所有地にPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物がある場合にとるべき対応(2022年改正対応)

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 当社が所有している土地の地中にPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物が混入していることがわかりました。当社として、どのような対応をとる必要があるのでしょうか。

 所有地にPCB廃棄物が存在する場合、法令や条例等の規制を受けることがあります。特にPCB特別措置法では、一定の期間までにPCB廃棄物を処理する義務を課していますが、PCBを処理できる施設は限られているため、早急に対応することが必要です。また、購入した土地からPCB廃棄物が発見された場合には、土地の売主や汚染原因者に対して対策費用相当額の支払いを求めることが考えられます。

解説

目次

  1. PCB(ポリ塩化ビフェニル)の概要
  2. 法令・条例で求められる対応
    1. PCB特別措置法における規制
    2. 廃棄物処理法における規制
    3. 土壌汚染対策法における規制
    4. ダイオキシン類対策特別措置法における規制
    5. 条例による規制
  3. 土地の売主、汚染原因者に対して取り得る手段
    1. 民法上の損害賠償請求(瑕疵担保責任等)
    2. 土壌汚染対策法上の請求(汚染原因者に対する請求)

PCB(ポリ塩化ビフェニル)の概要

 PCB(ポリ塩化ビフェニル。以下「PCB」といいます)は、生物の体内に蓄積されやすく、人の健康を損なうおそれがある有害物質です。常温で液体の油状の化合物で、難燃性、低揮発性、耐熱性、高絶縁性などの特徴から、かつては、受変電設備のコンデンサー、トランス類の絶縁油、蛍光灯の安定器、熱媒体、ノーカーボン複写伝票のインクなどに使用されていました。
 しかし、PCBは、昭和43年のカネミ油症事件を契機にしてその毒性が社会問題化し、昭和47年以降、行政指導や化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)によってPCBの製造・使用が禁止されました。後述するとおり、PCB廃棄物を保管している事業者等は、行政に対して保管状況等を届出なければならないうえ、一定期間内に処分することが法律上義務付けられています。
 以下では、所有地にあるPCB廃棄物に対してとるべき対応について、

(1)法令・条例で求められる対応(後記2
(2)土地の売主や汚染原因者に対してとりうる手段(後記3

を説明します。
 なお、以下で使用する「」、「」、「規則」の記載は、それぞれPCB特別措置法同施行令または同施行規則を意味します。

法令・条例で求められる対応

 所有地にPCB廃棄物が存在する場合、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(以下「PCB特別措置法」といいます)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」といいます)、土壌汚染対策法、水質汚濁防止法、ダイオキシン類対策特別措置法、また、同土地が所在する都道府県や市町村の条例の規制を受ける場合があります。
 以下、主な規制について説明します。

PCB特別措置法における規制

 事業活動に伴ってPCB廃棄物(ポリ塩化ビフェニル廃棄物)を保管している事業者には、PCB特別措置法の規制が適用されます。同法では、PCB廃棄物等の保管、処分等について一定の規制が定められています。
 PCB特別措置法は、後述する廃棄物処理法の特別法と位置付けられています。

(1)規制の対象(高濃度PCB、低濃度PCB)

 PCBが付着したり染みこんだ汚染物等は、その汚染物に含まれているPCBの濃度を実際に測定することで、PCB廃棄物にあたるかどうか、PCB廃棄物にあたるとして低濃度か高濃度かを判断します。PCB廃棄物は、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分類されますが、後述のとおり、両者で処分期限や処分可能な処分場が異なります。そのため、いずれにあたるかを確認することが必要となります。
 高濃度PCB廃棄物は、以下のとおりです。

対象(下記が廃棄物となったもの) PCB含有割合 根拠条文
PCB原液 法2条2項1号
PCBを含む油 廃棄物に含まれているPCBの重量の割合が、0.5%を超えるもの 法2条2項2号
令2条1項
汚泥
紙くず
木くず
繊維くず
その他PCBが塗布され、または染み込んだ物
廃棄物のうちPCBに含まれている部分におけるPCBの重量の割合が1kgにつき100000mgを超えるもの 法2条2項3号
令2条2項
規則4条1項1号
金属くず
ガラスくず
陶磁器くず
工作物の新築、改築もしくは除去に伴って生じたコンクリートの破片
その他PCBが付着し、または封入された物
廃棄物に付着し、または封入されたPCBの割合が1kgにつき5000mgを超えるもの 法2条2項3号
令2条2項
規則4条1項3号

