- 発売日
- 2013年07月11日
- 出版社
- 東洋経済新報社
- 編著等
- 宍戸 善一
・合弁事業をどう成功に導くか?交渉実務を概観し、留意点を体系化した、実務家必携の本 ・企業同士が提携する選択肢として、また海外直接投資の選択肢として、ジョイント・ベンチャーは重要な手段であり、世界中で利用されている。・ところが、その過半数が失敗に終わることが指摘されている。・著者たちは、その原因を、交渉の各過程における相互不信、理論的にいうと「囚人のジレンマ」にあるという。・そこで、この本では、ジョイント・ベンチャーの交渉プロセス全体を示しつつ、どうやって交渉を進めるべきか、を述べる。・利益の概念をどう作るかや、利害対立が生じた場合の対処法のつめに至るまで、本書に従って契約をつめていくと、最終的にきちんとした契約書が作成できるような流れになっている。・実務書ではあるが、研究者や、社会人大学院生にとっても参考になる内容となっている。
目次
表紙
本扉
はしがき
簡略目次
目次
凡例
第I章 序論
1 ジョイント・ベンチャーの定義
2 ジョイント・ベンチャーの経済的意義と本質的特徴
(1)ジョイント・ベンチャーのリスク
(2)リスク・マネジメント
(3)ジョイント・ベンチャーを選択する経済的意義
(4)ジョイント・ベンチャーの本質的特徴
3 基本的視座、体系的構成および重要な概念
第II章 パートナー間の交渉の概観
1 パートナー間の交渉
(1)パートナー間における交渉の場
(2)交渉の目的─パイを最大化し、それを分割する交渉
(3)交渉結果の確定
2 各パートナーの利得(pay-off)
(1)三種の利益─持分利益・取引利益・反射的利益
(2)パートナーからみた利益の評価基準
3 パートナーの相対的交渉力
(1)パートナーの規模の違いによる相対的交渉力の差異
(2)生き残りのために不可欠な相手方
(3)繰り返しゲームと評判の効果
(4)パートナー内部の事情
4 コスト・センター型とプロフィット・センター型における交渉の差異
(1)コスト・センター型
(2)プロフィット・センター型
5 交渉の段階
(1)検討・準備段階の交渉
(2)設立段階の交渉
(3)運営段階の交渉
(4)変異(ジョイント・ベンチャーの構造変化)と解消段階の交渉
6 ジョイント・ベンチャーへの出資比率の意味
(1)出資比率の設計の選択肢
(2)形式的対等合弁が多くなる理由
(3)形式と実態の乖離の問題点
(4)対応策
7 ジョイント・ベンチャーに対する資源の拠出に関する交渉─対象・方法・人的および物的資本の拠出
(1)ジョイント・ベンチャーにおける人的資本と物的資本
(2)合弁事業に不可欠な経営資産の拠出を受けるための取引契約の特殊性
第III章 交渉の前提
1 シナジー(ジョイント・ベンチャー出資の利益)
(1)シナジーの定義
(2)シナジーの諸類型
(3)シナジーと独占禁止法
(4)エクイティを用いる理由
2 利害対立と不安
(1)ジョイント・ベンチャーにおける動機付け交渉の特色
(2)ジョイント・ベンチャーにおける利害対立
(3)ジョイント・ベンチャーにおける不安
(4)相互に資本拠出しやすい環境を整備するための方法
第IV章 交渉の対象
1 支配の分配
(1)持分の分配をめぐる交渉
(2)取締役会の構成をめぐる交渉
(3)拒否権の分配をめぐる交渉
(4)情報開示請求権をめぐる交渉
(5)退出権をめぐる交渉
2 果実の分配
(1)果実の類型─持分利益・取引利益・反射的利益
(2)果実の分配をめぐる交渉─動機付け・収奪・退出
(3)果実分配の具体的な方法と法的課題
3 退出の方法
(1)交渉のタイミング
(2)動機付け交渉における退出の意義
(3)退出に関する交渉の特殊性
(4)退出の発生事由(ジョイント・ベンチャーの終了原因)─交渉の対象その1
(5)無条件の退出権を与えるか否か
(6)退出の方法(法的スキーム)─交渉の対象その2
(7)退出の条件(ジョイント・ベンチャーの持分評価)─交渉の対象その3
(8)退出後の措置─交渉の対象その4
(9)二当事者間交渉と第三者が登場する場合の交渉
(10)ジョイント・ベンチャーの組織形態による退出交渉の差異
(11)具体的な交渉事例
4 知的財産に特有の問題
(1)ジョイント・ベンチャーに対する人的資本の拠出に関するプランニング
(2)知的財産権による隠れた支配の分配
(3)知的財産権を活用した果実の分配
(4)交渉のカードとなる知的財産権と退出の威嚇
(5)ジョイント・ベンチャーの発展過程と知的財産権
(6)ブランド・ライセンス
(7)技術ライセンス
(8)情報システムの問題
(9)許認可事業に関連する特殊な利権
