取締役が負う代表取締役等の監視・監督義務について

コーポレート・M&A

 友人から、「自分が代表取締役をしている会社の社外取締役になってもらいたい」と依頼されたのですが、どのような役割を担うことになるのでしょうか。

 代表取締役がいる会社の場合、その他の取締役、とりわけ社外取締役には、代表取締役その他の業務執行者を監視・監督する役割が期待されているといえます。

解説

目次

  1. 取締役の役割
    1. 取締役会設置会社の取締役
    2. 取締役会非設置会社の取締役
  2. 監視監督義務の内容
    1. 非上程事項の監視監督義務
    2. 監視監督義務の履行
  3. 社外取締役に期待される役割

目次

  1. 取締役の役割
    1. 取締役会設置会社の取締役
    2. 取締役会非設置会社の取締役
  2. 監視監督義務の内容
    1. 非上程事項の監視監督義務
    2. 監視監督義務の履行
  3. 社外取締役に期待される役割

取締役の役割

取締役会設置会社の取締役

 取締役会設置会社の場合、各取締役は業務執行を直接担当するわけではなく、業務執行を決定し(会社法362条2項1号)、その決定に基づいて業務を執行する代表取締役、あるいは、業務執行取締役を選定して(会社法362条2項3号、363条1項)、その職務の執行を監督することになります(会社法362条2項2号)。

 この業務執行者の監視・監督が、取締役の中心的な役割ということになるでしょう。

 従業員に対する監視監督義務については、「取締役が負う従業員に対する監視・監督義務について」をご覧ください。

取締役会非設置会社の取締役

 他方、取締役会非設置会社の場合、原則として、取締役は各自が業務を執行します(会社法348条)。会社法上、取締役会非設置会社の取締役の監視監督義務は明記されていませんが、取締役の業務執行の一環として、他の取締役の業務執行を監視・監督する義務も負っていると考えられています 。

監視監督義務の内容

 では、監視監督義務とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

非上程事項の監視監督義務

取締役は、取締役会に上程された問題のみ監視監督していればよいのか

 代表取締役・業務執行取締役は、3か月に1回以上の頻度で取締役会において職務執行の状況を報告しなければなりません(会社法363条2項)。その他の取締役は、この取締役会における状況報告を聞いて、その是非を判断していればよいのでしょうか。

  答えは、「No」 です

 最高裁昭和48年5月22日判決は、以下のとおり判示しています。

株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有する

最高裁昭和48年5月22日判決

 したがって、取締役は、取締役会において上程された問題のみを扱っていればよいわけではありません。

監視監督義務違反の具体的事例

 もっとも、代表取締役らの業務執行全てを監督することは事実上不可能といえますので、どのような場合に監視監督義務に違反したとされるのか、以下の裁判例が参考になります。

札幌地裁昭和51年7月30日判決

 代表取締役の業務すべてについてその監督権限を行使することは事実上不可能であるから、代表取締役の任務違反行為のすべてにつき、取締役が監視義務違背の責任を問われるわけではなく、 取締役会に上程されない事項については代表取締役の業務活動の内容を知ることが可能である等の特段の事情がある場合に限って認められると解すべきである

東京地裁昭和55年4月22日判決

 代表取締役の業務について、その全てを監視することが不可能であり、 取締役会に付議された以外の事項については、取締役の監視義務違反の責任を追及するには、代表取締役の業務活動の内容を知りもしくは容易に知りうべきであるのにこれを看過したことなどの特段の事情が必要であると解すべきである

 このように、取締役会の非上程事項については、代表取締役の業務活動の内容を知り、または知ることができたなどの特段の事情があるのに、これを看過したときに限って、監視監督義務に違反したとされるのが裁判例の傾向です。

監視監督義務の履行

取締役の監視監督義務の具体的な履行方法

 取締役が、代表取締役の業務執行により会社に損害が発生するかもしれないことを知った場合、どうすればいいでしょうか。

 まず、自らが属する取締役会において報告し、対応を検討することが考えられます。

 また、取締役が、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、取締役会を設置しているか否かにかかわらず、監査役設置会社であれば監査役に、監査役会設置会社であれば監査役会に、監査等委員会設置会社であれば監査等委員会に、それ以外の会社は株主に、直ちにその事実を報告しなければなりません(会社法357条)。

それでも監視監督義務を果たせないような場合

 さらに、状況が何も変わらないようであれば、弁護士に相談したり、事実を公表するとして代表取締役を戒めたり、最終的には、取締役を辞任しなければならないような事態もあるのではないかと思います 。

社外取締役に期待される役割

 平成26年の会社法改正により、社外取締役・社外監査役の「社外」性の要件が変わりましたが、以下の各資料は社外取締役の役割を考える上で参考にすべき資料だと思います。

 一般社団法人日本取締役協会の「社外取締役・取締役会に期待される役割について(提言)」においては、以下のような提言がなされています(同提言1項、2項)。

  1. 社外取締役・取締役会の主たる職務は、経営(業務執行)の意思決定ではなく、経営者(業務執行者)の「監督」である。
  2. 「監督」の中核は、経営者が策定した経営戦略・計画に照らして、その成果が妥当であったかを検証し、最終的に現在の経営者に経営を委ねることの是非について判断することである。

 この提言が監査役設置会社である上場会社の社外取締役を念頭に置いていることから、必ずしも中小規模の会社には妥当しない部分もありますが、経営者や社外取締役、これから社外取締役になろうとする方にとっては、この提言を読み、理解することが、会社を適切に経営・監督する上で役に立つと思います。

 なお、社外取締役の要件については、「会社の役員になるための資格」4-1をご覧ください。

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