法務・知財EXPOレポート、テクノロジーを通じて未来を体感する3日間

IT・情報セキュリティ

目次

  1. 法務・知財に関する初の大型展示会
  2. 電子契約は業務効率化だけでなく、リスク管理を実現するソリューション
  3. リーガルテック導入はあくまで手段、目的は会社の要請に応えること
  4. 法務・知財に関するテクノロジーを理解する

法務・知財に関する初の大型展示会

11月13日~15日、インテックス大阪で法務・知財EXPOが開催された。リードエグジビションが開催する大型展示会で法務・知財と銘打ったものは今回が初となる。

会場では、総務、人事関連のソリューションサービスのほか、契約管理や特許など知財管理関連サービスのブースが並んだ。AIを使った契約書のチェックサービスを提供する日本法務システム研究所では当初想定を上回る反響があったという。

会場で目を引いたのは機械翻訳サービス。日本企業の海外取引の増加に伴って法務部門での翻訳ニーズは増加の一途を辿り、機械翻訳は実務の現場で一般的になってきた。出展者からは「認知から差別化のフェーズに入った」との声も聞かれた。

弁護士ドットコムからは電子契約サービスの「クラウドサイン」が出展を行い、サービスのデモのほか、「サインのリ・デザイン」の橋詰卓司編集長によるプレゼンが行われた。

弁護士ドットコム株式会社「サインのリ・デザイン」編集長 橋詰 卓司

クラウドサインは現在5万社超が導入、普及期に入ったといえる電子契約サービスだが、導入の検討にあたり企業からは電子契約の有効性に関する不安や疑問の声も根強い。プレゼンでは、そのような疑問を解消するため、クラウドサインがグレーゾーン解消制度によって国の承認を得た事例を紹介したほか、民法改正の条文をもとに電子契約の有効性を説明。来場者は熱心に耳を傾けていた。

電子契約は業務効率化だけでなく、リスク管理を実現するソリューション

今回のEXPOではスピーカーによるセミナーも多く設けられた。本稿では14日に行われた法務業務の効率化に関する2つのセミナーの模様をお届けする。

弁護士ドットコム株式会社、取締役の橘大地は「リーガルテックの発展と法務の未来~IT時代の法務が担う役割と責任~」というテーマで講演。冒頭、運営による撮影禁止の案内に対し、「写真撮影とSNSでのシェア、大歓迎です。初めてとなる法務・知財EXPOの開催は感慨深い。第2回の開催に向け、皆で盛り上げていきましょう」と呼びかけると、その声に応えるように、会場からはスマートフォンをかざす手が一斉に上がった。

講演で橘が強調したことの1つがファクトベースでの議論だ。

橘は経営法友会が公表した資料をもとに、法務部門における専門性を有した人材の増加と、法務部門が主に取り組む業務としてあげた適切なリスク管理との関係性を指摘。「現状の法務部門は、専門性を有した人材が行うべき社内のリスク管理を行える体制になっているだろうか」と疑問を呈した。

弁護士ドットコム株式会社 取締役 橘 大地

「契約期限が切れる契約書がどれだけあるか把握していますか?」橘が数多くのクラウドサイン導入企業から回答を得たこの問いに、胸を張って答えられる法務部員はどれほどいるだろう。事業部門への権限委譲に伴い、法務を通らない契約書が社内に散在。法務部門による統制がきかず、データ化をしようにも集約が困難というケースは企業の規模や業種を問わず、一般的に見られる光景だ。

このほか、紙の契約書における印鑑改ざんのリスクが顕在化した事例に触れ、業務効率化を推進するだけでなく、セキュリティやガバナンスの面でも優れている電子契約の特性を強調した。

今後、クラウドサインが解決を目指す法務部門の課題として、橘は「交渉戦略」「事業への法的アドバイス」「マネジメント」をあげた。いずれも属人的かつ定量化されていない法務業務を見える化することで、事業をドライブさせる法務機能へ変化する可能性を秘めている。

最後に橘は「テクノロジーを駆使した強い法務部を作ってほしい」と聴講者にメッセージを送り、講演を締めくくった。

リーガルテック導入はあくまで手段、目的は会社の要請に応えること

続いて登壇したネスレ日本株式会社法務部の美馬 耕平部長は、「ネスレ日本が実践する未来型法務とは~リーガルテックの活用法~」と題して講演を行った。

全社的にイノベーションを推奨するネスレ日本では法務部門も含めて、新たな挑戦がしやすい環境だという。従来より法務部門に求められるガーディアンとしての役割に加え、事業を実現するためのソリューションを提供する役割がより強く求められるようになるなか、法務業務における単純作業を削減し、考える時間を捻出することがリーガルテック導入のきっかけだった。

現在はAIを用いた契約書チェックツールであるLegalForce、法務ドキュメントサービスのhubble、そしてクラウドサインを用いて業務変革に取り組んでいるという。

ネスレ日本株式会社 法務部 部長 美馬 耕平氏

美馬氏は、リーガルテックサービスの導入検討について、「最大限の効果を求めてしまうかもしれないが、できるところだけ、便利になりそうなところだけ使ってみるという考え方も重要」と見解を語った。

導入の端緒は自社の問題発見にある。提供事業者のホームページを参考とすることも有用だが、「開発している企業の方、導入されている企業の方に会ってお話を聞いてほしい。意見を伺うことで、事業者が発信している情報だけでは気づかなかった問題解決につながる可能性を発見する機会になる」と情報収集の重要性を強調した。

自社内で理解を得るには、業務フローや規程の見直しといった点にまで着目することや、他部門も巻き込んだトライアルが有用と提言。その他、電子契約を推進するために取引先への提案書作成にも取り組んだ経験を紹介した。新しいテクノロジーを活用する組織に変わるためには、推進者の地道な努力が必要不可欠と言えそうだ。

美馬氏は「リーガルテックの導入はあくまで手段であり、目的としないこと」と忠告したうえで、法務自身が考える時間を捻出し、会社から求められる役割に応えていくことが重要と展望を語った。

法務・知財に関するテクノロジーを理解する

テクノロジーの進化と普及が進み、組織、個人ともに変革が求められるなか、最適解はまだ見えない。遠回りかもしれないが、実例を1つひとつ積み上げていくことが確実な道かもしれない。

法務・知財EXPOは今回の大阪開催を皮切りに、名古屋、東京でも開催予定だ。

第1回[名古屋]法務・知財EXPO
会期:2020年2月12日 [水]~14日[金]
会場:ポートメッセなごや

第1回[東京]法務・知財EXPO
会期:2020年4月15日 [水]~17日[金]
会場:東京ビッグサイト

主催 : リード エグジビション ジャパン(株)

また、BUSINESS LAWYERSでは2019年11月29日(金)に東京で「Legal Innovation Conference ~リーガルテックの現在地~」を開催した。当日は法務業務を支援するサービスが体験できるほか、経済産業省、弁護士、リーガルテック提供事業者、導入企業による講演・トークセッションを通じて、テクノロジーの今と未来を体感できる機会を提供。カンファレンスの模様は本サイトでもレポートする。

(取材・文・写真:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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