業務委託契約書の作成・レビューにおける留意点

取引・契約・債権回収
幅野 直人弁護士 かなめ総合法律事務所

 業務委託契約書を作成・レビューする際に留意すべき点を教えてください。

 業務委託契約書といっても様々な類型があるため一概には言えるものではないですが、①委託する業務の内容、②業務委託料の内容、③再委託の可否、④知的財産権の取扱い、⑤損害賠償条項などの定め方などに留意して作成・レビューすることが望まれます。安易に契約書ひな形に頼ることなく、当該事案の実態に即した契約書作成・レビューを行うことが求められます。

解説

目次

  1. 業務委託契約書とは
  2. 委託する業務の内容
    1. 委託する業務内容を具体的に記載する
    2. 委任(準委任)契約か請負契約か
  3. 業務委託料の内容
  4. 再委託の可否
  5. 知的財産権の取扱い
  6. 損害賠償条項
  7. その他の条項について

業務委託契約書とは

 業務委託契約書とは、その名のとおり、委託者が何らかの業務を第三者(受託者)に委託(外注)することを内容とする契約書です。
 もっとも、一口に業務委託契約書といっても、委託する業務の内容等によって様々な類型があります。

【業務委託契約書の類型例】
  • 清掃業務委託契約書
  • 運送業務委託契約書
  • ソフトウェア開発委託契約書
  • コンサルティング契約書 など

 法律上は、民法の委任(準委任)契約(643条、656条)と請負契約(632条)のいずれかに分類できる場合が多いです。

委託する業務の内容

委託する業務内容を具体的に記載する

 業務委託契約書の作成・レビューにおいて最も重要な点は、委託する業務の内容をしっかりと記載することです。
 たとえば、清掃業務委託契約の場合に、次のように定めることがあります。

第◯条(業務内容)
 委託者は、受託者に対し、清掃業務を委託し、受託者はこれを承諾する。

 このように定めた場合、委託する業務の内容が「清掃業務」であることはわかりますが、一口に「清掃」といっても、掃除機をかける、ゴミの回収をする、ホテル清掃の場合等にはベッドメイキングを行うなど、その具体的内容は様々です。
 委託する業務の内容を契約書で明確に記載しておかないと、委託者と受託者との間で想定する業務内容に齟齬が生じ、せっかく業務委託契約書を作成したにもかかわらず、契約書に基づいて、委託者の想定する業務を受託者に対して求めることができないといった事態が生じかねません。
 この例の場合にも、委託する業務の内容として、清掃の具体的内容はもちろんのこと、清掃の頻度、時間帯など想定している業務内容をできるだけ細かく定め、当事者間で齟齬のないようにしておくことが求められます。

 委託する業務の内容を契約書に具体的に定める場合、その記載が膨大なものになることも少なくないため、契約書上は以下のように定めておき、別紙を業務委託契約書に添付するという方法が採られることも多くあります。

第◯条(業務内容)
 委託者は、受託者に対し、清掃業務を委託し、受託者はこれを承諾する。委託する清掃業務の具体的内容は、別紙のとおりとする。

委任(準委任)契約か請負契約か

 また、委託する業務の内容として、当該業務委託が、委任(準委任)契約か請負契約か、という問題があります。
 委任契約とは、当事者の一方(委任者)が法律行為を相手方(受任者)に委託し、相手方(受任者)がこれを行うことを内容とする契約です(民法643条)。一方で、請負契約とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを内容とする契約です(民法632条)。なお、実務上は、委任といっても法律行為の委託をすることはあまりなく、清掃などの事実行為を委託することがほとんどです。このように事実行為を委託する契約を準委任契約(民法656条)といいます。

 委任契約と請負契約の違いは、委託の内容が一定の「行為」を目的としているか、「仕事の完成」を目的としているかです。行為を目的としている場合は委任(準委任)契約、仕事の完成を目的としている場合は請負契約として区別することができます。
 たとえば、ソフトウェア開発委託契約書は、ソフトウェアという目的物の完成を委託しているので通常は請負契約となりますし、清掃業務委託契約書は、清掃という事実行為を委託しているので通常は準委任契約です。

