- 発売日
- 2021年04月15日
- 出版社
- 慶應義塾大学出版会
- 編著等
- 島田 真琴
芸術家、美術愛好家、美術館、画廊、アートビジネスにかかわるすべての方へ向けて!ナチス略奪美術品をめぐる紛争、エゴン・シーレの真贋とオークションの責任、ダ・ヴィンチ素描画を仲介した美術商の責任 etc....アートと法律は切っても切れない関係にある。登場する美術品に思いを馳せながら、アートと法律を楽しんで読み解ける一冊。
目次
表紙
はしがき
目次
00章 アート・ローとは何か
1 アートとは
2 美術品の取引と法律
⑴ 美術品取引市場とその担い手
⑵ 美術品の所有及び取引をめぐる紛争と法律
3 美術品の展示・公開と法律
⑴ 美術館の役割と活動
⑵ 美術品の展示、そのための借入れ、寄託に伴う紛争と法律
4 芸術家のための法律
⑴ 美術品を創作した芸術家の権利
⑵ 芸術家の権利、保護に関する法律
5 アートの商品化
⑴ アートの商品化
⑵ 商品化権ライセンスに関する法律
6 アートの保護、促進
⑴ アートと企業、国家
⑵ アートの保護育成に関する法律
7 アート・ローとは何か
01章 美術品の盗難予防、デューデリジェンス
1 美術品の盗難予防
⑴ 美術館の予防策
⑵ 警察の盗難対策
⑶ アート・ロス・レジスター等
2 美術品・文化財の盗難予防のための国際条約
A 1970年ユネスコ条約
B 1995年ユニドロワ条約
3 美術品犯罪を規制する各国の刑事法
⑴ イギリスの刑事法
⑵ アメリカの刑事法
⑶ 日本の刑法
4 盗品の予防・被害者への返還に関する業界団体の倫理規程
5 美術品取引とデューデリジェンス
⑴ デューデリジェンスとは
⑵ 善意無過失(Good faith)とデューデリジェンス
⑶ デューデリジェンスの方法
CASE STUDY 東京の美術館で見つかったレイノルズの肖像画
02章 盗品・略奪品の取戻し
1 盗品の取戻しに関する日本の法制度
⑴ 即時取得
⑵ 海外の即時取得(善意取得)制度の適用
⑶ 取得時効
2 盗品の取戻しに関するイギリス法
⑴ 海外の善意取得制度の適用
⑵ 出訴期間制限法
3 盗品の取戻しに関するアメリカ法
⑴ 海外の善意取得制度
⑵ 出訴期間制限法
4 ナチスが奪った美術品
⑴ ナチス略奪品に関するワシントン原則
⑵ イギリスの対応
⑶ アメリカの対応
CASE STUDY 消えたモネの小品の取戻請求と出訴期間制限
03章 贋作美術品をめぐる紛争
1 贋作とは
2 美術品の真贋鑑定の方法
3 裁判所における真贋の判断
4 真贋をめぐる紛争の種類
⑴ 刑事事件
⑵ 民事事件
5 美術品の真贋と名誉毀損
⑴ 損害賠償請求権の法的根拠
⑵ 美術品を贋作と述べることが名誉を侵害するか
⑶ 違法性を阻却するか
⑷ 責任を阻却するか
6 英米法における名誉毀損
⑴ イギリス法
⑵ アメリカ法
CASE STUDY 2枚目のダ・ヴィンチ作「美しきフェロニエーレ」?
04章 贋作売買と画商の責任
1 美術品取引市場と贋作
2 日本法における贋作美術品の売主の責任
⑴ 契約違反(目的物の不適合)による契約解除
⑵ 契約締結前の説明義務違反
⑶ 消費者契約法による契約取消し
⑷ 詐欺による契約取消し
⑸ 錯誤による契約取消し
3 イギリス法における贋作美術品の売主の責任
⑴ 黙示の契約条項違反による契約解除・損害賠償請求
⑵ 消費者権利法に基づく契約条項違反による契約解除・損害賠償請求
⑶ 不実表示による契約取消し・損害賠償請求
⑷ 錯誤による契約無効
CASE STUDY 4枚目?のヴァン・ダイク
05章 美術商・画廊の法的義務
1 美術商と画廊
⑴ 美術商とは
⑵ 美術商と芸術家の関係
⑶ 業者交換会
⑷ アートフェア
2 美術商に対する規制
⑴ 古物営業法
⑵ マネーロンダリング規制
⑶ 国際美術商・骨董商連合会の倫理規程
3 美術商の取引形態
⑴ 仕入販売と委託販売
⑵ 日本の美術商の取引慣行(消化仕入販売)
4 委託販売を行う美術商と美術品の買主の間の法律関係
⑴ 英米法上の委託販売における美術商
⑵ 日本法上の委託販売(消化仕入販売を含む)における美術商
5 委託販売における美術商の売主(委託者)に対する義務
⑴ 英米法上の販売受託者の義務
⑵ 日本法上の販売受託者の義務
6 委託販売において販売受託者から再委託を受けた者の委託者に対する責任
⑴ 英米法上の再受託者
