Service Agreementの作成・レビューにおける留意点

取引・契約・債権回収
幅野 直人弁護士 かなめ総合法律事務所

 Service Agreementを作成・レビューする際に留意すべき点を教えてください。

 Service Agreementは、日本語の契約書であれば、業務委託契約書に相当する契約書です。作成・レビューにあたっては、とりわけ、①サービスの内容・品質、②対価の算定・支払い、③損害賠償、④知的財産権の帰属に関する条項などに留意することが望まれます。実務上は、Service Agreementと題されていても、典型的な業務委託契約の問題だけではなく、他の契約類型の問題を規定している場合もありますので、取引の内容を反映したものになっているかを確認することを忘れないでおくとよいでしょう。

解説

目次

  1. Service Agreementとは
  2. サービスの内容・品質等
  3. サービス対価の算定・支払い
  4. 損害賠償条項
  5. 知的財産権の帰属等
  6. 取引の中身・実体に注意
  7. 国際取引の場合

Service Agreementとは

 Service Agreementとは、一方当事者が他方当事者にService(役務)を提供する場面で用いられる契約書です。

 役務提供を内容とする取引には、Employment Agreement(雇用契約)、Distribution Agreement(販売店契約)、Agency Agreement(代理契約)など、他にも類型化された種類の契約が多数あります。Service Agreementは、そのような類型化されていない、その他一般の役務提供型の取引において用いられることが多いでしょう。

 その他一般の役務提供をカバーするものであることから、Service Agreementは、たとえば、コンサルティング業務、広告の掲載、商品の設計、修理・メンテナンス業務、ウェブ制作など、様々な場面で用いられます。

 このように役務一般を対象とする契約であるという意味において、基本的には業務委託契約書とパラレルに理解するとよいでしょう(日本語の「業務委託契約書の作成・レビューにおける留意点」も参照ください)。たとえば、Service Agreementの法的性質についても、日本法のもとで分析するならば、業務委託契約書と同様、民法上の委任契約や請負契約に分類できる場合が多いと考えられます。

サービスの内容・品質等

 Service Agreementの作成・レビューにおいては、まず、対象のServiceの内容を記述する条項が最も重要です。たとえば、次のような条項が設けられます。

Article◯(Services)
 Under this Agreement, 【Service Provider】 shall render consultancy services to 【User】 in accordance with the scope, timeline, quality level, or any other specifications with respect to the services described in Appendix A attached hereto.

第◯条(業務内容)
 本契約の下、【サービス提供者】は【注文者】に対して、業務範囲、スケジュール、品質水準、その他本契約書附属の別紙Aに記載のサービス仕様に従って、コンサルティングサービスを提供しなければならない。

 この規定によると、サービス提供者(Service Provider)が注文者(User)に対してconsultancy services(コンサルティング業務)を提供することは読み取れますが、コンサルティング業務の範囲や中身などは、はっきりとしません。一口にコンサルティング業務といっても、事実の調査、技術等の指導、プロジェクトの管理など様々な内容が考えられます。個別の業務についても同様で、たとえば、調査業務といっても、市場に関する調査、特定の事案に関する調査、制度に関する調査など色々な種類があります。
 Service Agreementの作成・レビューにおいて大事なのは、どのような範囲や中身のサービスを対象とすることを想定して作られたものなのか、第三者が契約書を読んだときに理解できる文章となっているかどうかをしっかりと確認することです。

 また、サービスの内容のみならず、納期や守るべき仕様・品質など、サービス提供の条件も、個々の取引で異なります。その取引での必要性・重要性に応じて、これらの条件も記載しておくことが望ましいです。ウェブ制作がサービスの内容である場合には、成果物としてのウェブサイトのデザイン原稿の提出期限をあらかじめ決めているはずだと考えられます。警備巡回業務がサービスの内容である場合には、警備巡回を行うべき時間帯や場所的範囲などを約束しているのが通常でしょう。
 すべての条件を事細かに規定することは現実的ではありませんし、実務でもあまり行われないと思われますが、主要なものは、契約書やその付属文書(別紙=Appendixなど)に明記するのを心掛けておくとよいでしょう。上の規定例のように、提供されるサービスの仕様・条件をまとめて別紙で記載すると、契約条項そのものは比較的簡便な記述で足り、また、別紙で一覧性を持ってサービスの詳細を確認することができます。

