リスク低減措置としての「顧客管理」(カスタマー・デュー・ディリジェンス)とは

ファイナンス

 マネー・ローンダリング、テロ資金供与対策における「顧客管理」とはどのようなものですか。

 「顧客管理」は、リスク低減措置の中核的な項目であり、特に個々の顧客に着目し、自らが特定・評価したリスクを前提として、個々の顧客の情報や当該顧客が行う取引の内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべき低減措置を判断・実施する一連の流れのことです。

解説

目次

  1. 「顧客管理」の意義(AML/CFTガイドラインII-2(3) (ii) )
  2. 顧客管理として「対応が求められる事項」

「顧客管理」の意義(AML/CFTガイドラインII-2(3) (ii) )

 「顧客管理」(カスタマー・デュー・ディリジェンス: CDD)は、リスク低減措置の中核的な項目であり、特に個々の顧客に着目し、自らが特定・評価したリスクを前提として、個々の顧客の情報や当該顧客が行う取引の内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべき低減措置を判断・実施する一連の流れのことです。

 金融機関等が顧客と取引を行うにあたっては、当該顧客がどのような人物・団体で、団体の実質的支配者は誰か、どのような取引目的を有しているか、資金の流れはどうなっているかなど、顧客に係る基本的な情報を適切に調査し、講ずべき低減措置を判断・実施することが必要不可欠です。

 顧客管理の一連の流れは、取引関係の開始時、継続時、終了時の各段階に便宜的に区分することができますが、それぞれの段階において、個々の顧客やその行う取引のリスクの大きさに応じて調査し、講ずべき低減措置を的確に判断・実施する必要があります。

 自らが、マネロン・テロ資金供与リスクが高いと判断した顧客については、いわゆる外国 PEPs(Politically Exposed Persons)や特定国等(イラン・北朝鮮が指定されている)に係る取引を行う顧客も含め、より厳格な顧客管理Enhanced Due Diligence:EDD)を行うことが求められる一方、リスクが低いと判断した場合には、簡素な顧客管理Simplified Due Diligence:SDD)を行うなど、円滑な取引の実行に配慮することが求められます。

顧客管理として「対応が求められる事項」

 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインにおいて、顧客管理として「対応が求められる事項」は以下のとおりです。

  1. 自らが行ったリスクの特定・評価に基づいて、リスクが高いと思われる顧客・取引とそれへの対応を類型的・具体的に判断することができるよう、顧客の受入れに関する方針を定めること
  2. 前記①の顧客の受入れに関する方針の策定にあたっては、顧客およびその実質的支配者の職業・事業内容のほか、たとえば、経歴、資産・収入の状況や資金源、居住国等、顧客が利用する商品・サービス、取引形態等、顧客に関する様々な情報を勘案すること
  3. 顧客およびその実質的支配者の本人特定事項を含む本人確認事項、取引目的等の調査にあたっては、信頼に足る証跡を求めてこれを行うこと
  4. 顧客およびその実質的支配者の氏名と関係当局による制裁リスト等とを照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他必要な措置を講ずること
  5. 信頼性の高いデータベースやシステムを導入するなど、金融機関等の規模や特性等に応じた合理的な方法により、リスクが高い顧客を的確に検知する枠組みを構築すること
  6. マネロン・テロ資金供与リスクが高いと判断した顧客については、以下を含むより厳格な顧客管理(EDD)を実施すること
    • 資産・収入の状況、取引の目的、職業・地位、資金源等について、 リスクに応じ追加的な情報を入手すること
    • 当該顧客との取引の実施等につき、上級管理職の承認を得ること
    • リスクに応じて、当該顧客が行う取引に係る敷居値の厳格化等の取引モニタリングの強化や、定期的な顧客情報の調査頻度の増加等を図ること
    • 当該顧客と属性等が類似する他の顧客につき、リスク評価の厳格化等が必要でないか検討すること
  7. マネロン・テロ資金供与リスクが低いと判断した顧客については、当該リスクの特性を踏まえながら、当該顧客が行う取引のモニタリングに係る敷居値を緩和するなどの簡素な顧客管理(SDD)を行うなど、円滑な取引の実行に配慮すること(注1)(注2)
    (注1)この場合にあっても、金融機関等が我が国および当該取引に適用される国・地域の法規制等を遵守することは、もとより当然である。
    (注2)FATF、BCBS 等においては、少額・日常的な個人取引を、厳格な顧客管理を要しない取引の一例としてあげている。
  8. 「疑わしい取引の届出」における【対応が求められる事項】のほか、以下を含む、継続的な顧客管理を実施すること
    • 取引類型や顧客類型等に着目し、これらに係る自らのリスク評価や取引モニタリングの結果も踏まえながら、調査の対象及び頻度を含む継続的な顧客管理の方針を決定し、実施すること
    • 各顧客に実施されている調査の範囲・手法等が、当該顧客の取引実態や取引モニタリングの結果等に照らして適切か、継続的に検討すること
    • 調査の過程での照会や調査結果を適切に管理し、関係する役職員と共有すること
    • 各顧客のリスクが高まったと想定される具体的な事象が発生した場合のほか、定期的に顧客情報の確認を実施し、かつ確認の頻度を顧客のリスクに応じて異にすること
  9. 必要とされる情報の提供を利用者から受けられないなど、自らが定める適切な顧客管理を実施できないと判断した顧客・取引等については、取引の謝絶を行うこと等を含め、リスク遮断を図ることを検討すること
    その際、マネロン・テロ資金供与対策の名目で合理的な理由なく謝絶等を行わないこと

 参照:リスク低減措置としての「疑わしい取引の届出」の対応

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