(2)PCB廃棄物の処理義務と処理期限

 その事業活動に伴って高濃度PCB廃棄物を保管する事業者(PCB保管事業者)は、高濃度PCB廃棄物の種類や保管場所が所在する区域ごとに、「処分期間」内に、自らまたは業者に委託して適切に処分する必要があります(法10条、14条)。

① 高濃度PCB廃棄物の場合の地域別処分期間等(2022年改正)

 高濃度PCB廃棄物の処理期限については、以下のとおり、地域ごとに決められています。
 2022年5月31日に、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」が改定され、処理の完了時期が実質的に延長されることが公表されました 1。具体的には、「計画的処理完了期限」の後に設定されていた「事業終了準備期間」(処理事業を終了するための準備期間)の間にも処理を行うことができることとしたものです。

JESCOの
処理施設
高濃度PCB廃棄物
の種類
事業対象地 計画的処理
完了期限
事業終了
準備期間
北九州 大型変圧器・
コンデンサ等
A地域 2019年3月末 2022年3月末
安定器および汚染物等 A地域、B地域、C地域(大阪 PCB処理事業所・豊田PCB処理事業所における処理対象物を除く) 2022年3月末 2024年3月末
大阪 大型変圧器・
コンデンサ等
B地域 2022年3月末 2025年3月末
安定器および汚染物等 B地域(小型電気機器の一部に限る) 2022年3月末 2025年3月末
豊田 大型変圧器・
コンデンサ等
C地域 2023年3月末 2026年3月末
安定器および汚染物等 C地域(小型電気機器の一部に限る) 2023年3月末 2026年3月末
東京 大型変圧器・
コンデンサ等
D地域 2023年3月末 2026年3月末
安定器および汚染物等 D地域(小型電気機器の一部に限る) 2023年3月末 2026年3月末
北海道室蘭 大型変圧器・
コンデンサ等
E地域 2023年3月末 2026年3月末
安定器および汚染物等 D地域、E地域(東京PCB処理事業所における処理対象物を除く) 2024年3月末 2026年3月末

※ 事業対象地については、以下のとおり。

A地域:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、
熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

B地域:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県

C地域:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県

D地域:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県

E地域:北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、
石川県、福井県、山梨県、長野県


 ここで注意すべきは、高濃度PCB廃棄物については、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の処理場で処理をする必要があるということです。JESCOに処理を委託する場合にはあらかじめ登録を行う必要がありますが、処理施設の数が極めて限定されているため、委託してから実際に処理が行われるまでにかなりの期間を要することが予想されます。

② 低濃度PCB廃棄物の場合の処理期限

 低濃度PCB廃棄物については、処理期限が平成39年(2027年)3月31日までとされています(令7条)。低濃度PCB廃棄物の処分場については、JESCOの処理場に限られず、民間の処理事業者(無害化処理認定施設、都道府県知事等許可施設)で処理できることになります。

(3)PCB廃棄物の処理義務違反に対する措置

 PCB特別措置法で規定されている処理義務を履行しない事業者に対しては、行政により、指導・助言改善命令がなされる場合があるほか、行政による代執行等の措置がなされる可能性があります。

措置 内容 根拠条文
指導および助言 都道府県知事は、PCB保管事業者に対し、高濃度PCB廃棄物の確実かつ適正な処理の実施を確保するために必要な指導および助言をすることができる。 法11条
改善命令 環境大臣又は都道府県知事は、PCB保管事業者が期限内の処分に違反した場合には、期限を定めて、処分その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
法12条、33条1号
命令に違反した者は、3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれを併科。
代執行 環境大臣又は都道府県知事は、改善命令に係る期限までに当該命令に係る処分等措置を講じないとき、講じても十分でないとき、または講ずる見込みがないときには、代執行が可能。 法13条