 サービスの内容を記述するにあたり、背景事情についても説明したほうがわかりやすい場合には、前文(RecitalsあるいはWhereas条項)の記述を工夫することもService Agreementの作成・レビューの上での1つのテクニックです。

サービス対価の算定・支払い

 サービス対価の発生条件や算定方式については、色々な種類が考えられます。一般的には、①成果の有無にかかわらず、サービスを実施することで対価が発生する手数料型、②サービス提供によって一定の成果が生じた場合に対価が発生する成果報酬型があります。また、対価の金額の計算について、㋐定額制(例:月額固定料金)と㋑変動額制(例:時間制料金)があります。

 サービス対価の支払時期については、サービス開始時やサービス提供完了時など、サービスの進行度合いに応じて設定する方法がとられることがあります。サービスが一定程度進行した時点で支払うこととする場合には、Service Agreement上で、そのマイルストーンを明確にできているかを意識するとよいでしょう。これに対して、毎月ごと、毎四半期ごとといったように、定期払いとする方式が採用されるケースもよく見られます。

 次の条項例は、①手数料型で、毎月定額料金をサービス対価として、月末までに支払うこととするという比較的シンプルなものです。

Article ◯(Service Fee)
 In consideration of the services rendered,【User】shall pay ** JPY to 【Service Provider】as monthly service fees by the end of each month.

第◯条(サービス料金)
 本契約に基づき提供されるサービスを対価として、【注文者】は【サービス提供者】に対して、月額サービス料金として、**日本円を毎月末までに支払わなければならない。

 これに対して、次の条項例のように、取引開始時点やサービス提供が相当程度進行した時点で固定の金額を支払い(①手数料型+㋐定額制)、サービス完了時点で成果に応じて計算される金額を支払う(②成果報酬型+㋑変動額制)というような、比較的複雑な内容も考えられます。

Article ◯(Service Fee)
 In consideration of the promises made herein and the services rendered,【User】shall pay service fees to 【Service Provider】 in the following schedule:
(i)**JPY upon execution of this Agreement.
(ii)** JPY upon confirmation by the 【User】of the completion of the first half of the services.
(iii)**% of the value of ◯◯ upon confirmation by the 【User】of the completion of the second half of the services.

第◯条(サービス料金)
 本契約の下での約束及び提供されるサービスを対価として、【注文者】は【サービス提供者】に対して、以下のスケジュールに従って、サービス料金を支払わなければならない:
(1)**日本円:本契約締結時
(2)**日本円:本サービスの前半半分が完了したことを【注文者】が確認した時
(3)〇〇の価値の**%相当額:本サービスの後半半分が完了したことを【注文者】が確認した時

損害賠償条項

 Service Agreementを通じて提供されるサービスは、目に見える成果物を伴わない場合や、その結果を定量的に計れないこともあります。そのため、Service Agreementを通じて提供されたサービスをめぐって、後からトラブルが生じる場合もあります。たとえば、Service Agreementに基づいて外部業者に設計を依頼した商品を市場に提供したところ、その商品がリコールを受け、後からの調査で原因の一部がそもそもの設計にあったと判明したとします。このような場合、商品の購入者に生じた損害について、サービス提供者と注文者の間でどう責任を分担するべきか、あらかじめ決めておかないと、事態が発生した後では協議が難しいこともあります。

 そこで、Service Agreementの中では、損害が発生した場合の対応や損害賠償責任の範囲に関する条項が設けられることが多いです。次の条項は、損害賠償条項の一例です。第1項で責任を負うべき損害等の範囲を記載し、第2項で責任の範囲に含まれない損害や損害賠償額の上限を規定しています。

Article ◯(Liability of 【Service Provider】)
1.【Service Provider】 shall indemnify and hold harmless 【User】from and against any liability, costs, damages, losses, claims of a third party, fines and penalties which arises out of any direct breach of this Agreement or negligence in rendering the services.
2. Notwithstanding the provision in the preceding paragraph, 【Service Provider】shall not be liable for any consequential or indirect damages incurred by 【User】. The total amount of the liability of 【Service Provider】shall not exceed ** JPY.