第V章 交渉結果の法的確定方法
1 組織形態の選択
(1)組織法が交渉に与える影響
(2)パートナー間の交渉を定着させる観点から問題となる事項
(3)それ以外の観点から組織形態の選択に影響を与える事項
(4)組織形態各論
(5)合弁合同会社
2 契約による交渉結果の確定
(1)交渉の各段階と契約
(2)合弁事業契約による確定
(3)合弁事業契約と定款の関係
3 ジョイント・ベンチャーの定款
(1)ジョイント・ベンチャーの定款の意義
(2)ジョイント・ベンチャーの定款についての問題
第VI章 ジョイント・ベンチャーの発展過程
1 ジョイント・ベンチャーの四段階
(1)発展段階
(2)ジョイント・ベンチャーの性質による分類
(3)合弁会社の準備段階に入る前に実施すべき調査
(4)代理人の起用
2 検討・準備段階
(1)定義および検討・準備段階の活動項目
(2)交渉項目
(3)力関係
(4)LOIまたはMOU
3 設立段階
(1)定義および設立段階の活動項目
(2)交渉項目と力関係
(3)合弁事業契約の不完備性
(4)合弁事業契約の履行
(5)合弁会社の設立に伴う手続
(6)設立後の監査(出資履行の確認/モニタリング)
(7)組織運営のための内部規範(諸規程、就業規則その他)の整備
(8)関連諸契約の締結
4 運営段階
(1)定義および運営段階の活動項目
(2)二当事者間における交渉
(3)三当事者間における交渉の開始
5 変異─再交渉
(1)定義および変異段階の活動項目
(2)交渉項目と力関係
(3)再交渉義務はあるか?
(4)デッド・ロック(deadlock)
6 解消段階
(1)定義および解消段階の活動項目
(2)ジョイント・ベンチャーの解消交渉が発生する背景事情
(3)交渉項目
(4)ジョイント・ベンチャーの持分譲渡
(5)ジョイント・ベンチャーの解消
7 三種の利益の推移と成長過程
第VII章 三当事者交渉の開始
1 出向者のオートノミーとモニタリング
(1)物的資本の拠出者と人的資本の拠出者の動機付け交渉
(2)出向取締役の忠実義務
(3)オートノミーの与え方
(4)モニタリングの手段
(5)オペレーティング・コミッティー
2 コスト・センター型ジョイント・ベンチャーとプロフィット・センター型ジョイント・ベンチャー
(1)コスト・センター型ジョイント・ベンチャーの特徴
(2)プロフィット・センター型ジョイント・ベンチャーの特徴
(3)比較分析
第VIII章 合併事業契約締結後の交渉
1 パートナー間の再交渉の必要性
(1)再交渉が必要になる理由
(2)再交渉が対立的なものとなる理由(再交渉の阻害原因)
2 ジョイント・ベンチャーの再交渉の内容
(1)再交渉の具体的局面
(2)再交渉の目的と内容
3 ジョイント・ベンチャーの資金調達
(1)ジョイント・ベンチャーの資金調達交渉の特徴
(2)ジョイント・ベンチャーの資金調達方法と交渉
(3)ジョイント・ベンチャーの資金管理
4 ジョイント・ベンチャーにおける紛争
(1)パートナー間の紛争の原因
(2)パートナー間の紛争の内容
5 デッド・ロック(再交渉不能)
(1)デッド・ロックの定義
(2)デッド・ロックの解決方法
第IX章 ジョイント・ベンチャーの終了
1 ジョイント・ベンチャーの成功と失敗の定義
(1)組織マネジメントと事業マネジメント
(2)果実の分配の不満と再交渉
(3)果実分配の対立原因
2 ジョイント・ベンチャーの終了原因
(1)予定された終了
(2)予定外の終了
3 失敗の要因
(1)設立時点において失敗の要因を内包しているケース
(2)変化への対応に失敗するケース
4 再交渉による終了
5 強制的終了
(1)パートナー間の交渉以外の手段によるジョイント・ベンチャーの強制的終了方法
(2)仲裁
(3)解散判決
(4)倒産に起因する終了
6 合同会社の場合
(1)退社事由
(2)除名
(3)合弁会社の会社債権者保護とパートナーの対第三者責任
7 ジョイント・ベンチャーの終了と実務的な課題
(1)事前に規定すべき解除事由
(2)パートナー間の合意と会社法上の手続(私人間の契約と会社法)
(3)外的な撤退障壁(実務上のアクション項目)
8 持分損失の分配
(1)事実上の無限責任─株主有限責任の原則とジョイント・ベンチャーの損失分配
(2)撤退障壁の高さ
(3)ジョイント・ベンチャーの損失の負担割合
(4)ジョイント・ベンチャーの損失をパートナーが負担する経営判断の合理性(株主代表訴訟のリスク)
(5)税法上の損金計上
資料
(1) 合弁事業契約の構成
(2) 過去10年間に新聞報道されたジョイント・ベンチャーの一覧
参考文献一覧
索引
奥付