と主義――羅志淵の『中国憲法釈論』
(一) 羅志淵(1904年–1974年)と『中国憲法釈論』の背景
(二) 『中国憲法釈論』における国体、政体、主義
第八節 おわりに
第四章 近代中国の憲法学教育における日本的要素
第一節 はじめに
第二節 学制改革の下で展開された近代中国の憲法学教育の全体像
(一) 近代西洋法思想の流入と近代初期の学堂における法律教育
(二) 日清戦争以降日本式学制と新式分科の確立
(三) 新学制と新分科における憲法学教育
第三節 日本留学の潮流と近代中国憲法学者の育成――法政大学法政速成科を中心に
(一) 法政大学法政速成科の設立
(二) 法政速成科の憲法学の教員
(三) 法政速成科の憲法学講義
第四節 中国語訳日本人憲法学著作を教科書として用いる学校とその機関誌――北洋法政学堂と『北洋法政学報』
(一) 北洋法政学堂の創設
(二) 憲法学教育における『北洋法政学報』が果たした役割
第五節 日本人を講師とする憲法学教育機関――京師法律学堂
(一) 京師法律学堂の創設と日本人憲法講師の招聘
(二) 京師法律学堂の憲法学講義
第六節 中華民国期「日本派」憲法学教育の集大成―朝陽大学
(一) 北京法学会から朝陽大学法律系
(二) 朝陽大学の憲法学講義
第七節 おわりに
終章
あとがき
初出一覧
参考文献
人名索引
事項索引
著者略歴・奥付