改正健康増進法と職場の受動喫煙対策

第6回 喫煙率ゼロへひとつずつ ファイザーが育んだ最先端の禁煙カルチャー 喫煙率3.5%のファイザー、2019年11月末までの「喫煙率ゼロ」達成を目指す

人事労務

目次

  1. 社内喫煙率は10年で10ポイント以上低下
  2. 非喫煙者を巻き込んだ禁煙支援の取り組み
  3. 透明性のある就業規則がカギ

 製薬大手のファイザーが、2019年11月末までに社員の「喫煙率ゼロ」を打ち出した。ファイザーでは2005年から社内禁煙の取り組みを開始し、2011年には就業規則で就業時間中の禁煙を規定。2015年からは「喫煙者ゼロ最終宣言」の活動を展開するなど、少しずつ確実に社内禁煙化を進めてきた。ファイザー株式会社 労政グループの田形敏郎氏に社内禁煙化の経緯や現状について聞いた。

社内喫煙率は10年で10ポイント以上低下

今年3月のプレスリリースにて、2019年11月末までに社員の喫煙率をゼロにするという目標を打ち出されましたね。

 日本などの先進諸国において喫煙は、疾病・死亡原因のなかで唯一防ぐことができるものでありながら、非常に重大なものであるといわれています。こうしたなかファイザーは、製薬企業として皆様の健康に貢献することを目指しており、その一環として社内禁煙を通じて社員の健康増進に積極的に取り組んでいく必要があると考えています。そして、2015年には「喫煙者ゼロ最終宣言」を発表し、2020年までに社員の喫煙率ゼロを目指す方針を打ち出しました。今回、この目標を1年前倒しして2019年11月の達成を目指すことになりました。

厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査」によると、2017年の日本人の成人喫煙率は18.3%となっています。取り組みの開始以来、社内の喫煙率はどのように推移していきましたか。

 データ取得を開始した2009年の社内喫煙率は15.2%でしたが、現在では3.5%にまで低下しました。最近では社内禁煙への取り組みを強化している企業は規模を問わず増加していますが、3.5%という数字は他社から見てもインパクトがあるもののようです。

喫煙者ゼロ最終宣言 ファイザーの社内喫煙率の推移

資料提供:ファイザー

社内禁煙の取り組みを始められたのは2005年とのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

 当時、当社でOTC医薬品 1 として禁煙支援薬のニコチンガムを販売していたこともあり、それを希望する社員に提供するようになりました。それを機に、禁煙に向けた様々な施策を打つようになっていきました。

社内禁煙活動を統括する部署はあるのでしょうか。

 基本的には、人事、健保組合、ウェルネスセンター、営業、メディカル、広報、製品担当など各部署の協力体制のもと全社で進めてきました。どこかの部署がすべてを束ねているのではなく、それぞれが力を合わせてプロジェクトベースで取り組んできた形です。歴代の社長の社内禁煙に対する思いが強く、トップが率先して禁煙に向けたメッセージを出していたことが、統括する部署がなくとも進めやすかった理由の1つだと考えています。

非喫煙者を巻き込んだ禁煙支援の取り組み

喫煙率ゼロに向けた具体的な取り組みについて教えてください。

 今年から、喫煙者に対する採用制限を開始しました。これについては、我々人事部門から外部の弁護士の先生に相談をさせていただき、その内容を踏まえて策定しました。

採用制限は喫煙者に対する差別や不利益につながるという捉え方もあり得ると思います。

 その点についても、弁護士の先生のアドバイスをもとに進めていきました。労働基準法に関わる国籍・社会的な身分の差別や、男女雇用機会均等法に関わる男女差別をしているわけではありませんので、あくまで禁煙に取り組む会社としての考えを反映させた採用方針の1つであると考えています。特に、ファイザーは生命関連製品を扱う製薬企業として健康を推進しているという背景もありますので、こうした採用の方針は理解されるものと思っています。

喫煙者に対する禁煙支援などは行われているのですか。

 禁煙外来で治療をしたくても平日は行きづらい方もいることから、当社では遠隔診療による禁煙指導の全額を健康保険組合が補助することになっています。また、非喫煙者登録で2000ポイント、社内外の喫煙者に対する声掛けで最大3000ポイント、禁煙成功で3000ポイントなどといったように、喫煙者の禁煙を応援する非喫煙者と、禁煙治療に取り組む社員に健康ポイントを付与する取り組みも行っています。健康ポイントは、何らかの景品と引き換えることができるものです。

 喫煙者は当社の全社員のうち3.5%ですので、人数にすると約160人になります。逆に言えば、4,500人以上の社員には禁煙治療は関係のない話になってしまいます。このような制度を設けることで、喫煙者と非喫煙者が一丸となって禁煙に取り組み、社内の禁煙カルチャーを醸成していくことができると思っています。

ファイザー株式会社 労政グループ 田形敏郎氏(特定社会保険労務士)

ファイザー株式会社 労政グループ 田形敏郎氏

透明性のある就業規則がカギ

2011年には、就業規則で就業時間中の禁煙を規定されました。就業規則の改定に至った理由について教えてください。

 3つあげられます。1つ目は、人々の健康に貢献する製薬企業としての使命を全うし、社会的規範を守るためです。2つ目は、社員と家族の健康維持や、受動喫煙の防止につなげるためです。3つ目は、ファイザーは禁煙補助薬を販売する企業であるためです。

就業規則の改定に対して社内からの反発はなかったのでしょうか。

 たしかに、突然ドラスティックに行ってしまうと反発が起きたかもしれません。しかし当社では、禁煙支援薬の販売を機に名古屋工場で2006年から敷地内禁煙を開始するなど、各所が旗を振りながら禁煙を推進していくカルチャーができていました。また、健康関連産業の従業員として禁煙したいと考えている人が多くいたこともあり、比較的自然にスタートできたと思っています。

喫煙ルール違反時は、就業規則に定める社内委員会において社員のペナルティが決定されるとのことですが、具体的に教えていただけますか。

 詳細はお答えできませんが、社員に対してはどういう行動をしたらどういうペナルティを受けるかということを、あらかじめできるだけクリアに説明しています。何らかの違反がありペナルティを課さざるを得なくなった場合には、透明性を持ったきちんとしたプロセスを経て適切なペナルティが下されます。また、「こんなことでペナルティを受けるとは知らなかった」という事例が起きないように、社内サイトや様々なツール、上司と部下とのコミュニケーションなどを通して社内への周知と理解を徹底しています。

事前の説明や処分の透明性は、こうした禁煙の取り組みを進めるうえでは非常に重要ですね。

 そうですね。処罰することが目的なのではなく、禁煙に対して会社が臨む姿勢を明確にしておくためにルールを定めているという意味合いが強いです。私たちが喫煙者ゼロ最終宣言で大事だと思っていることは、「喫煙を止めましょう」と呼びかけるだけではなく、「なぜ止めるべきなのか」といった理由までをしっかりと伝えていることです。社会的規範の順守や本人や家族の健康増進など禁煙の目的を明確にすることで、当社としては「だから、タバコは止めたほうがいいよね」という考えをベースに禁煙の取り組みを進めることができています。そうした考えは、社員にもカルチャーとして浸透していると思っています。

(取材・構成・写真:BUSINESS LAWYERS編集部/文:周藤瞳美)

連載「職場の受動喫煙対策」。第7回では引き続きファイザー株式会社 労政グループの田形敏郎氏に、社内禁煙化を進める際の実務上のポイントを伺います。

  1. 薬局やドラッグストアなどで医師の処方せんなしで購入できる医薬品 ↩︎

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