⑵ 日本法上の再受託者
CASE STUDY ダ・ヴィンチ素描画の売買を仲介した美術商の責任
06章 オークションハウスの活動と責任
1 オークションの仕組み
⑴ オークションとは
⑵ オークションの手順
⑶ 最低売却価格と成り行き
2 オークションハウスと出品者の関係
⑴ オークションハウスと出品者の間の契約
⑵ オークション出品契約に基づくオークションハウスの権利・義務
3 オークションハウスと落札者の関係
⑴ オークションハウスと落札者の法律関係
⑵ オークション規約
⑶ オークション規約の法的拘束力
4 美術品の真贋とオークションハウスの責任
⑴ オークション規約に基づく責任
⑵ 責任制限条項
⑶ 責任制限条項の限界
CASE STUDY エゴン・シーレの真贋とオークションの責任
07章 美術館の機能と責任
1 美術館とは
2 美術館の要件
⑴ 日本の美術館
⑵ 公益法人の認定
⑶ 英米における美術館
3 美術館の館長・専門職員
⑴ 日本の美術館
⑵ 英米の美術館
4 美術館の倫理規程
⑴ ICOMの倫理規程
⑵ 日本の美術館の倫理規程
5 美術館による美術品の保管
⑴ 美術品の寄託
⑵ 登録美術品公開契約に基づく美術品の借受け
6 特別展のための美術品の借受け
⑴ 国内における美術品の借受け
⑵ 海外の美術館等からの美術品の借受け
⑶ 英米法上の美術品貸借
⑷ ICOMによる美術品貸借ガイドライン
CASE STUDY フランク・ステラ作品を借り受けた美術館の責任
08章 美術館における特別展
1 特別展とは
2 特別展開催の手順
A 企画
B 準備
C 実施
3 美術品の損害保険
⑴ 美術品の保険
⑵ 保険契約者の告知義務違反
4 展覧会と美術品の国家補償制度
5 展覧会と美術品の差押禁止制度
⑴ 美術品差押禁止制度とは
⑵ 各国の差押禁止制度
⑶ 日本の美術品差押禁止制度
CASE STUDY 展覧会出品のためのエゴン・シーレ作品貸出しに伴うリスク
09章 美術の著作権の発生、存続、帰属
1 著作権と美術の著作物
⑴ 著作権とは
⑵ 実用品と美術の著作物
⑶ 英米法上の美術の著作物
⑷ 写真の著作物
⑸ 建築の著作物
2 著作権の帰属
3 著作権の保護期間
4 著作権の譲渡等に関する登録制度
⑴ 著作権譲渡の対抗要件
⑵ アメリカの著作権登録制度
CASE STUDY 芸術家が制作した遊戯具の著作権
10章 美術館の活動と著作権
1 著作権とその制限
⑴ 著作権の内容
⑵ 著作権の制限
2 美術館の活動に伴う著作権の利用
⑴ 美術品の展示
⑵ 展示品の紹介・解説のための複製
⑶ 展示に伴う上映、公衆送信等
⑷ 既存の映像作品の上映
⑸ 展覧会カタログ(図録)への作品画像の掲載
⑹ 作品を撮影した写真の利用
⑺ 展覧会のポスター、チラシの制作、新聞広告等
⑻ 来館者による写真撮影の許可
⑼ 作品調書等における作品の図版の掲載
⑽ 美術館所蔵文献のコピーサービス、貸出し等
3 著作権等管理事業
4 権利者不明の著作物の利用
⑴ 裁定を受けるための要件
⑵ 裁定の効果
CASE STUDY バーンズ・コレクション展事件
11章 著作物に関する芸術家の権利
1 著作者人格権とは
2 日本の著作者人格権
⑴ 著作者人格権の種類、保護期間等
⑵ 公表権及び氏名表示権
⑶ 同一性保持権の内容
3 イギリスの著作者人格権
4 アメリカの著作者人格権
⑴ 著作者人格権の種類、保護の対象となる著作物、保護期間
⑵ 同一性保持権の制限
5 芸術家追及権
⑴ 芸術家追及権とは
⑵ EU及びイギリスの芸術家追及権
⑶ 芸術家追及権の要否
CASE STUDY イサム・ノグチ財団と慶應大学(著作者人格権)
12章 現代アートと著作権
1 現代アートとは
2 著作権による現代アートの保護
⑴ 現代アートの著作物性
⑵ 著作者は誰か
⑶ 著作権を侵害しているか
3 ストリート・アートと著作権
⑴ ストリート・アートとは
⑵ 公開の美術の著作物としての限界
⑶ 違法なストリート・アートと著作権の保護
⑷ 同一性保持権の例外
4 パロディと著作権の制限
⑴ パロディとは
⑵ 日本におけるパロディと著作権
⑶ アメリカにおけるパロディと著作権
CASE STUDY ジャクリーヌ・ケネディの写真とウォホール作品(パロディと著作権)
13章 美術品、映画のキャラクターの商品化ビジネス
1 キャラクター商品化ビジネスとは
