- 発売日
- 2025年05月20日
- 出版社
- 日本評論社
- 編著等
- 西平等
戦争の危機を伴う紛争を制御するため、国際法が果たす役割とは。「紛争から国際法を見る」という視点によって検討を深めていく。
目次
表紙
はしがき
目次
序章 国際法はいかにして紛争の制御に寄与するか
1 「力の問題」と国際法
2 キューバ危機における国際法の役割
3 国際法の役割をとらえる広い視角
4 紛争制御における国際法の役割という問い
5 「国際インシデント」研究との異同
6 本書の概要
第1部 国際法諸規範の意義
第1章 自決原則に基づく分離要求への国際連盟理事会の対応―オーランド諸島帰属問題(1920年)
1 はじめに
2 連盟理事会への付託の経緯
3 法律家委員会報告書
4 調査委員会報告書
5 解決
6 おわりに
第2章 領域国際法の不確定性とコソボ紛争の余韻
1 はじめに
2 人民自決原則と領土一体原則
3 領土一体原則の優越の動揺
4 コソボ独立をめぐるICJ勧告的意見手続き
5 領域をめぐる争論(dispute)の意義
6 おわりに
第3章 トルコ・ギリシャ間のエーゲ海・東地中海諸紛争
1 はじめに
2 トルコ・ギリシャ関係の展開
3 エーゲ海におけるトルコ・ギリシャ間の緊張とイミア島紛争
4 東地中海における緊張と領土紛争への展開
5 おわりに
第4章 北アイルランド和平とブレグジット
1 はじめに
2 ベルファスト和平合意
3 北アイルランド議定書とその後の展開
4 おわりに
第5章 冷戦期デタントの展開とその現代的意義―勢力圏と安全保障をめぐる紛争への対処
1 はじめに
2 キューバ危機と緊張緩和
3 米ソ・デタントの盛衰
4 欧州に引き継がれたデタント
5 おわりに
第6章 ポーツマス条約(1905年日露講和条約)が戦前の極東における紛争の抑制・緩和に果たした役割
1 問題意識―ひとつの条約の機能と限界
2 ポーツマス条約の内容
3 帝政ロシア期における、極東での国際法秩序の基盤としての機能
4 ロシア革命後における紛争抑制・緩和機能とその限界
5 結論―ふりかえることの意義
第2部 軍事活動スキームへの移行の回避
第7章 グレーゾーン事態対処の法的制御
1 海における「法の支配」
2 「法の支配」における「法」―現在の法か、それとも新たな法か
3 各国海上法執行機関の「衝突」の回避のための方策―「危機管理メカニズム」の設定
4 尖閣諸島周辺海域における中国の活動
5 日本の安全保障の課題―グレーゾーン事態への対処
6 法執行活動スキームと軍事活動スキーム
7 武力紛争法の適用
8 グレーゾーン事態対処のための法整備の必要性
第8章 海空域インシデントと武力紛争の間―領域侵入事案に見る国際法の紛争制御機能
1 はじめに―「平和関係ノ安固ヲ期スル為」の仕組み
2 海空域法秩序の特殊性
3 海空域インシデントの範例―当事国間の意思表示の枠組みとしての国際法
4 おわりに―武力紛争回避の仕組みの発展に向けて
第3部 国際裁判の役割
第9章 国際紛争平和的処理手続による紛争制御の試み―コスタリカの例
1 はじめに
2 領土紛争の経緯
3 平和的解決の試み
4 紛争制御を可能とした諸要因
5 おわりに
第10章 チャド・リビア領土紛争―戦争が紛争になるために
1 はじめに
2 植民地時代
3 非植民地化過程
4 武力紛争
5 ICJ付託合意
6 ICJ判決
7 判決後
8 なぜリビアはICJ付託および判決を受け入れたのか
9 おわりに
第11章 失地回復という問題―ハニシュ諸島紛争とバカシ半島紛争を題材として
1 はじめに
2 ハニシュ諸島紛争(エリトリア=イエメン仲裁)
3 バカシ半島紛争(カメルーン/ナイジェリア事件)
4 むすびに
第12章 チャゴス諸島領有権紛争における国際裁判所の役割
1 はじめに
2 植民地時代
3 脱植民地化の進展とスエズ以東における覇権の交代
4 BIOT統治の正当性への挑戦
5 国際裁判所の活用
6 その後の展開
7 結びにかえて
第13章 海から始まる戦争の防止―ニカラグア=コロンビア領土海洋紛争を手掛かりに
1 はじめに
2 ニカラグア=コロンビア領土海洋紛争
3 国際裁判による紛争の制御
4 おわりに
第14章 ビーグル海峡事件―紛争の只中で国際法を語り継ぐ
1 はじめに
2 ビーグル海峡をめぐるチリとアルゼンチンの紛争
3 仲裁判決
4 仲裁判決後の展開
5 従来の評価
6 国際法による紛争の制御―範例としての教訓
7 おわりに
第4部 強制力の使用
第15章 コルフ島事件(1923年)における国際法の多層性―囲い込まれた復仇
1 はじめに
2 大使会議―早期撤退実現
3 法律家特別委員会―復仇の許容可能性
4 連盟理事会―規約による枠づけ
5 総会―世論の圧力
6 おわりに―1920年代の理論と現実
第16章 ロシアのウクライナ侵攻を契機とするもう一つの戦争の抑制―第三次世界大戦を現実のものとしないために
1 はじめに
2 ロシアによるウクライナ侵攻に対する国連の対応
3 戦争に至らない強制的な対応措置としての第三国による対ロシア経済制裁
4 おわりに
第5部 現下の紛争の制御について
第17章 ロシア・ウクライナ戦争の制御における国際法の役割―一方的強制措置(経済制裁)の文脈で
1 はじめに
2 ロシアへの一方的強制措置―日本による措置の概要
3 対ロシア措置はロシア・ウクライナ戦争の制御に効果があるか
4 一方的強制措置による紛争制御への国際法学の寄与
5 おわりに
第18章 安保理常任理国を当事者とする侵略戦争において国連にできることはあるか
1 はじめに
2 領域紛争の一方的解決手段としての侵略戦争
3 領域紛争の司法的解決と政治的解決
4 おわりに―「侵略戦争」の後に
第19章 武力紛争統御における国際人道法の役割
1 はじめに
2 目標区別原則と文民・民用物の「動員」
3 「戦争の霧」の中で―予防原則
4 攻撃側と防御側の責任分担
5 「人間の盾」
6 おわりに
第20章 パレスティナ武力紛争における人道的介入論の役割―古典的目的-手段枠組みの応用可能性
1 連載から読み解く実践知
2 制御に求められる法理
3 人道的介入の適性
4 手段との均衡性
5 人道的介入論の補完性
執筆者紹介
奥付