- 発売日
- 2019年07月31日
- 出版社
- 弘文堂
- 編著等
- 樋口範雄
高齢者法は、様々な高齢者のそれぞれが抱える問題に対処するための法的なプランニングであり、個人が高齢期をより良く生きることを支援するためのものです。アメリカでは、早くから高齢者法の重要性に注目し、医療、住まい、年金、財産承継、生前信託、就労、虐待などの問題に対応する仕組みを作り上げてきています。多くのロー・スクールで高齢者法は学ばれてもいます。日本にも高齢者法は不可欠です。超高齢社会に必至なプランニングと支援のあり方を知り、今後の方策を考えるための必読書です。
目次
表紙
はしがき
凡例
目次
第1章 アメリカの高齢者法と専門家法曹の役割
Ⅰ アメリカの高齢者と高齢者法
1 注目の早さ―すでに 20世紀の段階で
2 高齢者の課題と専門家横断的な対応
3 アメリカ高齢者法―個別の法的プランニングが重要
Ⅱ アメリカ高齢者法の4つのC
Ⅲ アメリカの高齢社会の特色
1 高齢者の数とその増加
2 アメリカの高齢社会の内訳と特色
第2章 年齢による差別・区別
Ⅰ 年齢による区分―高齢者に有利な区分と不利な区分
Ⅱ 合衆国憲法と年齢による差別
1 年齢による差別の位置づけ
2 年齢による差別と憲法判例
Ⅲ ADEA(Age Discrimination in Employment Act:雇用における年齢差別禁止法)
1 ADEA制定以来の改正の歴史
2 ADEAの保護の対象者と非対象者
3 ADEAに基づく訴えの難しさ
4 ADEAに基づく救済と差別禁止実現の仕組み
Ⅳ その他の年齢による差別
1 自動車運転と高齢者
2 住宅に関する年齢による差別
3 医療における差別
第3章 高齢者の医療と終末期のあり方
Ⅰ 医療の基本原則と終末期医療
Ⅱ インフォームド・コンセント法理と患者の自己決定権
1 インフォームド・コンセント法理の意義
2 インフォームド・コンセント―法理の性格と限界
Ⅲ 終末期における自己決定―例外と基本原則の尊重
Ⅳ 終末期に関するアメリカ法―立法と判例の展開
1 州および連邦の立法
2 判例法
Ⅴ 終末期とアメリカ法―現状の要約
Ⅵ 自己決定権がうまく機能しない現状
1 法が機能しない現状の描写
2 リビング・ウィルが機能しない理由の分析
Ⅶ 医師の自殺幇助という新たな課題
第4章 高齢者医療制度衽衲メディケア(Medicare)
Ⅰ アメリカにおける高齢者医療制度の考え方
1 アメリカの医療制度と高齢者のための医療制度
2 アメリカの医療制度略史
3 メディケアの骨子
Ⅱ メディケアの概要
1 メディケアの財源
2 メディケアの受給資格
3 メディケアのカバーする医療内容
Ⅲ メディギャップ(Medigap)保険―メディケアを補充する保険
1 標準化されたプラン
2 消費者保護
3 メディギャップ保険のカバーする内容
Ⅳ 高齢者の医療費と破産
第5章 高齢者医療制度衽衲メディケイド(Medicaid)
Ⅰ メディケアを補完する高齢者医療制度
Ⅱ メディケイドの概要
1 給付の内容
2 受給資格―2つのキー・ワード
3 受給資格に関する3つの課題
Ⅲ メディケイドをめぐる裁判例
Ⅳ メディケイドとマネジド・ケア
1 マネジド・ケア―民間部門のコスト管理の活用
2 マネジド・ケアによるメディケイドに関する最近の動向
第6章 高齢者の住まい衽衲ナーシング・ホーム等
Ⅰ 住まいの重要性
Ⅱ ナーシング・ホーム(nursing home)
1 ナーシング・ホームの概要
2 ナーシング・ホームに対する規制の仕組み
3 入居の際の要件
4 ナーシング・ホーム居住者の権利
5 ナーシング・ホームをめぐる裁判例
Ⅲ Assisted living facility(生活支援施設)などの高齢者施設
1 アメリカの老人ホーム