(4)PCB廃棄物に対するその他の規制

 PCB保管事業者は、上記の処理義務に加えて、処理までの間、適切にPCB廃棄物を保管することが義務付けられ、第三者に譲渡することも原則として禁止されています。

規制 内容 根拠条文
保管等の届出 PCB保管事業者は、毎年度、PCB廃棄物の保管及び処分状況の届出を行うことが必要。 法8条、34条1号、2号
原則として、保管場所の変更はできない(一定の要件の下で変更した場合には10日以内に届出が必要)。
無届出・虚偽届出をした者、高濃度PCB廃棄物の保管の場所を変更した者は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。
承継 相続、合併または分割(保管するPCB廃棄物に係る事業を承継させるものに限る)があったときは、合併後存続する法人・合併により設立した法人または分割によりその事業を承継した法人は、保管事業者の地位を承継する。 法16条
保管事業者の地位を承継した者は、承継があった日から30日以内に届出をする必要がある。
届出をせずまたは虚偽の届出をした者は、30万円以下の罰金。
譲渡および譲受けの制限 PCB廃棄物の譲渡を原則として禁止(保管事業者が確実かつ適正にPCB廃棄物を保管することができなくなったこと、譲受人が当該PCB廃棄物を確実かつ適正に処理する十分な意思と能力を有することを都道府県知事が認めた場合等を除く)。 法17条、33条2号
PCB廃棄物を譲り渡しまたは譲り受けた者は、3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれを併科。

 PCB廃棄物の保管を第三者に委託する場合であっても、保管を委託した者および委託を受けた者双方ともに、禁止されている譲渡および譲受の行為(法17条)に該当するとされており、注意が必要となります(環境省・経済産業省「ポリ塩化ビフェニル(PCB)使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて」)。

(5)行政の権限

 PCB廃棄物の処理義務や保管義務を負わせていることに関して、行政には報告徴収および立入検査等の権限が与えられています。
 なお、PCB保管事業者らの代表者や従業員等が、その事業に関して違反行為をした場合には、当該違反者の他、会社に対しても同様に罰金刑が科されることがあります。

規制 内容 根拠条文
報告の徴収 環境大臣または都道府県知事は、PCB保管事業者等または高濃度PCB廃棄物の疑いのある物を保管する事業者その他の関係者に対し、必要な報告を求めることができる。 法24条、35条2号
報告をせずまたは虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金。
立入検査等 環境大臣または都道府県知事は、PCB保管事業者等または高濃度PCB廃棄物の疑いのある物を保管する事業者その他の関係者に対し、帳簿書類その他の物件を検査させ、対象物を無償で収去させることができる。 法25条1項、35条3号
検査又は収去を拒み、妨げ、または忌避した者は、30万円以下の罰金。
罰則 法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対して各本条の罰金刑。 法36条

廃棄物処理法における規制

 上記のとおり、PCB特別措置法は廃棄物処理法の特別法であり、PCB特別措置法に規定のない事項については廃棄物処理法の規定が適用されることになります。

(1)規制の対象

 PCB廃棄物は、廃棄物処理法上の「特別管理一般廃棄物」、「特別管理産業廃棄物」に該当する場合があります。
 「特別管理一般廃棄物」とは、「一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」をいいます(廃棄物処理法2条3項、廃棄物処理法施行令1条)。
 「特別管理産業廃棄物」とは、「産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」をいいます(廃棄物処理法2条5項、廃棄物処理法施行令2条の4)。

対象廃棄物
特別管理一般廃棄物 下記に含まれるPCBを使用する部品
・廃エアコンディショナー
・廃テレビジョン受信機
・廃電子レンジ
特別管理産業廃棄物 ・廃PCB等
・PCB汚染物(事業活動等発生物に限る)
  1. 汚泥のうち、基準値を超えるPCBが染み込んだもの
  2. 紙くずのうち、PCBが塗布され、または染み込んだもの
  3. 木くずのうち、PCBが染み込んだもの
  4. 繊維くずのうち、PCBが染み込んだもの
  5. 廃プラスチック類のうち、PCBが付着し、または封入されたもの
  6. 金属くずのうち、PCBが付着し、または封入されたもの
  7. 陶磁器くずのうち、PCBが付着したもの
  8. 工作物の新築、改築または除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物のうち、PCBが付着したもの
・PCB処理物(廃PCB等またはPCB汚染物を処分するために処理したもの)

(2)管理責任者の設置、廃棄物の適切な保管、および適切な処理の実施

 廃棄物処理法では、特別管理産業廃棄物管理責任者を設置し、事業に伴って排出されたPCB廃棄物(特別管理産業廃棄物)を適切に保管することが求められ、また、処理の際にも政令で定められた基準に従い適切な処理を行うことが求められます。

