不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(2)- 瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)

不動産

 不動産売買契約書を作成・レビューする際に留意すべき点を教えてください。

 不動産売買契約書の特徴的な条項として、決済の前提条件(融資特約・ローン特約)、表明保証条項、瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)があり、不動産売買契約書を作成・レビューする際にはこれらの条項の定め方に留意して作成・レビューすることが必要となります。なお、2020年4月1日に改正民法が施行される予定になっておりますので、その対応も今後必要になるでしょう。

 このうち、本稿では、瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)について、解説をいたします。「不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(1)- 決済の前提条件(融資特約・ローン特約)、表明保証条項」もあわせて参照ください。

解説

目次

  1. 瑕疵担保責任
  2. 解除条項(手付解除)
    1. 手付金の法的性質
    2. 「契約の履行に着手」となり解除できなくなる行為

瑕疵担保責任

 瑕疵担保責任とは、契約締結時に契約の目的物(不動産)に通常備わっているべき性状を有していない場合(瑕疵)に、売主が買主に対して負うべき責任をいいます。
 この瑕疵のうち、「隠れた瑕疵」とは、契約締結時において売主および買主が通常一般人が負うべき注意を尽くしてもなお発見できない瑕疵をいいます。
 不動産売買契約において、瑕疵担保責任の条項は必ずと言っていいほど規定される条項ですが、以下の法律の適用に注意が必要です。

 まず、民法上、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、これによって契約の目的を達せられないときは、買主は、契約の解除をすることができます。契約の解除ができない場合でも、損害賠償請求をすることができます。なお、これらの請求は、買主が隠れた瑕疵の事実を知ってから1年以内にしなければなりません(民法570条、566条)。

 また、商法上、商人間の売買において、買主は、売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、検査をしなければなりません。この検査において、買主は、売買の目的物に瑕疵を発見したときは、ただちに売主に対してその旨の通知を発しなければならず、この通知を発しないときは、これを理由とする契約の解除や損害賠償の請求ができなくなります。さらに、隠れた瑕疵については、買主が6か月以内に発見し、その旨通知をしなければ、これを理由とする契約の解除や損害賠償の請求ができなくなります(商法526条)。

 さらに、宅地建物取引業法上、宅地建物取引業者が宅地または建物の売主になる場合において、瑕疵担保責任を定める条項の期間について、その目的物の引渡の日から2年以上とする特約を除き、買主に不利になる特約を定めてはならず、これに反する特約は無効となります(宅地建物取引業法40条)。

 なお、新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法と同様の瑕疵担保責任を負います(住宅の品質確保の促進等に関する法律94条)。

 以上の民法、商法、宅地建物取引業法、住宅の品質確保の促進等に関する法律の適用関係に注意して、瑕疵担保責任の条項を規定する必要があります。

適用される法令 適用場面(例) 行使期間
民法 個人間の売買の場合 知ってから1年
商法 企業間の売買の場合 受領から6か月
宅地建物取引業法 宅地建物取引業者が宅地または建物の売主になる場合 引渡の日から2年以上
住宅の品質確保の促進等に関する法律 新築住宅の売買契約の場合 引き渡した時から10年

 企業間の不動産売買において、特に注意しておきたいのは商法526条です。買主が目的物を遅滞なく検査する法的義務を負い、かつ、この検査によって6か月以内に隠れた瑕疵を発見し、売主に通知しなければ、瑕疵担保責任を追及できなくなるという買主にとって多大な法的義務の負担であるにもかかわらず、実務上、あまり意識されていないように思われます。そのため、商法526条の適用があるかないかは争いになりやすく、買主は、適用を制限するか排除することを明確に規定しておくべきと考えられます。

 なお、2020年4月の民法改正により、瑕疵担保責任は廃止され、契約不適合責任となります。たとえば、「隠れた瑕疵」という概念は廃止され、「契約の内容に適合しないもの」に変更になりますし、責任追及期間についても、目的物の数量等に関する不適合については、責任追及期間が長くなる等の変更がありますので、注意していただければと思います。

【条項例】
第◯条(瑕疵担保責任)
 売主は、買主に対して、不動産の引渡日から2年間、隠れた瑕疵について瑕疵担保責任を負い、隠れた瑕疵による損害を賠償するものとする。隠れた瑕疵によって契約の目的を達せられないときは、買主は契約を解除することができる。なお、商法526条の適用はないものとする。

解除条項(手付解除)

 解除条項とは、契約を解除するための要件を規定する条項であり、このうち、手付解除条項とは、手付金の放棄等をもって契約を解除することができる条項です。

手付金の法的性質

 不動産売買契約においては、契約締結時において、買主から売主に対して、一定額の金員を支払うことが多く、手付金と呼ばれております。
 この手付金の法的性質については、下記のものがあるとされています。

