偽造品の販売と刑事上の法的措置

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 自社商品のロゴやマークを模倣した偽造品が販売されている場合に、どのような刑事上の法的措置を採ることができますか。

 商標権侵害や不正競争防止法2条1項1号・2号の不正競争行為(周知・著名な商品等表示の冒用)には、商標法および不正競争防止法にそれぞれ刑事罰が規定されています。
 したがって、偽造品販売が商標権侵害または上記の不正競争行為に該当する場合には、警察に対し刑事立件を要請することが考えられます。ただし、偽造品販売の刑事事件は、ほとんどが商標権侵害を理由として立件されており、不正競争防止法2条1項1号、2号の不正競争行為については、証明の困難性から、あまり立件されていません。
 商標権侵害を理由とする刑事立件を目指す場合には、偽造品業者の商標権侵害の故意をどのように証明するかが警察への相談の際の重要なポイントとなり、その故意の証明のため、商標権者による偽造品業者に対する通告書の送付が通常行われます。

解説

目次

  1. 偽造品販売のほとんどは商標権侵害を理由として立件される
  2. 商標権侵害罪の内容
  3. 商標権侵害の故意の証明
    1. 故意の証明方法
    2. 通告書の送付方法
    3. 通告書の内容

偽造品販売のほとんどは商標権侵害を理由として立件される

 他人が製造・販売する正規商品(「真正品」)のロゴやマークまたはこれと類似するロゴ・マークを、第三者が権限なく使用して、真正品をコピーまたは模倣した商品(「偽造品」)を製造、輸入、販売する行為は、以下説明する通り、商標権侵害や不正競争行為に該当する違法な行為であり、それぞれ刑事罰も規定されています。

 偽造品販売の刑事事件は、ほとんどが商標権侵害を理由として立件されており、不正競争防止法2条1項1号、2号の不正競争行為を理由とする立件については、商品等表示の周知性・著名性や商品・営業の混同のおそれ(周知な商品等表示の場合)の要件の立証がネックとなり、少なくとも現時点での実務上の運用では、警察がその立件に躊躇する傾向にあるため、このような不正競争行為を理由とする立件はあまり聞かれません。
 そこで、以下では、商標権侵害を理由とする刑事手続対応に限定して説明を行います。

商標権侵害罪の内容

(1) 違法行為と罰則

 商標法は、商標権侵害罪を規定し、他人の登録商標と同一の商標を、その登録商標の指定商品と同一の商品に無断で使用した場合には、刑事罰として10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科を定め(商標法78条)、他人の登録商標と類似する商標を指定商品と同一の商品に無断使用したり、または他人の登録商標と同一または類似する商標を指定商品と類似する商品に無断使用した場合には、刑事罰として5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその併科を定めています(商標法78条の2)。

他人の登録商標と同一の商標を、その登録商標の指定商品と同一の商品に無断で使用した場合 10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科
他人の登録商標と類似する商標を指定商品と同一の商品に無断使用したり、または他人の登録商標と同一または類似する商標を指定商品と類似する商品に無断使用した場合 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその併科

(2) 故意の証明が必要

 商標権侵害罪で立件される行為としては、商標権侵害を構成する偽造品の販売行為や販売目的での所持行為が多いといえます。
 刑法犯は原則故意が要求され、過失犯を罰する明文規定がない限り過失の加害行為については犯罪とはなりません。商標法には過失犯を罰する規定はないため、偽造品業者を商標権侵害罪で処罰するためには、偽造品業者による偽造品販売について、偽造品業者の商標権侵害の故意を証拠により証明する必要があります。
 したがって、偽造品販売につき商標権侵害罪による刑事立件を検討してもらうべく、警察に相談する際には、まず、この偽造品業者の商標権侵害の故意をどのように証明できるかが重要な相談ポイントとなります。

