- 発売日
- 2019年10月17日
- 出版社
- 東洋経済新報社
- 編著等
- 宮脇 淳
指定管理者制度とは、公的な施設の管理・運営を民間企業やNPO法人などに代行させる制度です。自治体の財政逼迫を背景に、民間の力を導入する目的で始まりました。図書館、体育館、病院や斎場の運営などが行われています。現行の制度発足から15年余り、民間の指定管理者は全国で約3万事業者、指定管理施設は7万施設以上に上っています。ところが実際には、民間のノウハウを生かしたサービス向上ができていなかったり、また、一部の業務範囲・費用負担や災害時の業務のあり方などがあいまいで、民間が及び腰になっていたりするケースもみられ、官民ともに制度を十分活用できていません。本書は地方自治と法律の専門家が、そうした問題点を具体的に洗い出し、個々の指定管理事業の運営方法をガバナンスとコンプライアンスの観点からチェックして、官民間で結ばれる協定を明確な内容にすることをアドバイスしています。官民双方の関係者の必読書です。
目次
表紙
大扉
はじめに
目次
序章 実践面にみられる問題と対処の方向性
0.1 持続性と進化性の確保
0.2 ジレンマを生む基本要因と対処
0.2.1 要因1 民間の創意工夫等への理解 ─自由度尊重と民主的コントロールの充実
0.2.2 要因2 自治事務のメリット・デメリットへの認識 ─コンプライアンス意識の向上
0.2.3 要因3 混沌化するガバナンスとコンプライアンス ─基本的考え方の形成
0.2.4 要因4 水平的信頼関係の形成不足─ガバナンスの充実
0.3 法的思考と政策的思考の融合
第1章 指定管理者制度のジレンマ
1.1 ジレンマを生む要因的事例
1.2 民間化政策・行財政改革と指定管理者制度の導入
1.2.1 民間化政策の流れ
1.2.2 行財政における指定管理者制度の位置づけ
1.2.3 行財政改革における公益法人改革の影響
1.2.4 官民連携手法との関連性
1.2.5 運営権制度導入と指定管理者制度
1.3 民間化理論と指定管理者制度
1.3.1 PPP理論と指定管理者制度
1.3.2 平衡プロセスによるジレンマ
1.3.3 自治事務であることと積極的自由の関係
1.4 指定管理移行に関する地方公共団体の意思決定の判断基準
1.4.1 判断基準1 公の施設の目的を通じた公共性の確保
1.4.2 判断基準2 公共の福祉の実現可能性
1.4.3 判断基準3 指定管理者の独立性・自由度の尊重
1.4.4 判断基準4 行財政体質との明確なリスク分担
第2章 指定管理者制度の行財政的ガバナンス問題
2.1 指定管理者制度のコンプライアンスとエビデンス
2.1.1 コンプライアンスの充実
2.1.2 行財政のエビデンス
2.2 指定管理者制度の行財政プロセスのガバナンス
2.2.1 指定管理者制度の実践的権原・条例制定
2.2.2 議会の指定行為の位置づけ
2.2.3 情報の不完全性と協定の性格
2.3 指定管理の業務範囲と地方公共団体の災害時行政
2.3.1 災害時の公の施設の位置づけと指定管理業務
2.3.2 災害時の政策ガバナンス
2.4 財務会計のガバナンスと指定管理者制度
2.4.1 指定管理料のガバナンス
2.4.2 公会計・企業会計処理と維持修繕費
2.4.3 買換えとシステム保全
2.5 住民利用と公平性確保のガバナンス
第3章 指定管理者制度の法的検討
3.1 指定管理者制度創設の経緯
3.2 指定管理者制度のバリエーションと法的混乱の原因
3.2.1 指定管理者制度のバリエーション
3.2.2 条例制定と外部委託
3.2.3 管理権限の委任
3.2.4 指定管理以外の管理の外部委託
3.3 指定管理者の公法上の関係
3.3.1 指定行為
3.3.2 指定管理者の公法上の権利と義務
3.3.3 条例による管理等の基準設定
3.4 指定管理者制度における協定書
3.4.1 指定管理者の自由度
3.4.2 委託の法的性質
3.4.3 協定の法的性質
3.5 指定管理者の主体性と指定管理料・利用料金制・自主事業
3.5.1 指定管理者の主体性
3.5.2 指定管理料と利用料金制、自主事業
3.6 リスク分担
3.6.1 総論
3.6.2 協議の必要性と問題点
3.7 管理事項について
3.7.1 指定管理者の構成
3.7.2 管理業務
3.7.3 指定管理期間
3.7.4 募集要項等の法的効力と表明保証条項
3.8 モニタリング
3.8.1 総論
3.8.2 方法
3.8.3 リスク分担事項
第4章 指定管理者選定審査とプロセスの課題
4.1 指定と入札制度
4.2 審査方式
4.2.1 総論
4.2.2 事業計画等審査手続
4.2.3 指定プロセスの問題点と不服申立て(行政不服審査)
4.3 協定書締結手続
4.3.1 サウンディング型市場調査、競争的対話の位置づけ
4.3.2 入札後における詳細協議と協定書案の修正
4.3.3 要求水準の確認方法
4.3.4 仮協定
第5章 内部統制と指定管理者制度
5.1 地方公共団体内部統制の重視
5.1.1 会社法・金融証券取引法改正の流れと地方公共団体内部統制の意義
5.1.2 参加の多様化(情報公開請求・住民訴訟、官民連携)と内部統制の関係
5.2 内部統制と指定管理者制度との関係
5.2.1 内部統制と指定管理者制度のPDCAサイクルに関する課題
5.2.2 コンプライアンス・リスクマネジメントと指定管理者制度の観点
5.2.3 内部統制と指定管理者制度のPDCAサイクルのあるべき方向性
索引
執筆者紹介
奥付