不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(1)- 決済の前提条件(融資特約・ローン特約)、表明保証条項

不動産

 不動産売買契約書を作成・レビューする際に留意すべき点を教えてください。

 不動産売買契約書の特徴的な条項として、決済の前提条件(融資特約・ローン特約)、表明保証条項、瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)があり、不動産売買契約書を作成・レビューする際にはこれらの条項の定め方に留意して作成・レビューすることが必要となります。なお、2020年4月1日に改正民法が施行される予定になっておりますので、その対応も今後必要になるでしょう。

 このうち、本稿では、決済の前提条件(融資特約・ローン特約)と表明保証条項について、解説をいたします。「不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(2)− 瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)」もあわせて参照ください。

解説

目次

  1. 実行前提条件(融資特約・ローン特約)
  2. 表明保証条項

実行前提条件(融資特約・ローン特約)

 実行前提条件(融資特約・ローン特約)とは、売主による不動産の引渡義務と買主による売買代金の支払義務の履行の条件を規定する特約です。
 このうち、特に重要なのが、買主による売買代金の支払義務の履行の条件として規定される、いわゆる融資特約・ローン特約です。

 融資特約・ローン特約とは、買主の不動産の売買代金の支払いのための資金の全部または一部を買主以外の第三者である金融機関等から調達し、当該資金調達が完了することを売買代金の支払義務の履行の条件とする特約です。

 買主は、様々な理由から、売買代金の全部または一部を自己資金からではなく、外部から調達した資金によって支払うことが実務上多いと思われます。
 その際に、この融資特約・ローン特約を入れておかないと、買主が万が一外部から資金を調達できずに売買代金を決済日に支払えなかった場合、売買代金の支払義務の債務不履行となり(民法555条)、売主から契約を解除され、違約金や損害賠償を請求されるリスクが高くなります(民法541条、415条)。

融資特約・ローン特約

 そこで、このような重大なリスクを避けるため、実行前提条件として融資特約・ローン特約を規定します。決済日に資金調達が完了しなかった場合、売買代金の支払義務の履行をすることを要せず、決済日を一定期間延期できるようにしたり、契約を無条件で解除することができるようにするといった規定をしておきます。

融資特約・ローン特約の実行前提条件

 これに対して、売主からすれば、融資特約・ローン特約があると、何ら自己の責めはないにもかかわらず、決済日に保有不動産の売却ができなくなり、事業計画の達成が難しくなるリスクがありますので、規定を避けたい条項です。規定をせざるを得ないとしても、買主に対して、別途違約金を支払う義務を負わせる等、何らかのペナルティーを課すなどの規定をしておきたいところです。

【条項例】
第◯条(実行前提条件・融資特約)
 買主の売買代金の支払義務の履行は、決済日において以下の各号の事由が全て充足されていることを前提条件とする。

(1)第◯条に規定する売主の表明保証の全てが、真実かつ正確であること

(2)売主が本契約上の義務について、全て遵守又は履行していること

(3) 買主が売買代金の支払を目的とする◯◯銀行に対する融資申込が承認され、資金調達を完了すること

2. 前項(3)の条件が決済日において成就しない場合には、買主は売主に対してその旨通知することにより、本契約を無条件で解除することができる。
3. 前項によって本契約が解除された場合には、本契約はその効力の一切を失い、売主は受領済の金員を遅滞なく無利息で買主に返還するものとする。
4. 本条第1項(1)又は(2)の条件が決済日において成就しない場合には、第◯条(売主の表明保証)又は第◯条(契約解除)に従う。

表明保証条項

 表明保証条項とは、契約の一方当事者が相手方当事者に対して一定の事項につき、真実かつ正確であることを表明し保証する旨の条項です。

【条項例】
第◯条(売主の表明保証)
 売主は、買主に対して、本契約締結日及び決済日において、別紙◯記載の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する。売主による表明保証が真実若しくは正確でなかった場合、これによって相手方当事者が被った損害を賠償する責任を負う。

 上記の条項例は、売主による表明保証を定めたものですが、不動産売買契約書の場合には、不動産の現状に即して、広範多岐にわたって記載されることが一般的です。
 重要なことは、売主の場合には、対象となる不動産の現状(所有権の状況、境界確定の状況、瑕疵・修繕の状況、建築基準法等の遵守状況、テナントとの紛争の存否等)について、表明保証事項と異なる事実があった場合には、売主による表明保証違反として、買主から損害賠償責任を追及される、契約を解除されるといったリスクがあるので、表明保証事項の除外事由であることを明確に記載することです。

 実務では、この除外事由の記載の仕方が問題になることが多く、売主・買主間で様々な調整をすることになりますが、売主の場合には、まずは具体的な事実をできるだけ詳しく、漏れがないように記載することが必要です。

 これに対して、買主の場合には、当該除外事由を齟齬なく認識しているか否か、当該除外事由記載の事実を売主に対して治癒させる義務を負わせるか否か、治癒させる義務の履行期限や履行できなかった場合の効果(契約解除、損害賠償責任など)を明確に記載することに注意してください。

  1. 契約当事者に関する事項
    • 有効に設立・存続していること
    • 当該契約の締結・履行権限を有すること
    • 反社会的勢力と繋がりがないこと
    • 倒産またはそれに準ずる状態ではないことなど
  2. 不動産に関する事項
    • 所有権に関すること
    • 境界確定に関すること
    • 瑕疵・修繕に関すること
    • 建築基準法や消防法等の各種規制に関すること
    • テナントの解約や賃料、紛争に関することなど

不動産売買契約書の作成・レビューにおける留意点(2)- 瑕疵担保責任、解除条項(手付解除)」も参照ください。

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