株式会社における機関をどのように設計するか

コーポレート・M&A

 これから会社を設立し、経営していくに当たって、取締役会や監査役会等、どのような機関を置けばいいのでしょうか。

 会社法において、機関設計の自由度が格段に増しましたが、取締役会を設置していない会社は監査役会を設置できないなどの制限もあります。どのような性質・規模の会社なのかを踏まえて機関設計しましょう。

解説

目次

  1. 旧商法下の機関設計との違い
    1. 旧商法下での機関設計
    2. 会社法施行前に有限会社として設立された会社
  2. 機関設計の出発点 ~会社法上の制約を考えるに当たって~
    1. 機関設定における2つの視点
    2. 新たに起業をする場合の機関設計
  3. 機関設計の組合せ
    1. 非公開会社かつ中小会社の場合
    2. 非公開会社かつ大会社の場合
    3. 公開会社かつ中小会社の場合
    4. 公開会社かつ大会社の場合
  4. おわりに

旧商法下の機関設計との違い

旧商法下での機関設計

 会社法前の旧商法下においては、会社の機関設計については、会社の規模・種類によって制約がありました。具体的には、以下のとおりでなければなりませんでした。

大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上)
  • 取締役会+監査役会+会計監査人
  • 取締役会+三委員会+会計監査人
中会社(資本金1億円超5億円未満かつ負債総額200億円未満)
  • 取締役会+監査役
小会社(資本金1億円以下かつ負債総額200億円未満)
  • 取締役会+会計監査権限のみの監査役
有限会社
  • 取締役(+監査役(任意))

 しかし、会社法下では、それぞれの株式会社が、その実態に照らして、あるいは、自らの目指す会社像に即して、(一定の制約はあるものの)自由に機関設計できるようになりました。

会社法施行前に有限会社として設立された会社

 なお、会社法施行前に有限会社として設立された会社は、平成18年5月1日の会社法施行により「特例有限会社」となりました(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(「 会社法整備法」)2条1項)。

 任意に監査役を設置していた有限会社は、会社法下において、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものとみなされます(会社法整備法24条会社法389条1項)。

 そのため、特例有限会社は、監査役を置いていたとしても、会社法上の「監査役設置会社」とはなりません(会社法2条9号において「監査役設置会社」が定義されていますが、かっこ書で、会計監査限定の監査役を設置する会社は除外されています)。

 特例有限会社については、「会社法の施行と有限会社」をご覧ください。

機関設計の出発点 ~会社法上の制約を考えるに当たって~

機関設定における2つの視点

 株式会社にどのような機関を置くかを検討するに当たっては、その会社が、

  • 公開会社1か非公開会社か
  • 大会社2か中小会社3

 という2つの視点が出発点になります。

 というのも、公開会社では、その株式が自由に譲渡されるので、不特定多数の者が株主になること、大会社については、会社規模が大きく、株主や債権者といった利害関係者が多数に上ることが想定されていることから、これら利害関係者の利益等に配慮して、会社の機関設計についても一定程度の制約が設けられているのです。その例として、「公開会社は取締役会を設置しなければならない」(会社法327条1項1号)、「大会社は会計監査人を置かなければならない」(会社法328条1項、2項、327条5項)、「公開会社かつ大会社は、監査役会か、監査等委員会か指名委員会等を置かなければならない」(会社法328条1項)、といった制約があります。
 反対に、非公開会社は、取締役会すらも設置しないことができます(会社法327条1項参照)。

新たに起業をする場合の機関設計

 新たに起業しようという場合、通常、まずはその発行する株式の譲渡を制限して株主を限定しますし、資本金の額もそう多くはないでしょう。そのため、非公開会社かつ中小会社の機関設計(下記 3-1 )を考えることになると思います。

 ここでは、非公開会社かつ中小会社以外の会社も含めて、具体的に、どのような機関設計をできるのか見ていくことにしましょう。

機関設計の組合せ

 上記 2 の「公開会社か否か」「大会社か否か」という2つの視点から、以下、場合分けをして説明します。

図の見方

(ア)ある機関から1本の矢印(実線)が出ている場合は、矢印先の機関も併せて設置しなければならないことを示します。

 例えば、「3-3 公開会社かつ中小会社の場合」では、株主総会から1本の矢印(実線)しか出ていません。これは矢印先の取締役会を設置しなければならないことを表しています。

