事業再生ADRにおける事業再生の手法にはどのようなものがあるか

事業再生・倒産

 事業再生ADR手続では、どのような手法によって事業再生を実現することができるのでしょうか。当社では、すでに可能な限りの経費削減策は実施してきたつもりですが、過去に設備投資資金として借り入れた負債の返済負担が大きすぎて、このまま元利返済を継続していくことは難しい状況です。

 まずは会社の収益構造を改善し、金融機関等から返済条件の変更(リスケジュール)を受けて全額返済することを検討しますが、それが困難な場合には、債務の一部免除や債務の株式化(DES)、既存の債務を他の債務よりも返済条件が劣後する劣後ローンに変更する(DDS)などの方法を検討することになります。
 これらを自力で行うことが難しい場合は、スポンサーからの支援の下、これらの方法による事業の再生を検討することになります。

解説

目次

  1. 事業再生ADRにおける事業再生の手法
  2. リスケジュール
  3. 債権放棄
  4. DES(Debt Equity Swap デット・エクイティ・スワップ)
  5. DDS(Debt Debt Swap デット・デット・スワップ)
  6. おわりに

事業再生ADRにおける事業再生の手法

 事業再生ADRにおける事業再生の手法としては、主に以下のような方法が考えられ、ます(これらを併用する場合もあります)。

手法 内容
リスケジュール 債権放棄は受けず、現状の返済条件や利率等を見直し、返済期間や返済金額を変更して返済負担の軽減を図る
債権放棄 債権の一部免除を受けて有利子負債を圧縮し、返済負担の軽減や債務超過の解消等を図る
DES(デット・エクイティ・スワップ) 既存の債務を会社の発行する株式に振り替えることで有利子負債を圧縮し、返済負担の軽減や債務超過の解消等を図る
DDS(デット・デット・スワップ) 既存の債務を他の債務より返済条件が劣後する債務(劣後ローン)に変更し、返済負担の軽減や債務超過の解消等を図る

リスケジュール

 リスケジュールとは、今後の事業やキャッシュフロー等の見通しから返済可能なスケジュールを考え、現状の返済条件や利率等を見直して返済期間や返済金額の変更をすることをいいます。
 例えば、事業再生計画案の成立後一定期間(事業再生ADRでは弁済期間の定めはありませんが、3年から5年の弁済計画とする例が多いと言われています)は会社の返済能力に見合った元利金の返済を行い、その間に収益構造の改善等を行って、期間経過後に一括返済するといった内容が考えられます。なお、期間経過後に実際に一括返済をすることを求められるとは限らず、借り換えを行ったり、その後の分割弁済の合意をするケースもあります。

 現在の返済条件では返済が困難であっても、コスト削減や採算性の高い事業への経営資源の集中、不採算事業からの撤退等により収益構造を改善したり、遊休不動産の売却等によって債務を圧縮するなどして返済負担を軽減したりすることで、債権放棄を受けなくてもリスケジュールにより債務を完済できる場合もありえますので、まずはリスケジュールによる債務の完済が可能かを検討することになります。
 なお、これらの施策については、債権者からの理解を得るためにも、まずは会社自身がしっかりと取り組まなければならない課題であるといえるでしょう。

債権放棄

 リスケジュールによるだけでは債務の完済が困難な場合、債権者から債権放棄を受けて返済負担を軽減し、事業再生を図る方策を検討することになります。
 債権放棄を求める額はいくらでもよいというものではなく、① 破産手続によった場合の配当額以上の弁済を行わなければなりません (これを「清算価値保障原則」と呼んでいます。例えば、破産手続を取った場合の無担保の破産債権に対する弁済率が10%と試算された場合、事業再生計画案における弁済率は10%以上である必要があるといった具合です。(経済産業省関係産業競争力強化法施行規則(以下「省令」といいます)28条4項、JATPの特定認証ADR手続に基づく事業再生規則(以下「協会規則」といいます)27条2項8号)。
 また、② 一定の基準に従って会社資産の評定を行った上、資産・負債の状況、将来の収益・費用の見込等から合理的な債権放棄額を定める こととなります(省令29条1項1号、2号、協会規則27条3項1号、2号)。

 さらに、株主・経営者の責任の明確化が求められ、原則として、③ 株式の全部または一部の消滅 (省令29条1項3号、協会規則27条3項3号)、④ 役員の退任 (省令29条1項4号、協会規則27条3項4号)についても事業再生計画案に定めることが必要となります。

DES(Debt Equity Swap デット・エクイティ・スワップ)

 会社が負担する債務を会社の発行する株式に振り替えることDES(Debt Equity Swap デット・エクイティ・スワップ)といい、事業再生ADRにおいても、過剰な負債を返済可能な範囲に圧縮する手法としてDESを採用する事例が多くみられます。
 DESは、会社にとっては資金負担なく有利子負債を圧縮でき、債権者にとっては将来事業が再建することで株式に対する配当や株式の売却などによって回収を図ることができる可能性があるなど、会社、債権者双方にとってメリットもありますが、他方で、会社にとっては将来の配当負担が増加したり(特に、DESによって発行する株式が配当優先株式の場合)、債権者にとっては引き受けた株式の処分が困難な場合がありうるなど、デメリットもあります。
 なお、DESのみを行う事業再生計画案も「債権放棄を伴う事業再生計画案」(省令29条柱書)に該当するため、債権放棄の場合と同様、株主責任、経営者責任について事業再生計画案に定めることが必要となります。

DDS(Debt Debt Swap デット・デット・スワップ)

 既存の債務を他の債務より返済条件が劣後する債務(劣後ローン)に変更することDDS(Debt Debt Swap デット・デット・スワップ)といいます。
 一定の償還期間後に一括弁済する条件に変更すれば、償還期間においては会社の返済負担は利払いの負担のみに軽減されますし、債権放棄を受けるものではないので債務免除益課税(債務免除を受けた額は益金に算入されてしまいますので、損金が不足していれば、債務免除による益金(債務免除益)に対して課税を受けてしまいます)といった問題が生じない点などにもメリットがあります。
 また、一定の要件を満たすことで、劣後ローンの額を資本の額とみなすことが認められており、会社の債務超過の解消や金融機関による対象債務者の信用性評価(金融検査マニュアルに従った対象債務者の区分である「債務者区分」や、金融機関による独自の信用格付等。債務者区分が「正常先」より下になると、新規融資を受けることは厳しくなります)の向上を実現できる場合もあるなどのメリットもあります。
 債権者にとっても、資本の額とみなすことが認められた借入金の一部を貸倒引当金に繰り入れることができるなどの税務上のメリットがあり、近時はDDSを利用する事例が増えているようです。 ただし、債権放棄と異なり、劣後ローンが残りますので、将来的には劣後ローンの弁済等の対応が必要となることには留意が必要です。

おわりに

 事業の再建の手法には上述のとおり複数の手法があり(それらを併用する場合もあります)、法的、会計的、税務的な観点からの検討が必須である上、自力での事業の再生が難しい場合はスポンサーを選定して支援を受ける必要も生じます。また、債権者全員の同意を得るための債権者調整も必要となります。これらの検討や対応には専門的な知識や経験が必要となりますので、事業再生ADRの利用を検討される場合には、弁護士や公認会計士等にご相談されることをおすすめします。

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