求められること 内容 根拠条文
特別管理産業廃棄物管理責任者の設置 事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を置く必要がある。 廃棄物処理法12条の2第8項
特別管理産業廃棄物の保管 事業者は、特別管理産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準に従い、生活環境の保全上支障のないよう保管する必要がある。 廃棄物処理法12条の2第2~4項
事業者は、事業場の外で自ら当該特別管理産業廃棄物の保管を行おうとするときは、非常災害のために必要な応急措置として行う場合その他の環境省令で定める場合を除き、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出る必要がある。
特別管理産業廃棄物の運搬または処分 事業者は、自ら特別管理産業廃棄物の運搬または処分を行う場合には、政令で定める基準に従う必要がある。 廃棄物処理法12条の2第1項
特別管理産業廃棄物の運搬または処分の委託 事業者は、特別管理産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合には、特別管理産業廃棄物収集運搬業者・処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託する必要がある。 廃棄物処理法12条の2第5~7項

土壌汚染対策法における規制

(1)規制の対象

 PCB特別措置法や廃棄物処理法とは別に、PCBは土壌汚染対策法の対象物質(第三種特定有害物質)としてあげられています(土壌汚染対策法2条1項、土壌汚染対策法施行令1条25号、土壌汚染対策法施行規則4条3項2号ロ)。
 第三種特定有害物質の中でもPCB汚染土壌はその処理が難しいということが指摘されています。

(2)要措置区域への指定

 土壌汚染対策法に規定される、

  1. 水質汚濁防止法上の「特定施設」を廃止する場合(土壌汚染対策法3条1項)
  2. 3000平方メートル以上の土地の形質変更を行った者による事前届出の結果、知事が土壌汚染のおそれありと認定した場合(土壌汚染対策法4条2項)
  3. 上記のほか、知事が、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれありと認定した場合(土壌汚染対策法5条)

に基づく土壌汚染状況調査を実施した結果、

a. 特定有害物質による汚染状態が指定基準(汚染状態に関する基準)に適合せず

かつ

b. 人が摂取するリスク(地下水の経由した摂取、土壌の直接摂取)があり、汚染の除去等の措置が講じられていない

と認める場合には、要措置区域として指定されることになります(土壌汚染対策法6条1項および2項)。
 要措置区域の指定がなされたときは、都道府県知事から当該要措置区域内の土地の所有者等に対して、土地の汚染状態および土地の用途等を考慮した土壌汚染対策措置を講ずるように指示されることになります(土壌汚染対策法7条1項本文)。
 なお、汚染原因者が明らかな場合で、当該汚染原因者に措置を講じさせることが相当と認められ、かつ、当該汚染原因者が措置を講ずることにつき土地の所有者等に異議がないときは、汚染原因者に対して対策措置が指示されることがあります(土壌汚染対策法7条1項ただし書)。

(3)形質変更時要届出区域への指定

 他方で、上記土壌汚染状況調査の結果、

a. 特定有害物質による汚染状態が、指定基準(汚染状態に関する基準)に適合せず

かつ

b. 人が摂取するリスク(地下水の経由した摂取、土壌の直接摂取)がなく、または、汚染の除去等の措置が講じられている

と認める場合には、当該土地の区域を形質変更時要届出区域として指定し、その旨が公示されることになります(土壌汚染対策法11条1項および3項)。
 形質変更時要届出区域内において土地の形質の変更をしようとする場合には、その着手の14日前までに、土地の形質の変更について都道府県知事に届け出る必要があります(土壌汚染対策法12条1項本文)。届出が必要な「土地の形質の変更」とは、土地の形状又は性質の変更のことであり、たとえば、宅地造成、土地の掘削、土壌の採取、開墾等の行為が該当し、基準不適合土壌の搬出を伴わないような行為も含まれます。

ダイオキシン類対策特別措置法における規制

 PCBの一種であるコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)は、ダイオキシン類と同様の毒性を示すものでダイオキシン類似化合物と呼ばれますが、ダイオキシン類対策特別措置法では、「ダイオキシン類」として規制対象とされています。
 ダイオキシン類による土壌汚染の状況が指定基準を満たさない地域で、当該地域内のダイオキシン類汚染の除去等をする必要がある場合には、都道府県知事により対策地域として指定される場合があります(ダイオキシン類対策特別措置法29条)。対策地域においては、都道府県知事によって対策計画が策定され、ダイオキシン類による土壌の汚染の除去その他の措置が実施されることになります(ダイオキシン類対策特別措置法31条)。

