- 発売日
- 2018年11月15日
- 出版社
- 法律文化社
- 編著等
- 臼井 豊
電子取引が伝統的な法律行為論に突きつけた「なりすまし取引の安全保護」という現代的課題の解明に向けて、電子取引上の表見代理類推適用論のリーディング・ケースとしてのドイツにおける判決を基軸に据え、日独における支配的な表見代理類推適用法理の妥当性と要件論を中心に論究する。
目次
表紙
はしがき
目次
はじめに─表見代理の類推適用法理から“同一性外観責任”論へ─
1. 問題の所在
2. 本書の目的と構成
3. なりすまし以外の電子取引上の問題
第1章 電子取引時代の到来によるなりすましと表見代理の類推適用法理の形成・展開─BGH2011年5月11日判決前夜までのドイツの法状況について─
第1節 はじめに
1. ドイツにおける電子取引時代のなりすまし
2. 「他人の名・番号の下での行為」概説
3. BGH2011年5月11日判決の意義
4. 本章の目的と考察対象・順序
第2節 BGH2011年5月11日判決前夜までの裁判例状況
1. 法律行為上の履行責任としての権利外観責任(表見代理の類推適用法理)
2. 契約上の損害賠償責任
3. 契約外の(不法行為領域で展開された)損害賠償責任
4. 契約の締結(成立)と契約相手に関する表見証明
第3節 BGH2011年5月11日判決前夜までの学説状況─表見代理の類推適用法理を中心に─
1. ビデオ・テックス(VTX)取引に特化した外見代理を志向する見解
2. 他人の番号の下での行為という新概念で現代的考察を試みる見解
3. コレクト・コールにおいて外見代理の伝統的要件を踏襲する見解
4. 電子取引において外見代理の伝統的要件を絶対視しない見解
5. 電子取引独自の権利外観責任を意識する見解
6. 表見代理の類推適用に依拠した権利外観責任の成立に懐疑的な見解
7. 契約上の損害賠償責任を導く見解
第4節 おわりに
1. BGH2011年5月11日判決前夜までの到達点と課題
2. わが国における電子取引上のなりすまし議論(第2章)への示唆・展望
第2章 わが国におけるなりすまし取引と表見代理類推適用論─電子取引と立法化を視野に入れて─
第1節 はじめに
第2節 名義冒用なりすまし取引と表見代理類推適用論
第3節 電子取引上の番号冒用なりすましと権利外観・表見法理
第4節 民法改正中間試案
第5節 おわりに
第3章 インターネット取引上のなりすましへの表見代理類推適用の要件論と妥当性─BGH2011年5月11日判決を中心に─
第1節 第1章の研究成果・課題と本章の考察対象・順序
第2節 BGH2011年5月11日判決 (VIP-Lounge事件判決)
1. 本判決の紹介
2. 本判決の構造と以後の裁判例
第3節 BGH2011年5月11日判決に関する諸見解
1. 外見代理の伝統的要件を踏襲した本判決に好意的な見解
2. 外見代理の伝統的要件を修正する見解
3. BGB172条の類推適用を志向する見解
4. インターネット取引独自のなりすまし外観責任を構想する見解
5. アカウント所有者による「番号冒用の濫用的主張」を疑う見解
第4節 BGH2011年5月11日判決の分析的解説
1. 契約当事者の確定と他人の名(番号)の下での行為
2. 外見代理の類推適用
第5節 BGH2011年5月11日判決の評価・論点の整理─第3節の諸見解のまとめも兼ねて─
1. 本判決の外見代理類推適用に対する複数の評価
2. 本判決に関わる論点整理─第5章への布石
第4章 白紙書面の濫用補充と交付者の法的責任─電子取引上のなりすまし問題を解決する手がかりを求めて─
第1節 はじめに
1. 「白紙書面の交付・補充」概説
2. 本章の執筆動機と考察対象・順序
第2節 リーディング・ケースとしてのBGH1963年7月11日判決を中心に
1. 旧来の判例・学説状況
2. BGH1963年7月11日判決の紹介と分析・解説
3. 白紙書面の濫用補充に関する主要争点
第3節 ミュラーによる「BGB172条類推適用法理の射程・限界」の分析と「暫定的権利外観責任」論の提唱
1. ミュラーの見解
2. 小括
第4節 キンドルによる「白紙書面の特殊性・交付目的に基づく権利外観責任」論
1. キンドルの見解
2. 小括
第5節 現在の判例・学説状況
1. 判例によるBGB172条類推適用法理の拡大
2. 白紙書面の濫用補充におけるBGB119条1項の錯誤取消可能性の排除
第6節 白紙書面の問題解決に対する複数のアプローチと若干の検討
1. 「白紙書面」事象の法律構成
2. 白紙書面の濫用補充と交付者の法的責任
3. 交付者の法的責任の縮減・限定可能性
4. 小括
第7節 おわりに
1. わが国における白紙委任状を含む白紙書面の問題解決への法的示唆
2. 電子取引上のなりすまし問題解決への法的示唆─第5章への展開
第5章 電子取引上のなりすましにおける“同一性外観責任”論の発展的展開─BGH2011年5月11日判決を契機とした発展的学説を中心に─
第1節 第4章までの振返りと本章の考察対象・順序
第2節 “同一性外観責任”を標榜し電子取引独自の要件定立・具体化を試みる発展的学説の展開
1. 外観・帰責両要件ともに厳格なヘレストハルの見解
2. 帰責要件のみ厳格なエクスラーの見解
3. 厳格な帰責要件を判断基準の操作により一部緩和するゾンネンタークの見解
4. 厳格な帰責要件を「危険増大」論から一部緩和するボルゲスの見解
5. 外観・帰責両要件ともに柔軟なシュテーバーの見解
第3節 発展的学説の整理・分析
第4節 おわりに─契約上の損害賠償責任の可能性について─
今後継続する研究に関して─最終結論をめざして─
第1節 最新の三つの研究
1. 「セキュリティ技術」を意識したミュラー・ブロックハウゼンの研究
2. 「匿名大量通信サービスの取引安全保護」を志向するシュナイダーの研究
3. 「『責務』を通した同一性所有者,取引相手方双方の利益較量」をめざすハユトの研究
第2節 わが国で議論する際の方向性
著者紹介/底本奥付
電子版奥付