  • 証約手付:契約の締結を証する性質
  • 解約手付:契約当事者に債務不履行があったか否かを問わず、契約の解約権を留保する性質
  • 違約手付:契約当事者に債務不履行があった場合に、その違約金として没収される性質

 そのいずれの性質となるかは、当事者間の合意によりますが、不動産売買契約では、証約手付と解約手付の双方を兼ねているとされることが多いと思います。

 民法上も、手付金に解約手付としての性質を有することを認め、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる」と定めています(民法557条1項)。

 なお、宅地建物取引業法上、宅建業者が売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質であっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、宅建業者はその倍額を返還して、契約の解除をすることができ、これに反する特約で買主に不利なものは無効とすると定め、この場合の契約当事者は、必ず(相手方が)契約の履行に着手するまでは手付解除をすることができるように規制しています(宅地建物取引業法39条2項、3項)。

手付金の法的性質

「契約の履行に着手」となり解除できなくなる行為

 特に重要なのは、この解約手付によって、契約成立後に、契約当事者が「契約の履行に着手するまでは」契約を一方的に解除することができるのですが、売主・買主が具体的にどの段階に至れば「契約の履行に着手」といえ、解除ができなくなるのかです。なお、自ら契約の履行に着手した場合でも、相手方が契約の履行に着手するまでは、なお契約を解除することができます(最高裁昭和40年11月24日判決・民集19巻8号2019頁)。
 2020年4月施行の改正民法では、この判例法理を明文化し、「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」のような条文となります(改正民法557条1項)。

 最高裁判例では、「契約の履行に着手」とは、「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」を指すとされております。ポイントは「客観的に外部から認識し得るような形」という点であり、手付解除を主張する一方の当事者が、他方相手方の当該行為について明確に認識することが可能であって、もはや手付解除を認めることは他方当事者にとって酷であるような場合ということができるでしょう。

 この点、不動産売買契約において、何をもって「客観的に外部から認識し得るような形で」履行行為の一部をなし、または「履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」に該当するかについては、事例ごとの個別の判断となります。
 実務上、買主が物件をおさえたいため契約締結を先行したものの、その後色々な事情で契約を白紙撤回したいときに、既に売主は引渡しのための様々な行為を開始しているため、買主が手付金を放棄して解除することができるかどうか、という形で問題となりやすいのです。
 この場合、売主がどのような行為を開始していれば手付解除ができなくなるのかについて、参考となる裁判例は以下のようなものがあります。これらの裁判例もあくまで当該事例における裁判所の判断であって、他の事例において必ず同じ結論になるとは限らないので注意が必要です。

裁判年月日 「履行の着手」 理由
東京地裁平成21年11月12日判決
  • 売主が不動産に設定されていた抵当権を抹消するために、借入金の全額を返済したことは、履行のために不可欠な行為であった
  • 売主が、完全な所有権の行使を阻害する負担を消除する債務を契約上負っており、当該債務の「履行の着手」がある
最高裁昭和51年12月20日判決・集民119号355頁
  • 売主が不動産の賃借人との間で賃貸借契約の合意解除、明渡し、立退き料支払いの合意をした
  • 売主が、完全な所有権の行使を阻害する負担を消除する債務を契約上負っており、当該債務の「履行の着手」がある
東京地裁平成17年1月27日判決 × 売主が、司法書士に対して所有権移転の登記手続きの委任等をしたことは、登記手続きが司法書士ではないとできないものではないこと等から、履行に不可欠なものではなく、履行の準備行為に過ぎない

 このような争いを避けるために、売買契約上、手付解除の期限を定める方法で、手付解除の期限を明確化することが行われておりますが、上述したように、宅建業者が売主となる宅地または建物の売買契約では、契約の履行に着手するまでは、手付解除ができ、これに反する買主に不利な特約は無効とされております。
 すなわち、宅建業者が売主となる宅地または建物の売買契約では、手付解除の期限を定めたとしても、あくまで売主が契約の履行に着手した後であっても、当該期限までは解除できるとするように、買主にとってより有利なものでなければならず、そうでない特約は無効ということであり、注意が必要です。

【条項例】
第◯条(手付解除)
 相手方が契約の履行に着手するまでは、売主は買主に受領済みの手付金の倍額を支払い、また買主は売主に支払済みの手付金を放棄することにより、契約を解除することができる。
2.前項にもかかわらず、買主は、相手方が契約の履行に着手した後であっても、◯年◯月◯日までは、前項の解除をすることができる。

 「不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(1)- 決済の前提条件(融資特約・ローン特約)、表明保証条項」も参照ください。

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