- 発売日
- 2022年10月01日
- 出版社
- 日本評論社
- 編著等
- 山本崇記
社会学から、隣接領域(法学等)と国際的な対話を意識し、現代の差別のメカニズムを明らかにして、新たに議論を展開させる研究。
目次
表紙
はじめに 本書の見取り図──問題意識と構成
目次
序章 差別をめぐる論点
1. 現代差別の地平──インターネット時代のヘイトスピーチとアウティング
2. 差別の日常性と処方箋
2.1 水平社宣言から読み解く
2.2 処方箋という提起
3. 差別の実体と関係──部落差別の定義から見る
3.1 定義の揺れ
3.2 転倒した事態の出来──部落民概念の拡散性
3.3 国連と日本政府のディスコミュニケーション──差別の定義をめぐるもう一つのズレ
4. カテゴリーの歴史性と可塑性
4.1 「部落」というカテゴリーの行方再論
4.2 「旧同和地区」という表現をめぐって
5. 「複合差別」論の位置
5.1 浸透と問題点
5.2 複合性の実際
6. 属地・属人の意味
6.1 地域に立脚するということ
6.2 住民か市民か──コミュニティと社会運動
7. コミュニティという方法──別様な共同性へ
第1部 理論的検討──メカニズム・社会運動・政策
第1章 差別概念の検討──差異のディレンマに向き合う
1. 社会学における差別論の課題
2. 人種差別と異質性嫌悪──メンミの差別論
3. 差別の社会理論
4. 差別の包括的な議論に向けて
5. 差別の構造的把握──メカニズム、社会運動、政策/制度
第2章 差別をめぐるディスコース史
1. 社会運動を論じなくなった差別論の系譜
2. 差別と社会運動の関係──差別論の射程とは何であったか
3. 差別を捉える視点の変容
4. 差別論の現代化に向けて
第3章 複合差別に抗う別様な共同性──社会運動の再定位を通じて
1. 反差別の共同性──経験史に降り立つ
2. 切断の思想──1968言説の問題性
3. 50年目の復刻──自主映画『東九条』が喚起するもの
4. 天よ、我に仕事を与えよ?──「よそ者」の空回り
5. 別様な共同性とは何か──〈総括〉から再帰的コミュニケーションを通じて
第4章 差別者と被差別者の関係性と対話史
1. 「複合差別」と「当事者性」
2. 「同和はこわい考」をめぐる問い──差別/被差別関係の論争史(1)
3. 「戦後責任」論争をめぐる問い──差別/被差別関係の論争史(2)
4. マジョリティとマイノリティの関係性の行方──媒介としての「運動の論理」
第5章 差別論の比較社会学──各領域の特徴と課題
1. 各領域から差別研究の課題を照射する
2. 歴史学における検討──近代と国家という射程
3. 民俗学における検討──共同体と時代貫通性
4. 人類学における検討──カーストシステムと三者関係
5. 心理学における検討──偏見と差別の心的メカニズム
6. 哲学における検討──倫理と論理の狭間で
7. 社会学の課題を照射する──各領域との隣接関係を通じて
第6章 コロナ禍における差別論──社会学的アプローチの更新の契機として
1. 差別の平等な分配?
2. 偏見と差別の違いから見えるもの
3. 差別から差別主義へ──類型論
4. 感染症差別の教訓
5. 差別する「私」を剔抉する
6. 差別論の更新に向けて
第2部 実践的検討──規制・予防・被害回復
第7章 差別の規制と法制度の対応──現代における部落差別事象を事例に
1. 部落差別解消推進法の成立──法の「空白期間」とは
2. 部落差別の規制を目的とした法制度の変遷
3. 部落差別の特質
4. 近年の部落差別事象と法的対応
5. 部落差別に対する規制の新局面──地方自治体からの変化
第8章 差別解消とソーシャルワーク──隣保館の相談・支援と啓発・予防機能
1. 時代遅れの隣保館?
2. 隣保館への視点──徳島県教職員組合襲撃事件への対応から
3. 隣保館の位置づけ
4. 同和問題化する隣保館──普遍性と特殊性の間で
5. 同和行政のなかでの位置づけの変化
6. 「隣保館設置運営要綱」に基づく事業
7. 厚生労働省の「期待」
8. 全国的な状況──現実とのギャップをどのように見るか
9. 地域的展開──活かし切れないポテンシャル
10. 差別解消とソーシャルワークに関する仕組み──萌芽として
11. 差別の予防/支援のシステム化へ
第9章 差別被害と回復の方途──京都朝鮮第一初級学校襲撃事件を中心に
1. 繰り返されるヘイトクライムと放置される被害
2. 「日常」の回復不可能性──被害の実相
3. 共生関係の破壊
4. マイノリティ集住地域の困難性
5. 被害回復への不均等な負担──「乗り越える」ということの意味
6. ボランタリー・サポートの実践──共同性の経験値として
7. 10年目の傷跡──被害実態調査
8. 差別被害からの回復と救済の方途──法制度の臨界
終章 反差別と共同性──〈総括〉と再帰的コミュニケーションを通じて
1. 「両側から超える」は時代遅れか?
1.1 マジョリティとマイノリティの関係性──部落問題の文脈から
1.2 在日朝鮮人をめぐる文脈
2. 「運動の論理」とは何か──民族性と住民性の両立
3. 社会運動活性化のなかでの新たな架橋
4. カウンター以前と以後の集団性
5. 京都事件裁判支援の集団性
5.1 集団性が形成されるまで
5.2 特異な集団性の内実
6. 地域社会の保守性の内実
7. 集団性から対抗的共同性へ──「運動の論理」の実践化
7.1 共同性のかたち
7.2 共同性を支える集団性の実相
参考文献
事項・人名索引
奥付