(イ) ある機関から複数の矢印(実線)が出ている場合は、その矢印先のいずれかの機関を設置しなければならないことを示します。

 例えば、「3-1 非公開会社かつ中小会社の場合」では、「株主総会」から2本の矢印(実線)が出ています。これは、矢印先の「取締役」を置くか、あるいは「取締役会」を設置しなければならない4ことを表しています。

(ウ) 矢印(破線)の場合は、矢印先の機関を設置してもしなくても構わないことを表しています。

 例えば、「3-1 非公開会社かつ中小会社の場合」で、取締役会を設置しないことを選択したとき(図の上のルートを進むとき)、取締役から矢印(破線)が出ています。これは、矢印先の「監査役」を設定してもいいし、設置しなくてもいいことを表しています。

会計参与を設置しなければいけない唯一のケース

 以下に記載した、「3-1 非公開会社かつ中小会社の場合」で、取締役会を設置するものの、監査役や監査役会、監査等委員会・指名委員会等を置かないときは、その代わりに会計参与を置かなければなりません(会社法327条2項参照)。
 下記「3-1 非公開会社かつ中小会社の場合」の図で説明すると、まず「株主総会」から右下の「取締役会」の設置を選択し、そこから右の薄い背景の3つの機関のいずれも選択しない場合、下の「会計参与」の設置が義務付けられるということです。これが会計参与を設置しなければならない唯一のケースです。

 その他の場合は、公開・非公開の別、大・中小の別にかかわらず、会社は、会計参与を任意に設置することができます。

 任意なので、もちろん、設置しなくても構いません。下記の各パターンの図においては、「3-1 非公開会社かつ中小会社の場合」以外、全て任意の設置ということであえて記載していませんので、注意してください。

 なお、会計参与設置会社が極めて少ないことは、後述のとおりです。

 各機関の役割は、「株式会社における機関の役割」を参照してください。

非公開会社かつ中小会社の場合

非公開会社かつ中小会社の場合

(1)非公開会社かつ中小会社の最もシンプルな機関設計

 非公開会社かつ中小会社における最もシンプルな機関設計は、株主総会のほか、取締役のみを置くものです(図の上のルートで、取締役止まり)。起業して、会社が設立された初期段階では、人材も豊富でなく、(一人株主である)創業者が機動的に意思決定し、業務を遂行するために、このようなシンプルな機関設計とする例も多く見られるように思います。実際のところ、まずはこれで十分でしょう。

(2)取締役会を設置した場合の機関設計

 取締役会を設置したときは、監査役、監査役会、監査等委員会・指名委員会等、会計参与のいずれかを設置しなければなりません(会社法327条2項)。

 また、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない一方で(会社法327条4項)、会計監査人を置かなければなりません(会社法327条5項)。

 会計参与の設置は原則として任意ですが、取締役会を設置しながら、監査役や監査役会、監査等委員会・指名委員会等を置かないときは、会計参与の設置義務が発生します(会社法327条2項参照)。これが会計参与を設置しなければいけない唯一のケースであることは前述のとおりです。

(3)非公開会社かつ中小会社の場合の機関設計一覧

 つまり、非公開会社かつ中小会社の場合の機関設計は、以下の17通りとなります。

  1. 株主総会+取締役
  2. 株主総会+取締役+会計参与
  3. 株主総会+取締役+監査役
  4. 株主総会+取締役+監査役+会計参与
  5. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
  6. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人+会計参与
  7. 株主総会+取締役会+監査役
  8. 株主総会+取締役会+監査役+会計参与
  9. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
  10. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
  11. 株主総会+取締役会+監査役会
  12. 株主総会+取締役会+監査役会+会計参与
  13. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
  14. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
  15. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人
  16. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人 +会計参与
  17. 株主総会+取締役会+会計参与

非公開会社かつ大会社の場合

非公開会社かつ大会社の場合

(1)会計監査人の設置が義務

 非公開会社であっても、大会社の場合には、多数の債権者が当該会社に関わってくることが想定されるので、計算書類の適正を監査させるために、会計監査人の設置が義務づけられています(会社法328条327条5項)。そして、会計監査人設置会社は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(会社法327条3項、4項)。

