QRコード決済とクレジットカード番号等取扱契約締結事業者としての登録の要否 経済産業省の2018年11月7日付法令適用事前確認手続の回答の検討

ファイナンス
前田 竣弁護士 弁護士法人片岡総合法律事務所

目次

  1. 「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録義務
    1. 割賦販売法35条の17の2第1号に基づき登録が必要となる場合
    2. 割賦販売法35条の17の2第2号に基づき登録が必要となる場合
  2. QRコード決済の加盟店契約
    1. QRコード決済が行われる場合の基本的な契約構造
    2. QRコード発行会社が「クレジットカード番号等」の取扱いの最終的決定権限を保有しているか
  3. 2018年11月7日付のノーアクションレターの射程範囲
  4. Case.BにおけるQRコード発行会社が登録を受ける必要性および子加盟店契約の締結に際しての加盟店調査の必要性
    1. マルチアクワイアリングのケースについて
    2. 非対面加盟店契約の追加締結のケースについて
    3. これらを踏まえたCase.Bについての検討
  5. まとめ

 経済産業省から2018年11月7日付で出された法令適用事前確認手続(ノーアクションレター)の回答で、QRコード決済の加盟店獲得の事業を行う場合に、割賦販売法上の「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録(アクワイアラー登録)が必要であることが示されました。本稿では、QRコード決済の加盟店獲得事業であれば、すべからく当該登録を受けなければならないのかについて解説します。

「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録義務

 いかなる場合に「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」としての登録を受けなければならないかについては、割賦販売法35条の17の2第1号および第2号に規定があります。

割賦販売法35条の17の2第1号に基づき登録が必要となる場合

 自ら利用者に対してクレジットカード番号等を交付または付与している事業者(「包括信用購入あっせん業者」または「二月払購入あっせん業者」)が、当該クレジットカード番号等での決済を可能とすることを内容とする加盟店契約の締結のみを行う場合、すなわち、クレジットカード番号等に関するいわゆる「オンアス」の加盟店契約の締結のみを行う場合には、第1号に基づき登録が必要となります(図1)。

クレジット番号等に関するいわゆる「オンアス」の加盟店契約の締結のみを行う場合

割賦販売法35条の17の2第2号に基づき登録が必要となる場合

 他者が利用者に対して交付または付与したクレジットカード番号等での決済を可能とする加盟店契約の締結を行う場合、すなわちクレジットカード番号等に関するいわゆる「オフアス」の加盟店契約の締結をする場合(図2)や、「オンアス」「オフアス」を問わず、決済代行業者として最終的決定権限を保有して決済スキームに関与する場合(図3)には、第2号に基づき登録が必要となります。

クレジットカード番号等に関するいわゆる「オフアス」の加盟店契約の締結をする場合

「オンアス」「オフアス」を問わず、決済代行業者として最終的決定権限を保有して決済スキームに関与する場合

QRコード決済の加盟店契約

QRコード決済が行われる場合の基本的な契約構造

 一口にQRコード決済といっても、その内実は多種多様です。
 QRコードを読み取ることによって、チャージ済みの前払式支払手段(資金決済法3条1項)による決済を可能とするサービスの場合(図4)、当該決済手段の利用を可能ならしめる加盟店契約は、「クレジットカード番号等」での決済を可能とする契約ではないため「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録は不要です。

QRコード決済(チャージ済みの前払式支払手段による決済)

 他方、QRコードを読み取ることによって、あらかじめ登録したクレジットカードでの決済を可能とする決済手段である場合(図5)1、当該QRコード決済の利用を可能とする契約(図5中の子加盟店契約)の締結・終了に関し、QRコード発行会社が最終的決定権限を保有するときには、当該QRコード発行会社が「クレジットカード番号等」の取扱いについての最終的決定権限があるとして「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録を受けることが必要となる場合があり得ると考えられます。

QRコード決済(あらかじめ登録したクレジットカードでの決済)