委託の内容 業務委託契約書の例
委任(準委任)契約 一定の行為を目的としている 清掃業務委託契約書(清掃という事実行為を委託する準委任契約)
請負契約 仕事の完成を目的としている ソフトウェア開発委託契約書(ソフトウェアという目的物の完成を委託する請負契約)

 もっとも、たとえば、システム点検業務委託契約の場合、点検という事実行為を委託しているだけであれば、その性質は準委任契約と考えられますが、点検の結果異常が見つかったときにその補修をすることまで委託しているのであれば、システムの補修業務の完成まで要求されていることから請負契約の側面を持つと考えることができるなど、その区別が必ずしも容易でない場合もあります。

 業務委託当事者間で認識の齟齬がないよう、以下のように契約の性質を明記することもあります。

第◯条(本契約の性質)
 委託者及び受託者は、本契約が準委任契約であることを確認する。

 委任(準委任)契約か請負契約かによって、契約で定めなかった事項について、民法上の委任の規定が及ぶこととなるか、請負の規定が及ぶこととなるかが変わってくることになります。また、委任(準委任)契約か請負契約かが、個々の契約条項の解釈に影響を与える可能性もあります。さらに、請負契約の場合には契約書に印紙税がかかりますが(印紙税法別表第一の第2号文書または継続的取引の基本契約書の場合には第7号文書に該当します)、委任契約の場合には原則として印紙税がかからないといった違いもあります。  

業務委託料の内容

 業務委託料の金額やその支払方法(現金払いか手形払いか等)、支払期日、支払条件などを定めることとなります。

 また、業務委託契約書では、業務委託の対価である業務委託料の支払回数を一括払いとするもの、月々の定額払いとするもの、分割払いとするものなど様々なものが存在します。
 契約上、これと異なる定めを禁止するものではありませんが、請負契約の場合、完成した仕事の結果に対して対価を払うものであることから、業務委託料の支払いは仕事の完成と目的物の引渡後に一括払いとされることが多いです。これに対して、委任契約の場合、短期の契約の場合には一括払いとされることもありますが、委託した行為に対して対価を払うものであるという性質上、分割払いや月々の定額払いとなる場合が多いと思います。たとえば、長期にわたるプロジェクトのコンサルティング契約書の場合には、プロジェクトの進捗段階に応じた分割払いや月々の定額払いとされているものが一般的です。

 なお、業務委託の内容や契約当事者の関係性によっては、下請代金支払遅延等防止法(いわゆる「下請法」)の適用を受ける場合があり、この場合には、業務委託料(下請代金)の支払は、給付の受領日または役務の提供日から起算して60日の期間内に支払期日を定めることが要求されています(下請法2条の2)。このように個別の法令によって、支払条件が規制されることもあるので業務委託契約書の作成・レビューにおいては、この点にも注意が必要です。

再委託の可否

 委託者が受託者に対し、その委託業務を第三者へ再委託することを認めるか否かについては、①再委託を自由に認める、②再委託を一切認めない、③委託者の承諾がある場合にのみ認める、といったような選択肢が考えられます。

 委任(準委任)契約の場合により顕著ですが、委託者は受託者を信頼して業務委託契約を締結するものですので、委託者側は再委託を認めたくないと考えることの方が多いでしょう。一方で再委託が一切できないとすると柔軟性を欠きかえってよくない結果を招きかねません。そのことから、③(委託者の承諾がある場合にのみ認める)の選択肢が採られ、以下のような条項とすることが多いように思います。

