台湾の会社法によって制限されている会社の行為

国際取引・海外進出

 日本企業である当社は台湾人と共同出資をし、台湾において株式会社Aを設立しました。董事長は日本人の甲です。下記の場合、A社は、乙に金銭を貸与したり、乙の保証人になったりすることができるのでしょうか。

事例①
A社の自然人株主である台湾人乙が自己の事業のため、借入を受けることが必要となった場合、A社は乙に金銭を貸与することができるか。

事例②
乙がA社の従業員である場合、乙がA社から一定金額を借り受け、後日給与および賞与から差し引くことを希望している場合、A社は乙に金銭を貸与することができるか。

事例③
乙が第三者から借金し、A社に乙の保証人になってほしいと希望している場合、A社は乙の保証人になることができるか。

 各事例についての回答は下記のとおりです。

事例①
A社は乙に金銭を貸与することはできません。また、董事長甲がA社に対して乙に金銭を貸与させた場合、甲は乙と連帯して、A社に対し貸与した金銭について返還責任を負います。

事例②
乙がA社の従業員の場合、乙がA社から一定金額を借り受け、それを後日給与および賞与から差し引く形で、A社が乙に資金を貸与する行為は可能です。

事例③
A社の定款でA社が保証人となることができる旨の定めがある、またはその他の法律により本件の状況においてA社が保証人となることができる場合を除き、A社は保証人となることができません。また、董事長甲がA社を保証人とさせた場合、甲は自ら保証責任を負います。さらに、A社が損害を被った場合、甲はA社に対し損害賠償責任も負わなければなりません。

解説

目次

  1. 再投資の制限
  2. 資金貸与の制限
  3. 保証人となることについての制限

※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。

 会社の行為は、法律および定款によって制限されます。会社法(中国語名:公司法)では、会社財務の健全性を保障し、会社責任者に会社財務を危うくするような行為をさせることを避けるため、特に会社の行為について、以下のような制限を設けています。

再投資の制限

 会社法13条の規定によると、会社は、他の会社の無限責任株主、または他の組合事業の組合員になることができません
 また、同条では、株式公開発行会社が他の会社の有限責任株主となる場合、その投資総額は、会社の払込資本金の40%を超えることはできないと規定しています。ただし、以下の場合に、会社が他の会社の有限責任株主となったときは、払込資本金の40%を超えることはできないという制限は受けません。
*従来は非公開会社が他の会社の有限責任株主となる場合にも上記制限を受けていましたが、2018年の会社法改正により、当該制限が解除されました。

  1. 当該会社が投資を専業にしている場合 1
  2. 定款に別段の定めがある場合
  3. 株主の同意または株主総会決議を得た場合

 上記③の株主の同意または株主総会決議とは、発行済株式総数の3分の2以上を有する株主が出席し、出席株主が有する議決権の過半数による同意をもって株主総会決議がなされた場合を指します 2

資金貸与の制限

 会社法15条の規定によると、会社は、株主またはいかなる他人に対しても金銭を貸与することができません。ただし、会社と他の会社または行号 3 との間に、業務上の取引がある場合には、会社は金銭を他の会社または行号に貸与することができます。また、たとえ会社と他の会社または行号と業務上の取引がない場合でも、短期資金融通の必要性があるのであれば、会社の純資産(すなわち、会社の資産総額から負債総額を引いた残額)の40%の限度内で金銭を貸与することができます 4
 また、金銭を貸与することができる場合においても、貸与の対象は会社または行号に限られているため、自然人に貸与することはできません。当然、自然人の株主も、金銭貸与の対象とはなりません。設例の事例①においては、乙は自然人であるため、A社は、乙に金銭を貸与することはできません。また、董事長甲がA社に対して乙に金銭を貸与させた場合、甲は乙と連帯して、A社に対し返還責任を負わなければなりません。

 ただし、経済部の解釈によると、従業員が会社から金銭を借り受け、当該従業員の給与または賞与から前借金を差し引くことが約定されている場合は、同条の規定に違反しないとされます。よって、設例の事例②においては、従業員がA社から一定金額を借り受けた場合、A社は当該金額を後日給与および賞与から差し引くことができます。
 会社責任者が同条に違反して、会社資金を他人に貸与した場合、当該貸与行為は無効となります。会社責任者は、借主と連帯して、会社に対し返還責任を負わなければなりません。

保証人となることについての制限

 会社法16条の規定によると、会社は、他の法律または定款で規定している場合を除き、弁済のために保証人となることはできません。会社責任者が会社をして、第三者のための保証人にさせた場合、会社責任者自らが保証責任を負わなければなりません。また、会社が損害を受けた場合、会社責任者は賠償責任も負わなければなりません。会社責任者が会社を第三者のための保証人にさせたとしても、保証契約の効力は会社に対しては生じず、当該会社責任者と第三者との間においてのみ効力は生じるのであり、当該会社責任者は、自ら保証責任を負わなければならないのです。

 よって、設例の事例③においては、A社の定款でA社が保証人となることができる旨の定めがある、またはその他の法律により本件の状況においてA社が保証人となることができる場合を除き、A社は保証人となることができません。

 会社が会社財産をもって第三者のために抵当権等の担保物権を設定することができるかについては、会社法上、明文で規定されていません。しかし、台湾の最高裁判例では、会社が会社財産をもって第三者のために担保物権を設定した場合、会社財務に影響を与える点については、会社が第三者のために保証人となった場合と同様であるため、制限すべきであると判示されています。

 なお、上記の会社の行為上の制限に関する規定は、合同会社、株式会社に適用されるだけでなく、外国企業が台湾に設立した支社にも適用されることに注意が必要です。


  1. 会社が投資を副業としている場合については、払込資本金の40%を超えることはできないという制限を受けます。 ↩︎

  2. 発行済株式総数の過半数を有する株主が出席し、出席株主が有する議決権の3分の2以上による同意をもって決議がなされた場合も、払込資本金の40%という制限を受けません。 ↩︎

  3. 「行号」とは、個人が単独出資する事業または組合が出資する事業であり、台湾政府機関において営利事業登記がなされたものを指します。行号の債務については、当該単独出資の個人または組合の共同経営者が無限責任を負います。 ↩︎

  4. いわゆる融通資金における短期とは、1年または1営業周期(長い方を基準とする)を指します。 ↩︎

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