第◯条(【サービス提供者】の責任)
1.【サービス提供者】は、本契約の直接の違反または本サービス提供上の過失から生じるあらゆる責任、費用、損害、損失、第三者からのクレーム、科料及び罰金について、【ユーザー】に補償をし、免責させるものとする。
2. 前項の規定にかかわらず、【サービス提供者】は、【ユーザー】に生じた派生的または間接損害について責任を負わない。【サービス提供者】の責任は、全体で、**日本円を超えないものとする。

 サービス提供者の責任がどこまで拡大する可能性があるかは、サービス価格にも影響します。サービス提供者の責任の範囲が限定的である場合、注文者としては、必要に応じて、保険の購入など、別途の対応を検討することが考えられます。

知的財産権の帰属等

 Service Agreementの取引の中でも、一定の成果物の提供を伴う類型では、何かしらの知的資産が創出され、知的財産権が発生する場合があります(たとえば、設計図面の作成の取引など)。そこで、制作活動や開発行為を予定した取引におけるService Agreementでは、知的財産権の帰属について規定を設けておく場合が多いです。

 当事者のいずれに帰属するかは、制作活動や開発行為による寄与の程度、背景にある秘密情報の提供などによる知的資産の創出への寄与、支払われるサービス対価に知的財産権の対価の要素も含まれているかなどの事情を考慮して、決められるべきものと考えます。
 規定の定め方としては、①一方当事者に帰属、②両当事者の共有、③追って協議する、などが考えられます。次の規定例は、サービス提供者に帰属する文例です。

Article ◯(Intellectual Property)
 Any patents, industrial designs, trademarks, copyrights, designs, or any other intellectual property developed through the rendering of the services by 【Service Provider】shall belong to 【Service Provider】.

第◯条(知的財産)
 【サービス提供者】による本サービスの提供を通じて、特許、実用新案、商標、著作物、意匠、その他知的財産が生じた場合、それらに関する権利は、全て【サービス提供者】に帰属するものとする。

 この他、以下の関連事項を、必要に応じて規定することになります。

  • 権利の発生に登録手続が必要な知的財産権についての登録手続の進め方
  • 知的財産権の帰属を一方当事者とする場合であっても他方当事者にその使用を許諾するときはその条件
  • 新しく産出される知的資産とは関係なく各当事者に留保される知的財産権の確認 など

取引の中身・実体に注意

 役務提供型の取引に、Employment Agreement(雇用契約)、Distribution Agreement(販売店契約)などの契約があるのは前述したとおりです。実務上、「Service Agreement」と題されているものの、取引の中身・実体としては、むしろ、そのような他に類型化された役務提供型に近い取引が見られます。
 たとえば、ウェブ上のサービスの購読に関するService Agreementであれば、何らかのコンテンツ等のライセンスを含んでいることもあります。また、Service Agreementと題し、当事者間には業務委託のような関係があると読めるものの、実質的には雇用関係があると認められるケースもあり得るでしょう。
 これらの場合には、License Agreement(ライセンス契約)やEmployment Agreementの作成・レビュー事項についても注意を払うことが求められます。

 このように、Service Agreementは多種多様な取引を取り込むものであるため、契約書の題名(タイトル)にまどわされず、その取引の実態・中身に沿って、契約書作成・レビューを行うことが重要です。

国際取引の場合

 以上のほか、国際取引の場合には、Service Agreementの準拠法や紛争解決の条項にも留意が必要です。契約書上で特に指定がない場合、①発注者の所在地、②サービス提供者の所在地、③サービス提供地などのいずれかの土地の法域の法律が契約準拠法となる可能性がありますが、国際取引ではこれらが一致しないのが通常です。そこで、予測可能性の確保の観点から、準拠法を定めておくことが重要です。同様に、紛争解決に関しても、その方法や紛争解決手続を取るべき土地を契約書で記載しておくべきです。

 また、契約の準拠法を定めた場合であっても、それにかかわらず適用のある現地の法規制には注意が必要です。たとえば、前述のように、当事者間に実質的に雇用関係があるとみられる場合など、労働関係の規制の適用があり得ますし、さらに、建築の設計など、サービスの中身によっては、そのサービスの提供に関わる規制が適用される分野もあります。

 その他、契約期間、再委託の可否、品質保証、納品と検収、秘密保持条項、契約解除条項など、当該事案のサービスに即して、条項を適宜設けるようにするとよいでしょう。

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