第◯条(再委託の禁止)
 受託者は、委託者の事前の書面による承諾がある場合を除き、本件業務を第三者に再委託することはできない。

 再委託を認める場合、再委託先には委託先と同様の水準で業務にあたらせるべく、委託先に課したのと同じ義務を守らせるようにする必要があります。

 たとえば、コンサルティング契約では、受託者に対し、委託者側企業の秘密情報を開示することがあります。この場合、業務委託契約書に秘密保持条項を設けて、受託者に秘密保持義務を負わせることと思いますが、再委託を認めるのであれば、受託者から再委託先への秘密情報の開示を許容する必要があります。したがって、再委託先にも秘密保持義務を負わせる必要性が出てきます。
 委託者が自ら再委託先と別途秘密保持契約を結ぶことも考えられますが、以下のように定めることで受託者をして再委託先に秘密保持義務を課させる場合が多いでしょう。また、この場合、再委託先の義務違反によって生じた損害についても、受託者が委託者に対して賠償義務を負う旨の規定を設けることもあります。

第◯条
 受託者は再委託先に対して、第◯条に定める秘密保持義務と同等以上の義務を再委託先にも負わせたうえで、委託者の秘密情報を再委託先に対して開示することができる。

知的財産権の取扱い

 ソフトウェア開発委託契約やコンサルティング契約においては、受託者が業務委託契約書に基づいて行う業務遂行の過程で、著作権をはじめとする知的財産権が発生することがありえます。

 知的財産権が発生した場合の取扱いについては、業務委託契約書において、①委託者に譲渡・帰属させる、②受託者に留保・帰属させる、③別途当事者間で協議する、といったような定め方が考えられます
 一見すると、③(別途当事者間で協議する)の定め方が公平で、最もよいように見えるかもしれませんが、業務委託契約書で規定をしておかないと、その後当事者間で協議がまとまらないために、業務委託によって得た成果物を委託者が使用することに支障をきたしてしまうといった弊害が考えられます。
 また、①(委託者に譲渡・帰属させる)の定め方を採用する場合には、著作者人格権のような譲渡できない性質の権利(著作権法59条)を受託者が行使しない旨も規定すること、②(受託者に留保・帰属させる)を採用する場合には、委託者が業務委託によって得た成果物の使用に支障がないようにしておくこと等の配慮も必要となります。

損害賠償条項

 業務委託契約書に限った話ではありませんが、契約違反等があった場合に、どの範囲で損害賠償請求を認めることとするかはあらかじめ合意しておくべきです。とりわけ、ソフトウェア開発委託契約などにおいては、ソフトウェアの不具合等により予期せぬ損害が生じる可能性が否定できません。
 そこで、契約書上、以下のように定め、損害賠償に一定の制限を加えておくことが考えられます。

第◯条(損害賠償)
 委託者及び受託者は、本契約に関して、相手方に損害を与えた場合には、自己の責に帰すべき事由と相当因果関係のある範囲で相手方に対して損害賠償を支払わなければならない。もっとも、損害賠償の金額は、故意または重過失がある場合を除き、実際に生じた損害額にかかわらず、業務委託料相当額を上限とする。

 上記の例のような定め方以外にも、損害賠償請求の対象となる損害から逸失利益(当該契約違反等がなければ得られたであろう利益)を除く規定を設ける、損害賠償の請求可能期間を限定する、損害賠償請求の対象となる場面を当事者に故意・重過失がある場合のみに限定する、といった損害賠償条項も見られます。
 ただし、損害賠償責任を限定する内容があまりに一方当事者にとって有利または不利なものである場合には、裁判において当該損害賠償条項が無効と判断される可能性もあるところであり、損害賠償責任を過度に限定することのないよう注意が必要です。

その他の条項について

 上記に記載した事項以外にも、成果物がある場合の瑕疵担保責任の定め方や、秘密保持条項、契約解除条項、反社会的勢力の排除条項、契約期間、契約更新条項、管轄・準拠法の定めなどの一般条項の定め方については、当該事案の実態に即した業務委託契約書の作成・レビューが必要となります。

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