台湾の会社法における会社形態と特徴
国際取引・海外進出日本企業である当社は、出資をして台湾に子会社を設立する予定です。台湾の会社法に基づき、現地ではどのような形態の会社を設立することができるのでしょうか。また、台湾の会社法に基づかずに現地に拠点を設立する場合、どういった方法で台湾に拠点を設立することができるのでしょうか。
台湾の会社法には4種類の会社形態が規定されていますが、実際は「合同会社」および「株式会社」の2種類の会社のみが存在しています。台湾において子会社を設立する場合は「合同会社」または「株式会社」の方式になります。また、日本企業の支社を設立し、営業行為に従事することもできます。
子会社も支社も設立しない場合、「駐在員事務所」を設立する方式で拠点を設立することも可能ですが、「駐在員事務所」は、台湾において営業活動に従事することはできません。
解説
※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。
会社法で規定されている会社形態
4つの会社形態
会社法(中国語名:公司法)2条の規定によると、会社の構成方式には以下の4種類があります。
会社の構成方式 | 中国語名 | 規定の内容 |
---|---|---|
合名会社 | 無限公司 | 2名以上の株主から構成され、会社債務について連帯無限の弁済責任を負う会社 |
合同会社 | 有限公司 | 1名以上の株主から構成され、その出資額につき会社に対して責任を負う会社 |
合資会社 | 両合公司 | 1名以上の無限責任株主、および1名以上の有限責任株主から構成され、無限責任株主は会社債務について連帯無限の弁済責任を負い、有限責任株主は、その出資額につき会社に対して責任を負う会社 |
株式会社 | 股份有限公司 | 2名以上の株主、または政府、法人株主1名から構成され、全部の資本が株式に細分化され、その引き受けた株式につき会社に対して責任を負う会社 |
会社法には、上記4種類の会社形態が規定されていますが、実際、台湾には「合同会社」および「株式会社」のみが存在します。
設立の要件、手続
会社法2条の規定によると、「合同会社」は株主が1名いれば設立することができます。
また、「株式会社」の場合、法人株主が1名いれば設立することができます。この他、台湾には外国人が台湾で会社を設立する際、台湾人と共同出資して設立しなければならないという規定はないため(ここでいう「外国人」は、「外国企業」を含む概念です。根拠は外国人投資条例3条1項)、外国企業は、台湾において単独資本で「合同会社」または「株式会社」を設立することができます。
ただし、外国人が台湾で出資して会社を設立する際には、申請書等の資料を提出し、経済部投資審議委員会(以下、「投審会」といいます)の許可を得なければなりません。
台湾において、法律により禁止されている投資項目に従事することを望んでも、投審会から許可が下りることはなく、また、投資が制限されている項目については、外国人の投資が一定割合を超えることが禁止されています。投審会の許可を得なければ、海外からの投資資金の送金および登記ができません。どの項目の投資を禁止または制限するかに関しては、行政院が定期的に検討しています。
会社の払込資本金が5億新台湾ドル以上の場合は、経済部商業司が会社登記を処理する機関になります。会社の払込資本金が5億新台湾ドル未満の場合は、会社所在地によって、以下の機関が会社登記を処理します。
- 台北市:台北市商業処
- 新北市(旧台北県):新北市政府経済発展局
- 桃園市:桃園市政府経済発展局
- 台中市:台中市政府経済発展局
- 台南市:台南市政府経済発展局
- 高雄市:高雄市政府経済発展局
- 加工出口区(輸出加工区):経済部加工出口区管理処
- 科学工業園区(サイエンスパーク):科技部科学工業園区管理局
- 屏東農業生物技術園区(グリーンバイオパーク):屏東農業生物技術園区準備処
- 海港自由貿易港区:交通部航港局
- 桃園航空自由貿易港区:交通部民用航空局
- その他:経済部中部弁公室
外国企業の支社設立
会社法371条の規定によると、外国企業は台湾において登記すれば、「支社」の形式で台湾において営業することができます。
外国企業が台湾で出資を行い、「合同会社」または「株式会社」を設立する場合、当該「合同会社」または「株式会社」は、外国企業とは本質的に独立した法人であり、外国企業は「合同会社」または「株式会社」の債務について有限責任のみを負います。しかし、外国企業が台湾において「支社」を設立する場合は、「支社」は本質的に当該外国企業の一部であるため、「支社」が負担する一切の債務について、当該外国企業が最終的に責任を負わなければなりません。
駐在員事務所
外国企業が台湾において出資をせず、単に代表者を派遣して台湾で契約交渉、契約締結、オファー、値段交渉、入札および調達等の業務上の法律行為のみを行う場合は、会社法386条に基づき、当該外国企業の本社の関連登記事項を台湾経済部へ提出し、駐在員事務所を設置することができます。駐在員事務所は課税の対象ではないため、台湾においていかなる営業活動に従事することもできません。
外国企業は、台湾経済部商業司に以下の書類を提出すれば、駐在員事務所を設立することができ、設立費用は不要です。
- 申請書
- その他機関の許可書(法により事前に目的事業主管機関の許可を得るべき場合は、許可書類の写しを添付しなければならない。ない場合は送付不要)
- 日本企業の商業登記簿謄本
- 台湾における代表者に対する委任状
- 台湾における代表者の身分証明書類(日本人の場合パスポート)
- 建物所有権者の同意書の正本(どの会社に使用させることに同意するのか、その会社名を明記しなければならない)および直近一期の建物税完納証明書(または所有権証明書)の写し(建物が会社所有の場合又は賃貸借契約書の写しを添付した場合は、同意書の添付は不要)
- 外国企業の代表者指名派遣(変更)届出表一式(2部)

弁護士法人 黒田法律事務所
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