発明者とその権利とは

知的財産権・エンタメ

 発明者とは何ですか。また、発明者は、発明に対してどのような権利を持つのでしょうか。

 発明者とは、当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担した者を意味します。発明者は、当該発明について特許を受ける権利や発明者名誉権を有しています。また、その発明が職務発明であれば、それを使用者が取得したときに、「相当の利益」を受ける権利を有する場合があります。

解説

目次

  1. 特許を受ける権利
    1. 特許出願
    2. 譲渡
    3. 実施許諾
    4. 担保
  2. 発明者名誉権

「発明者」とは

 特許法29条1項柱書には、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されています。このように、特許を受けることができるのは、「発明者」またはその承継人に限られています(発明者主義)。

 「発明者」の定義や要件について、特許法に明文の規定はないものの、「発明」とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう(特許法2条1項)とされていることから、発明者」とは、当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担した者を意味すると解されています。具体的には、以下のように解釈されています(東京地裁平成17年9月13日判決・判時 1916号133頁)。

発明者 当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担した者
発明者に該当しない者の例 ①単なる管理者
(発明者に対して一般的管理をしたにすぎない者)

例:具体的着想を示さずに、単に通常の研究テーマを与えたり、発明の過程において単に一般的な指導を与えたり、課題の解決のための抽象的助言を与えたにすぎない者

②単なる補助者
(発明者の指示に従い、補助したにすぎない者)

例:単にデータをまとめたり、文書を作成したり、実験を行ったにすぎない者

③単なる後援者
(発明者による発明の完成を援助したにすぎない者)

例:発明者に資金を提供したり、設備利用の便宜を与えたにすぎない者

 どのような行為を行えば「技術的思想の創作行為に現実に加担した」といえるのかは、技術分野によって異なります。たとえば、機械分野であれば、その構造や用途を着想した者が発明者とされることも多いと考えられますが、バイオ・医薬分野では、多くの場合、単に着想しただけでは発明の効果が明らかではなく、実験(試行錯誤)への関与が必要になるものと解されます。

 我が国の特許法の解釈としては、自然人のみが「発明者」になり得ると解されており、法人が発明者になることはできません(東京地裁昭和30年3月16日判決参照)。

特許を受ける権利

 発明者は、発明完成と同時に、「特許を受ける権利」(特許法33条、34条)を取得します。
 特許を受ける権利は、国(特許庁)に対し特許出願をして、特許の付与を求めるという、国に対する請求権である(公権的側面)とともに、財産権の一種である(私権的側面)と解されています。

 発明者は、特許を受ける権利に基づいて、以下の行為を行うことができます。  

特許出願

 発明者は、特許出願を行うことができます(特許法29条1項柱書)。

譲渡

 発明者は、特許を受ける権利を第三者に譲渡することができます(特許法33条1項)。
出願前の特許を受ける権利の譲渡は、合意のみで効力を生じますが、特許出願が第三者対抗要件とされています(特許法34条1項)。
 出願後の特許を受ける権利の譲渡は、特許庁長官への届出が効力発生要件とされています(特許法34条4項)。なお、相続その他の一般承継の場合には、届出がなくても効力を生じますが、遅滞なく届け出なければならないとされています(特許法34条5項)。

実施許諾

 発明者は、特許を受ける権利について、第三者に実施許諾を行うことが可能です。
 また、仮専用実施権・仮通常実施権制度(特許法34条の2、34条の3)により、これらの仮実施権を許諾すれば、後日、特許権の設定登録がなされた際に、実施権が設定されたとみなされることになります。

担保

 特許を受ける権利に質権を設定することはできません(特許法33条2項)。しかし、譲渡担保の設定は可能と解されています。

特許を受ける権利のイメージ図

発明者名誉権

 発明者は、特許証、願書、特許公報等に、発明者として記載される権利(発明者名誉権)を有すると解されています(特許法26条により我が国において直接適用されるパリ条約4条の3には、「発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する」と規定されています。また、特許法28条1項〔同法施行規則66条4号〕、36条1項2号、64条2項3号、66条3項3号には、特許証、願書、特許公報に発明者の氏名を記載すると規定されています)。

 発明者名誉権は人格権であり、侵害に対して損害賠償請求が可能と解されています(東京地裁平成19年3月23日判決)。また、願書に発明者の氏名が表示されていない場合、発明者は、出願人に対し、発明者の氏名を表示するよう補正を求めることができると解されています(大阪地裁平成14年5月23日判決判時 1825号116頁)。  

「相当の利益」を受ける権利

 当該発明が職務発明であり、職務発明規程等によって特許を受ける権利が使用者に帰属する場合には、発明者は、使用者に対して、相当の利益を受ける権利を有する場合があります(特許法35条4項)。

 参照:職務発明をした従業員に取得させる相当の利益とは

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