 会計参与の設置が任意であることは、既に説明したとおりです。  

(2)非公開会社かつ大会社の場合の機関設計一覧

 そのため、非公開会社かつ大会社の場合の機関設計は、以下の8通りとなります。

  1. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
  2. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人+会計参与
  3. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
  4. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
  5. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
  6. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
  7. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人
  8. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人+会計参与

公開会社かつ中小会社の場合

公開会社かつ中小会社の場合

(1)取締役会の設置が義務

 公開会社は、会社のことをよく把握していない者も株式を取得して株主となることができるので、株主に代わって業務執行を監督する役割を担う取締役会の設置が義務づけられています(会社法327条1項1号)。

(2)公開会社であり、中小会社の場合の機関設計一覧

 そこで、公開会社であり、中小会社である場合の機関設計は、以下の10通りとなります。

  1. 株主総会+取締役会+監査役
  2. 株主総会+取締役会+監査役+会計参与
  3. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
  4. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
  5. 株主総会+取締役会+監査役会
  6. 株主総会+取締役会+監査役会+会計参与
  7. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
  8. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
  9. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人
  10. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人+会計参与

公開会社かつ大会社の場合

公開会社かつ大会社の場合

(1)公開会社かつ大会社は制約が多い

 公開会社であり、かつ、大会社の場合、利害関係者が大多数に上るのが通常なので、これら利害関係者の保護等の理由から、非公開会社や中小会社よりもずっと大きな制約に服しており、監査役会又は監査等委員会・指名委員会等を設置し(会社法328条1項)、さらに、会計監査人も置かなければなりません(会社法328条1項1号、327条5項)。

(2)公開会社であり、大会社の場合の機関設計一覧

 具体的には、公開会社、かつ、大会社の場合の機関設計は、以下の4通りだけとなります。

  1. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
  2. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
  3. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人
  4. 株主総会+取締役会+監査等委員会or指名委員会等+会計監査人+会計参与

おわりに

 以上のとおり、利害関係者が少ないと想定される会社態様であればあるほど、それだけ機関設計の自由度も増しています。

 一方で、平成24年度の中小企業においては約5.2%しか会計参与を導入していなかったり5、平成24年度の委員会設置会社の割合が約4.9%程度しかなかったり6と、会社法が施行されてから数年が経つにもかかわらず、依然として柔軟な機関設計が活用されていない状況があることも否定できません。会計参与導入企業に対しては信用保証協会による信用保証料率が割引されたり、金融機関の融資条件が優遇されたりもしますし、委員会設置会社については、監査等委員会設置会社、あるいは、指名委員会等設置会社として、より利用しやすい制度を目指して平成26年に会社法が改正されたところです。
 会計参与の役割などについては、日本税理士会連合会のウェブサイトにおいて説明されていますので、そちらもご確認ください。

 まずは非公開会社・中小会社が取り得る機関設計でスタートすることになると思いますが、その後の経営や市場環境によって会社の態様・規模にも当然変化が出てくるでしょう。専門家にも相談しつつ、会社の態様や規模に応じて最適な機関設計を行い、事業を円滑に行うことが重要です。


  1. 「公開会社」とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいいます(会社法2条5号)。つまり、全部の株式に譲渡制限がある会社が非公開会社で、それ以外が公開会社となります。実際に譲渡制限株式が発行されているかは問題ではなく、定款に譲渡制限の定めがあるか否かが区別の基準となります。 ↩︎

  2. 「大会社」とは、資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上の会社をいいます(会社法2条6号)。これらの金額は「最終事業年度に係る貸借対照表」に基づいて判断されるので、期中の数字を見て、新たに大会社となったり、中小会社になったりするわけではありません。 ↩︎

  3. 会社法上、「中会社」「小会社」「中小会社」という用語はありませんが、大会社以外の会社を一般に「中小会社」と呼びます。 ↩︎

  4. 取締役会を設置するということは、取締役を3人以上置くことになります(会社法331条5項)。取締役会を設置することを選んだからといって、取締役を設置しないことにはなりませんので、注意してください。監査役、監査役会の関係も同様です(会社法335条3項)。 ↩︎

  5. 「平成24年度中小企業における会計の実態調査事業報告書」45頁 ↩︎

  6. 経済産業省「平成25年企業活動基本調査確報」第14表 ↩︎

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