商標権侵害の故意の証明

故意の証明方法

(1) 偽造品を製造している業者の場合

 偽造品販売についての商標権侵害の故意は、偽造品業者が販売する商品が、商標権者やそのライセンシーにより製造され、市場に出荷された真正品ではなく、権限のない第三者により製造され、販売された偽造品であることを、偽造品業者自らが認識していることを意味します。
 そのため、自ら偽造品を製造している偽造品業者については、自身の偽造品の製造行為が、商標権者の許諾に基づかないことを自らが認識しているのが通常ですので、商標権侵害の故意の証明は難しくない場合が多いといえます。

(2) 偽造品を第三者から輸入または購入している業者の場合

 これに対し、偽造品を第三者から輸入または購入している偽造品業者については、その偽造品を輸入・購入する際に、その輸入先・購入先から、当該商品が商標権者の許諾に基づき製造・販売された真正品であるとの説明を受けたため、当該偽造品を真正品であると信じて販売したとして、商標権侵害の故意を争う場合も少なくありません。

 このような偽造品業者の商標権侵害の故意を証明するため、商標権者は、偽造品業者に対して、偽造品業者が販売する商品が偽造品であること、その偽造品販売が商標権侵害に該当することを通知し、偽造品販売の中止等を要求する通告書を送付するのが通常です。

 偽造品業者は、商標権者からこのような商標権侵害の通告を受けることにより、自身が販売する商品が偽造品であり、したがって、その商品を販売する行為が商標権侵害にあたることを認識することが可能になります。
 このような通告を受けてもなお、その商品の販売を継続することは、ひとえに当該商品が偽造品であることを知りながら、これを販売することを意味しますので、商標権侵害の故意が認められることになります。

通告書の送付方法

 このように偽造品侵害の故意の証明には、商標権者による偽造品業者に対する通告の事実を客観的な証拠に基づき証明することが不可欠ですので、偽造品業者に対する通告は、誰に、いつ、どのような内容の文書を郵送したかを、謄本によって日本郵便株式会社が証明する、内容証明郵便で発送することが必要です。

通告書の内容

(1) 偽造品の販売行為の特定

 また、商標権侵害の故意の証明をより確実に行うためには、偽造品業者に送付する通告書において、商標権侵害に該当する相手方による偽造品の販売行為について、対象商品、販売の場所、時期等を具体的に特定する必要があります。
 偽造品の販売行為を具体的に特定しない通告では、偽造品業者に対し、当該偽造品の販売行為が商標権侵害に該当することを認識させるに足り得る内容の通告が行われていないとして、偽造品業者の商標権侵害の故意の立証が困難となり、警察による商標権侵害罪の立件に支障を来すおそれがあります。

(2) 真贋の確認

 さらに、通告対象となる偽造品業者が販売する商品が偽造品であることを通知するのみならず、どのような真贋確認(鑑定)の方法と根拠に基づき、その商品が偽造品であるとの判断を行ったのかを説明することが有効といえます。

 真贋確認の方法としては、通告者が自ら購入した通告対象商品の観察を通じて真贋確認を行ったのか、それとも、通告者が、店頭に展示されている通告対象商品を現場で確認し、またはインターネット上に掲載されている商品画像を通じて確認する方法で真贋確認を行ったのかを示す必要があります。
 真贋確認の根拠については、詳細な偽造品の真贋ポイントを通告書で偽造品業者に開示すれば、その真贋ポイントの情報が他の偽造品業者にも伝わり、その情報を基により精巧な偽造品が製造され、市場に流通するリスクがあります。

 したがって、通告書に記載する偽造品の真贋確認の根拠については、例えば、「通告対象商品の仕様が真正品の仕様と明らかに相違する」、「通告対象商品と同種商品の真正品がそもそも存在しない」、といった比較的シンプルな説明に留めておくことをお勧めします。
 通告書に記載すべきその他の内容については、「偽造品の販売業者に対する通告書の記載方法は」をご参照ください。

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