- 発売日
- 2024年10月20日
- 出版社
- 日本法令
- 編著等
- 向井蘭
賃上げを求めるストライキなど、若い経営者・実務担当者が未経験の組合対応を迫られるケースが、近年出現しています。一方、こじれて長期化していた休職や問題社員対応に関する問題が、事実に基づくデータを踏まえて対応することで結論を出せるようになるなど、対立を深めずに終結する方法が明らかになってきています。3訂版では、こうした新しい動きに対応した実務とともに労組対応のベーシックもお伝えします。
目次
表紙
はじめに
CONTENTS
序章 人手不足で大きく変化した労組対応
①会社に見られる変化
「ブラック企業」認定、炎上をおそれる社長が増えた
人手不足からミスマッチによるトラブルが増えた
切り札は「ストライキ」から「未払い残業代請求」へ
労働環境改善に取り組む会社が増えた
「俺が法律だ」という社長が減った
労働問題発生でやる気をなくす経営者が増えた
②労働者に見られる変化
名前を出さずに団体交渉しようとした若手
個人的で「自分の問題が解決すればよい」と考える
組合離れは進む
弁護士に任せる労働者が増えた
③労働組合に見られる変化
衰退する労働組合
インターネット時代の組合活動
人数とお金が必要な活動が減った
労働者の要求と組合の思惑が一致しない
第1章 絶対に知っておいてほしい労組対策 基本の「き」
①合同労組の4つの特徴
行政監督官庁(労働基準監督署等)をよく使う
組合員を統制しきれていない場合がある
組織拡大に熱心な時・そうでない時がはっきりしている
人・資金に余裕がない
②労働組合法で禁止されている不当労働行為
不利益取扱いの禁止
団体交渉拒否の禁止
使用者の支配介入の禁止
使用者の経費援助の禁止
労働委員会への申立などを理由とする不利益取扱いの禁止
③不当労働行為を行うとどうなるか
労働委員会への不当労働行為救済申立が出される
労働委員会の命令に不服の場合は中央労働委員会へ
それでも納得いかなかったら行政訴訟
第2章 団体交渉申入書が届いたら会社が打つべき最初の一手
①初期対応で泥沼に陥る6つのパターン
団体交渉を拒否する
第二組合を作ろうと画策する
組合委員長を解雇しようとする
個別面談し組合を辞めるよう懐柔する
組合委員長と裏交渉する
新会社設立を計画する
②団体交渉申入書から相手の実態を読み取る
誰が労組に加入したか、争点は何かをチェック
加入した従業員が退職者でも交渉に応じる
支部・分会名があったら組織拡大に力を入れている
組合トップによって今後がわかる
組合員が全員わからなくとも団体交渉に応じる
上部団体はインターネットで調べられる
第3章 団体交渉に勝つための交渉術
①有利になる団体交渉のセッティング法
社内会議室、労働組合事務所は使わない
おススメは貸し会議室など外部の施設を利用し、使用者が全額負担すること
交渉時間は2時間一本勝負とする
就業時間中には行わない
社長や代表が団体交渉に出席する義務はない
セクハラ、パワハラの当事者は団体交渉に連れていかない
上部団体の役員の参加も拒否しない
先手を打って数多くの団体交渉をセッティングする
②交渉中すべきこと、してはいけないこと
1回目の団体交渉でイニシアティブを握る
極端に多い人数が押しかけてきたら団体交渉を中止できる
人数にこだわる場合は労働委員会にあっせんを申し立てる
回答書は「言った」「言わない」のトラブルを避けるために必要
交渉の録音はメリットとデメリットを理解したうえで判断する
余計なことは喋らない
罵声や野次は許されない
「不当労働行為だ」と恫喝されても応じられない要求は拒否する
その場限りの解決をしない
「社長を出せ」「すぐに答えろ」には応じなくてよい
交渉の流れをつかみピークを見抜く
歩み寄りのサインをキャッチする
金額は組合に先に提示させる
団体交渉が膠着状態になっても使用者からは打ち切らない
団体交渉を重ねることで解決の糸口を見つけられる
議事録に「サインしろ」と言われても即押印は御法度
「前向きに検討する」は禁物
交渉日以外に社長宅に組合員が来ても話合いは拒否する
事前協議条項には要注意
③近年の変化を受けた団体交渉のポイント
団交で会社がイニシアティブを握るケースも出てきた
場所にこだわる組合がなくなった
人数が多くてもゆったりと構える
第4章 ストライキ
①ストライキをめぐる状況
日本におけるストライキは減少し続けている
いくつかの重要な動きがある
高速道路サービスエリアの事例
②労働組合にとってのストライキ実施のメリット・デメリット
メリット~交渉の切り札~
デメリット
③ストライキに関する法的ルール
日本におけるストライキの法的位置付け
「ノーワーク・ノーペイ」の原則
公益事業に従事する労働組合がストライキを行う場合の特殊なルール
労働組合には、ルールに則ったストライキかの確認を促す
④ストライキへの対抗方法
自己の弱みを認識する~顧客に迷惑をかけることについてどう考えるか~
相手の弱みを分析する
事前準備をする(顧客への説明・在庫の準備・業者への依頼・非組合員への通知の準備)
徹底抗戦する
⑤ストライキ発生を回避するには
日頃から十分な対面コミュニケーションを図る
人手不足の解消に力を入れる
偶発的衝突を予防するホットライン
⑥ストライキ以外の最近の争議行為
一斉有給休暇取得
三六協定遵守・残業拒否闘争
第5章 こんなとき、どうする? テーマ別労組問題解決のポイント
①未払い残業代問題
時間外労働と認めざるを得ないもの、そうでないものを見極める
腹をくくって問題解決に向け交渉するしかない
「労基署に申告する」などの言葉に惑わされない
「歩合制なら残業代は発生しない」と誤解していた社長
組合加入者が一気に増えることはない
未払い残業代を支払うと倒産してしまう会社はどうする?