2 許諾を受けるべき権利及び権利者は
⑴ キャラクターの図案、形状、造形の著作権
⑵ キャラクターを利用した製品の意匠権
⑶ キャラクターの名称、図案等の商標権
⑷ 不正競争防止法上の権利
3 映画のキャラクターの著作権
⑴ 映画キャラクターの著作権者
⑵ 映画キャラクターの著作権の保護期間
4 キャラクター商品化許諾契約
⑴ 契約書の頭書き及び前文
⑵ 許諾の内容・範囲、期間
⑶ ロイヤルティ、最低保証使用料、前払金
⑷ 商品の品質管理
⑸ 知的財産権に関する条項
⑹ 損失補償、賠償責任保険、責任制限条項
⑺ その他の条項
CASE STUDY バットマン・キャラクターの商品化権ライセンス
14章 展覧会、芸術祭と表現の自由
1 国際展、芸術祭とは
2 国際展に対する公的支援
3 国際展の開催手順
4 展覧会と表現の自由
⑴ 芸術監督、美術館の権利
⑵ 芸術家の権利
⑶ 市民の知る権利
5 美術品のわいせつ性と表現の自由
A 写真・映像
B 絵画・彫刻
CASE STUDY 「表現の不自由展・その後」事件(芸術祭と表現の自由)
15章 国の芸術振興策及び企業の芸術支援活動
1 国の文化芸術政策
⑴ 文化芸術行政と文化芸術基本法
⑵ 文化庁による文化芸術の促進及び支援
2 美術品、文化財の展示促進のための税制
⑴ 英米の優遇税制
⑵ 日本の優遇税制
3 企業による芸術の支援・促進活動
⑴ 企業とアート
⑵ 企業メセナを奨励する仕組み
⑶ 企業博物館・美術館
⑷ 公益信託制度の活用の可能性
CASE STUDY 企業経営者の美術コレクションの企業による活用
16章 文化財の保護と活用
1 文化財保護法とは
2 文化財保護の仕組み
⑴ 文化財の種類
⑵ 文化財の指定、選定、登録
⑶ 有形文化財と無形文化財
3 文化財保護に携わる各機関の役割
⑴ 文部科学省及び文化庁
⑵ 地方公共団体及び教育委員会
⑶ 文化審議会、地方文化保護審議会、協議会
⑷ 有形文化財の所有者
⑸ 文化財保存活用支援団体
4 文化財の保存活用に関する国の権限及び所有者等の義務
⑴ 重要文化財等の管理、修復に関する補助、指示、命令、勧告
⑵ 有形文化財の保存のための調査
⑶ 重要文化財等の所有者による現状変更、輸出、処分等の制限
⑷ 重要無形文化財等の保持者等への助言、勧告、補助
⑸ 無形文化財の記録、伝承者の養成
⑹ 文化財の展示・公開
⑺ 罰則
5 文化財保護に関する税制優遇措置
6 民法による文化財保護
CASE STUDY 旧同潤会大塚女子アパート解体撤去差止事件(文化財の現状変更に対する市民の権利)
17章 アートに関する紛争と国際訴訟
1 国際裁判管轄
⑴ 日本の裁判所の国際裁判管轄
⑵ イギリスの裁判所の国際裁判管轄
⑶ アメリカの裁判所の国際裁判管轄
2 主権免除
⑴ 日本における主権免除
⑵ イギリス法における主権免除
⑶ アメリカ法における主権免除
3 裁判所における準拠法の決定
⑴ 日本の裁判所における準拠法決定基準
⑵ イギリスの裁判所における準拠法決定基準
⑶ アメリカの裁判所における準拠法決定基準
CASE STUDY マレーヴィッチ作品引渡請求(国際裁判管轄、主権免除、準拠法)
18章 アートに関する紛争とADR
1 美術品・文化財をめぐる紛争の種類と特徴
⑴ アート関連紛争の種類
⑵ アート関連紛争の特徴
2 裁判所によるアート関連紛争解決の問題点
3 仲裁・調停
⑴ 仲裁、調停とは
⑵ アート関連紛争と仲裁・調停のメリット
⑶ アート関連紛争専門の国際仲裁・調停機関
⑷ アート関連紛争発生後におけるADRの合意
CASE STUDY ナチス略奪美術品をめぐる紛争の解決手段
CASE STUDY 解答のヒント
column
column 01 「モナリザ」はなぜ盗まれた?
column 02 どちらが運慶作?
column 03 アートの値段はどのように決まる?
column 04 アーティストへの道
column 05 最後のダ・ヴィンチの売主の取り分
column 06 美術館・博物館の誕生
column 07 美術品貸与の見返り
column 08 ミッキーマウスの寿命
column 09 ロシアの「禁じられたアート展」
column 10 アートとサブカルチャー
column 11 世界遺産・無形文化遺産の選び方
column 12 今世紀最大のアート取引紛争
事項索引
人名索引
事件索引(年順)
奥付