条例による規制

 上記では、PCB廃棄物に対する法令による規制について説明しましたが、これとは別に、対象地の所在する地方自治体において、条例により法令とは異なる基準や規制内容等を定めているケースが多く見受けられます。そのため、法令のみならず条例や指針・ガイドラインについても確認することが必要となります。
 条例改正対応におけるリスクや留意点については、「条例改正対応におけるリスクや留意点と、条例管理をサポートする『条例アラート』」(BUSINESS LAWYERS・2022年7月14日)も参照してください。

土地の売主、汚染原因者に対して取り得る手段

 PCB廃棄物が購入した土地から発見された場合一義的には対象地の現所有者である買主が法令や条例の規制を受けることになります。その場合であっても、当該買主は、土地の売主や汚染原因者に対して対策費用相当額の支払いを求めることが考えられます。

民法上の損害賠償請求(瑕疵担保責任等)

 売買対象地から環境基準値を超える特定有害物質が発見された場合には、売主に対して、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を行うことが考えられます。この点に関し、PCBを含有する土壌が瑕疵にあたると判断した裁判例があります。

【参考裁判例(東京地裁平成20年7月8日判決・判時2025号54頁)】

 土地の売買契約後に土地中から埋設物および汚染土壌(PCBを含む)が発見されたとして、買主が売主に対して、瑕疵担保責任や説明義務違反に基づく損害賠償を求めたところ、その一部が認められた例。
 「原告指摘の各物質はいずれも人体に有害なものであり、これらは、ダイオキシン類対策特別措置法2条又は土壌汚染対策法2条1項、同法施行令1条により規制されている有害物質である。そして、これらの物質により汚染された土壌が、ダイオキシン類対策特別措置法に基づいて定められた環境基準値や土壌汚染対策法施行規則において定められた環境基準値を超過したものである場合には、当該汚染の拡散の防止その他の措置(最終処分場又は埋立場所等への投入、浄化、セメント等の原材料としての利用)をとる必要があるから、環境基準を超過した汚染土壌が本件土地の瑕疵に該当することは明らかである。」と判断した。

 民法の瑕疵担保責任以外にも、契約上の条項(汚染が発見された場合の対策や費用負担に関する条項等)に基づく請求、不法行為による損害賠償請求等を行うことが考えられます。

土壌汚染対策法上の請求(汚染原因者に対する請求)

 上記2-3(2)で説明した要措置区域における対策措置の指示(土壌汚染対策法7条1項本文)を受けた土地所有者等が、当該指示措置等を講じた場合には、汚染原因者に対して、指示措置に要した費用を請求することができます(土壌汚染対策法8条1項本文)。
 ただし、汚染原因者が「既に当該指示措置等に要する費用を負担し、又は負担したものとみなされるとき」は、このような請求をすることはできません(土壌汚染対策法8条1項ただし書)。
 ここでいう「既に費用を負担し、又は負担したものとみなされる」場合とは、具体的には以下のような場合のことをいいます(環境省「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」)。

  1. 汚染原因者が当該汚染について既に汚染の除去等の措置を行っている場合
  2. 措置の実施費用として明示した金銭を、汚染原因者が土地の所有者等に支払っている場合
  3. 現在の土地の所有者等が、以前の土地の所有者等である汚染原因者から、土壌汚染を理由として通常より著しく安い価格で当該土地を購入している場合
  4. 現在の土地の所有者等が、以前の土地の占有者である汚染原因者から、土壌汚染を理由として通常より著しく値引きして借地権を買い取っている場合
  5. 土地の所有者等が、瑕疵担保、不法行為、不当利得等民事上の請求権により、実質的に汚染の除去等の措置に要した費用に相当する額の填補を受けている場合
  6. 措置の実施費用は汚染原因者ではなく現在の土地の所有者等が負担する旨の明示的な合意が成立している場合

 汚染原因者を特定することは必ずしも容易ではないため、技術的検討が必要となるほか、上記のとおり、土壌汚染対策法において責任を負うべき「汚染原因者」といえるのかどうかについて法的な観点からの検討も必要となります。

 以上の詳細については、猿倉健司「PCB廃棄物・ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理の実務上の留意点」(牛島総合法律事務所ニューズレター)、猿倉健司『不動産取引・M&Aをめぐる環境汚染・廃棄物リスクと法務』(清文社、2021年8月)30頁、400頁以下、井上治『不動産再開発の法務〔第2版〕- 都市再開発・マンション建替え・工場跡地開発の紛争予防 - 』(株式会社商事法務、2019年8月)50頁も参照。

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