非組合員の残業代も放置しない
組合員のみに支払っても問題は解決しない
解決すると組合活動が沈静化することもある
就業規則の不備を直し、抜本的な解決を目指す
歩合給の場合の残業代の計算方法
裁判のメリット
未払い賃金の時効消滅期間の延長
②解雇問題
職場復帰か金銭による解決かを見極める
正社員解雇は訴訟になったら勝てない
個別具体的にみる「解雇事由」
解雇を議題とする団体交渉が決裂したら
③解雇撤回
解雇撤回と解決金
現行法で認められるのは労働契約上の地位確認の請求のみ
法制度の不存在による解決金の必要性
解雇撤回が必要となる理由
解雇が撤回できないとの法的主張に対してどう対応するべきか
解雇撤回後は環境整備に配慮する
解雇撤回の事例
注意点(リスクもある)
④整理解雇
整理解雇が認められる4つの要件
希望退職募集の範囲の決め方
募集人員数はデータをもとに慎重に決める
募集期間は最低2週間、最低1カ月前までに労組に提案
募集人員数に応募者が達しなかった場合
希望退職募集中に退職勧奨を行ってもよい
整理解雇を行った後の団体交渉
⑤ハラスメント問題
パワーハラスメント
セクシュアルハラスメント
労組・ユニオンの「炎上案件化戦略」問題
許可なく録音等されたデータを拡散する行為への対応
労組・ユニオンが関わるパワハラ案件対応上の留意点
⑥メンタルヘルス・休職問題
休職を命じる前に団体交渉を行った場合
従業員が復職を求め、団体交渉を開催した場合
試し勤務による復職プロセス
試し出勤制度とは?
試し勤務の内容
試し勤務は書面で合意をしたうえで実施することが望ましい
従業員側が試し勤務を拒否した場合
試し勤務の事例
試し勤務後に退職勧奨を行う場合の留意点
円満に解決するためには何をするべきか?
⑦賞与問題
労組と団体交渉のうえ賞与額を決定する
非組合員と組合員がいる場合の対応
妥結できないまま支給日を迎えた場合
賞与の団体交渉で提出すべき資料
⑧外国人労働者問題
労働者の失踪後に組合加入通知と団交申入れが来る
団交のメインテーマは「長時間労働・過重労働」
社会保険未加入等の指摘を受けるケースが多い
外国人労働者が関係する労組トラブル対応事例
予防法務の視点から考える募集・契約実務上の留意点
第6章 ケースに学べ!労働問題転ばぬ先の杖
①“日報”の活用による問題社員対応
問題社員が労働組合に加入することがある
問題社員の根本的な原因は自分を客観視できないこと
問題社員対策における日報の必要性・有効性
日報指導のポイント
日報を記載させることはパワハラになるのか
日報指導の事例
日報指導で上司はどのような指摘をすればよいか
日報による指導を行った場合の退職勧奨
②雇止め問題
「雇止め」が団体交渉の議題に挙がったら
期間途中で解雇した場合
期間満了で雇止めを行った場合
雇止めをめぐる団交
無期転換請求権をめぐるトラブルが増える
無期転換請求権が絡む案件は解決金の高額化も
問題は全員を無期転換したくないケース
無期転換をめぐるトラブル例①―就業規則不存在パターン
就業規則不存在パターンの対応
無期転換をめぐるトラブル例②―不更新合意パターン
不更新合意パターンの対応
合意書だけでは不更新合意無効と判断されるリスクがある
不更新合意を有効にするのはプロセス
派遣期間の途中解約――団体交渉申入れに派遣先は応じるべきか
業務受託会社(請負業者)の従業員の給与
業務受託会社(請負業者)の従業員の雇止め(解雇)
③配置転換拒否に関するトラブル
裁判所は配転有効と判断する可能性が高い
それでも配転を拒否し続けたらどうする?
④三六協定に関するトラブル
「昇給しなければ三六協定は締結しない」と言われたら
無条件に労働組合等の要求をのまない
三六協定締結拒否は組合にとっても両刃の剣
法定労働時間の枠の配分は使用者の裁量
⑤賃金カットに関するトラブル
賃金カットが議題の団体交渉への対処法
就業規則の変更による労働条件変更
賃金の引下げには高度な理由が必要
手当の引下げには説得力のある資料を
賞与の減額
⑥人事評価等の見直しに関するトラブル
職能資格等級の見直しに伴う降格
年俸制の導入
成果主義賃金制度の導入
退職金規程の見直し
⑦会社の解散・事業譲渡と不当労働行為
事業廃止に伴い全従業員を解雇
会社の解散について
事業譲渡の場合
新会社設立の場合
設例の物流運送会社の解散・解雇は有効か
第7章 労働組合との上手なつき合い方
①便宜供与をどこまで許すか
組合掲示板の設置について
組合事務所を貸与する場合
組合費を給料から天引き(チェックオフ)しなくてもよい
就業時間内の組合活動は原則認めない
②勤務態度の悪い労働組合員への対処法
口頭での注意、文書での注意
異動には細やかな配慮が必要
懲戒処分を行う際の注意点
③文書に軽い気持ちで署名・押印しない
重要な意味を持つ労働協約
労働協約に違反したらどうなるか
労働協約の終了事由
労働協約の解約の進め方
④ユニオンショップ協定を結ぶ義務はない
ユニオンショップ協定とは何か
ユニオンショップ協定を結ぶメリット
ユニオンショップの協定例
脱退後、別の労働組合に加入した場合の解雇
おわりに
奥付