2 比較的経済的に豊かな層のためのassisted living
3 assisted livingをめぐる裁判例
Ⅳ CCRC(continuing care retirement community)という新たな施設
1 CCRCの意義と課題
2 CCRCをめぐる裁判例
V Aging in placeと在宅でのケア
1 AARPとaging in place
2 在宅で住み続けること―aging in place
第7章 高齢者の経済的基盤
Ⅰ 社会保障税に基づく年金(Social Security benefits)
1 社会保障税に基づく年金の意義と特徴
2 受給資格
3 給付内容
4 年金を給付しながら働き続けること
Ⅱ 補足的所得保障(SSI:Supplemental Security Income)
1 SSIとは
2 補足的所得保障給付(SSI)と社会保障税に基づく年金給付(SS:Social Security)との異同
3 SSIの概要および実情
Ⅲ 企業年金
1 私的年金としての企業年金
2 年金のタイプ
3 年金支給の要件と年金額の定め方
4 年金の受け取り方―選択肢の多さ
Ⅳ 貯蓄・個人的投資や家族による扶養
1 貯蓄または個人的投資
2 家族による扶養と支援(family support)
第8章 成年後見制度とそれに代わる仕組み
Ⅰ 成年後見制度の位置づけ
Ⅱ アメリカの成年後見制度の概要
1 成年後見制度の呼称
2 後見人選任の申請手続
3 成年後見人の権限および義務とその監督
4 成年後見の終了
Ⅲ 成年後見に関する判例
Ⅳ 成年後見制度への批判
Ⅴ 2017年の成年後見制度改善案
1 統一州法案の歴史
2 統一州法案の要点
Ⅵ 後見制度に代わる工夫―私的な事前プランニング
1 医療面でのプランニング
2 財産上のプランニング
第9章 アメリカにおける財産承継と生前信託
Ⅰ 相続に関するアメリカの状況
Ⅱ probateからtrust へ
Ⅲ 撤回可能信託による財産管理と財産承継
1 委託者生存中
2 委託者死亡時において
Ⅳ アメリカにおける法の変化とダイナミズム
Ⅴ アメリカで信託を絶対必要とする人たち
1 未成年者に財産承継する場合
2 障害のある人に財産承継する場合
3 浪費者に財産承継する場合
4 同性愛者や何らかの理由で結婚しない同居者がいる場合
5 再婚などで複雑な家族関係のある場合
6 別居したカップルが別々の信託を設定する場合
7 莫大な財産のある場合
8 小規模な財産しかない場合
9 委託者の能力喪失
Ⅵ 日本における相続制度の問題―いくつかの事例を見て
Ⅶ 生前信託以外の多彩な遺言代替方法
1 生命保険の受取人指定
2 年金・退職年金口座の受益者指定
3 銀行口座・証券口座
4 証券や自動車について、TOD登録
5 不動産についての合有(joint tenancy)を登録する証書
6 不動産証書について TOD登録
Ⅷ 高齢者にとって―プランニングの重要性
第10章 高齢者虐待
Ⅰ 高齢者と暴力、虐待
1 アメリカの家庭内暴力
2 アメリカにおける児童虐待と高齢者虐待との比較
3 アメリカの高齢者虐待の現状とその類型
Ⅱ 高齢者虐待と法的対応
1 連邦法と州法
2 通報義務を定める法
3 高齢者虐待と刑事法
Ⅲ 高齢者虐待に関する判例とそれらが示唆するもの
Ⅳ 高齢者に対する経済的虐待・搾取
1 経済的虐待・搾取とそれに対する法的対応
2 専門家の活用その1弁護士
3 専門家の活用その2金融事業者
Ⅴ アメリカの高齢者虐待と今後の展望
第11章 アメリカ高齢者法から学ぶこと
Ⅰ プランニングの必要性とそれを助ける仕組み
Ⅱ 高齢者法という授業
Ⅲ 高齢者とビジネス
Ⅳ 高齢者と就労の意義の再検討
1 日本の現状
2 アメリカにおける高齢者と就労
事項索引(和文・欧文)
判例索引
奥付