株主総会議事録の記載例(動議が提出された場合)

コーポレート・M&A
竹川 奈央子弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 当社の株主総会で、株主から議長の交代を求める動議が提出され、議場に諮り、否決されました。この経緯について、株主総会議事録に記載すべきでしょうか。

  議長交代の動議は、その性質上、議場に諮る必要があると解されており、動議が提出されたことおよび動議を議場に諮り、否決されたことは「株主総会の議事の経過の要領及びその結果」(会社法施行規則72条3項2号)として、議事録に記載することになります。

解説

目次

  1. 株主総会議事録に記載しなければならない事項
  2. 手続的動議とは
    1. 議場に諮るべき動議
    2. 議長自らが対応を決定することができる動議
  3. 議案の修正動議
    1. 修正動議とは
    2. 修正動議の審議および採決
  4. まとめ

株主総会議事録に記載しなければならない事項

 株主総会議事録には、株主総会の議事の経過の要領及びその結果を記載しなければなりません(会社法施行規則72条3項2号)。株主総会において、出席株主から動議が提出され、議場に諮って否決(または可決)された場合には、「議事の経過の要領」として、その経過を記載する必要があります。
 「動議とは、会議体においてその構成員から提出され、会議で討論・採決に付される提案のことをいいます
 総会において提出される動議はさまざまなものがありますが、大きくわけて、①総会の運営や議事進行に関する手続的な動議(手続的動議)と②議案の修正に関する実質的な動議(修正動議)とがあります。
 詳細については「動議の種類と議長が取るべき対応は」を参照ください。

手続的動議とは

 手続的動議とは、一般に、議長不信任動議、質疑打切り動議など議事進行に関する動議をいい、株主総会の議場に諮るべきと解されている動議と、議長の議事整理権(会社法315条1項)の範囲内の事項であり、それを採用するか否かは議長の裁量に委ねられると解される動議とに区別することができます。

議場に諮るべき動議

 調査者選任動議(会社法316条)、株主総会の延期・続行の動議(会社法317条)および会計監査人の出席要求動議(会社法398条2項)は、法令上、株主総会の決議が要件とされていることから、議場に諮る必要があると解されています。また、議長不信任の動議についても、法令上の根拠はないものの、その性質上、議場に諮る必要があると解されています。

 これらの動議が出席株主から提出され、議場に諮って否決(または可決)された場合には、議事録に「議事の経過の要領」としてその経過を記載し、記録にとどめておく必要があります。

【総会の延期の動議が提出された場合の記載例】
 ここで、株主番号○番の株主より、取締役松竹梅夫氏がやむを得ない理由により本株主総会を欠席していることを理由として、延会を求める旨の動議が提出されたため、議長はその必要を認めない旨説明し、議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の反対をもって当該動議は否決された。
【議長不信任の動議が提出された場合の記載例】
 ここで、株主番号○番の株主より、議長の議事運営が不適切であることを理由として、議長の交代を求める旨の動議が提出された。議長は、議事運営は適切に行われており、議長の交代の必要はない旨の意見を述べ、議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の反対をもって当該動議は否決された。
【会計監査人の出席要求動議が提出された場合の記載例】
 ここで、株主番号○番の株主より、会計監査人の意見を聞くため会計監査人の出席を求める旨の動議が提出されたため、議長が議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって当該動議は可決された。
 そこで、当会社会計監査人である○○が出席し、監査役の監査報告と同意見である旨述べた。

 実務上は稀ですが、会計監査人の出席要求動議(会社法398条2項)が可決された場合には、出席した会計監査人は意見を述べる必要があります。この意見は、株主総会において「述べられた意見又は発言の内容の概要」として、株主総会議事録に記載する必要があります(会社法施行規則72条3項3号カ)。

議長自らが対応を決定することができる動議

 休憩、退場、審議打ち切り、審議方法の変更および議案の審議の順序などの動議は、議長の議事整理権(会社法315条1項)の範囲内の事項であり、それを採用するか否かは議長の裁量に委ねられると解されています。したがって、議長は、これらの動議について自ら対応を決定することができますし、議場に諮ることもできます。

 議場に諮った場合には、議事録に「議事の経過の要領」としてその経過を記載する必要がありますが、議長が自ら対応を決定できるような動議であった場合には、必ずしも記載する必要はない場合も多いと考えられます。議事の全体の経過から、この動議の対応が議事の経過に影響を及ぼしたか否かにより、議事録への記載の要否を個別に判断していくこととなります。

【審議打ち切りの動議が提出され、採用しなかった場合の記載例】
 ここで、株主番号○番の株主より、審議を打ち切るべきである旨の動議が提出されたが、議長はこれを採用せず、このまま審議を継続する旨を述べた。

議案の修正動議

修正動議とは

 株主は、株主総会において、議案の修正動議を提出することができます。ただし、取締役会設置会社においては、招集通知に記載された株主総会の目的事項以外の事項について審議することはできません(会社法309条5項)ので、修正動議を提出できる範囲もその目的事項に限られます。

 適法な修正動議が出席株主から提出されて採決された場合には、議事録に「議事の経過の要領」または「その結果」として、その経過を記載する必要があります(会社法施行規則72条3項2号)。

修正動議の審議および採決

 実務上は、適法な修正動議が提出された場合であっても、原案について先に採決し、原案が可決された場合には、可決する余地のなくなった両立しない修正動議について改めて採決することは不要と解されています。

【議案の修正動議が提出された場合の記載例】
 ここで、株主番号○番の株主より、取締役候補者のうち松竹梅夫氏に代えて自身を選任する議案に修正したい旨の修正動議が提出された。これについて議長は、当該修正動議は原案とともに審議した後に採決する旨を説明した。
 議長は、第○号議案の採決にあたり、採決の順序として、提出された修正動議に先立って原案を採決したい旨説明し、議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成により承認を得た。
 第○号議案について、議決権行使書による事前行使分を含めて出席株主の過半数の賛成をもって原案は可決された。したがって、議長は、それに伴い修正動議は否決されたものとして取り扱うこととした。

まとめ

 動議の種類、内容、議事録の記載について全体像は以下のとおりとなります。

動議の種類、内容、議事録の記載についての全体像

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