 では、常に登録が必要となるのでしょうか。また、子加盟店契約の締結に際しては常に加盟店調査(割賦販売法35条の17の8)の実施が必要となるのでしょうか。
 この点に関し、以下のCase.AとCase.Bの2つのケースに分けて考えてみたいと思います。

Case.A:QRコード発行会社との子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結によって、初めてクレジットカードによる決済が可能となるケース

Case.B:QRコード発行会社との契約の締結に先立って、すでに当該加盟店がアクワイアラー(以下「ACQ」といいます)との間でのクレジットカード番号等についての取扱契約(=加盟店契約)を締結済みである場合において、QRコード発行会社との子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結により、QRコードを介し、当該ACQ経由でのクレジットカード決済が可能となるケース

QRコード発行会社が「クレジットカード番号等」の取扱いの最終的決定権限を保有しているか

(1)Case.Aについて

 このようなケースにおいては、QRコード発行会社との契約締結によって、はじめて当該加盟店においてQRコードという形式を通してであれ「クレジットカード番号等」による決済が可能となる以上は、当該QRコード発行会社が子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結についての最終的決定権限を保有しているかぎり、これを通じて「クレジットカード番号等」の取扱いを販売店に対し認めることについての最終的決定権限を保有しているとの評価に疑義はないと思われます。

(2)Case.Bについて

 このようなケースにおいては、QRコード発行会社との子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結前から加盟店においては「クレジットカード番号等」による決済が可能であり、子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結は、QRコード形式でのクレジットカード決済を可能ならしめるにすぎないとも考えられるため、QRコード発行会社が子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結についての最終的決定権限を保有していることのみをもって「クレジットカード番号等の取扱いを認めること」についての最終的決定権限を保有しているとの評価がなされるかは、なお議論の余地が存するように思われます。

2018年11月7日付のノーアクションレターの射程範囲

 上記のCase.Bについての検討を行うにあたっては、経済産業省 商務情報政策局 商取引監督課長による2018年11月7日付の法令適用事前確認手続への回答通知書(以下「本件ノーアクションレター」といいます)の射程範囲を検討することが必要となると考えられます。

 本件ノーアクションレターにおける照会の前提となる事実関係を図示すると図6のようになると思われます(2018年10月16日付の法令適用事前確認手続 照会書によります)。

ノーアクションレター(2018年11月7日付)の事案

 本件ノーアクションレターにおいて明言はされていないものの、特段の前提がおかれていないことから、図6中の照会者は、図6に現れる関係者との関係において、いまだクレジットカード加盟店となっていない販売業者を対象として加盟店獲得業務を行い、当該販売業者においては、照会者との加盟店契約(孫)の締結によってはじめて、QRコードを介してクレジットカードの利用が可能となるケース(すなわち上記Case.A)を念頭においた判断が行われたものと解するべきでしょう。

 以上より、Case.Bについての当局の見解は、本件ノーアクションレターによっては、必ずしも明らかにされていないと考えるべきであると思われます。

Case.BにおけるQRコード発行会社が登録を受ける必要性および子加盟店契約の締結に際しての加盟店調査の必要性

 では、Case.B(図5参照)におけるQRコード発行会社が登録を受ける必要性および子加盟店契約(QRコード加盟店契約)の締結に際しての加盟店調査(割賦販売法35条の17の8)の必要性についてはどのように考えるべきでしょうか。
 これについて考えるに際しては、①1つの加盟店との間で複数のACQが加盟店契約を締結する場合(マルチアクワイアリング)の話(図7)、および、②ACQが対面加盟店契約を結んでいる加盟店との間で追加的に非対面加盟店契約を締結する場合の話(図8)との対比をしつつ検証するのが有意義であると思われます。

マルチアクワイアリングのケースについて

 ACQのA社とすでに加盟店契約①を締結している加盟店が新たにB社とも加盟店契約②を締結する場合について、加盟店目線で見るとすでにクレジットカード加盟店となっている以上、B社との加盟店契約②の締結に際して、重ねての加盟店調査を受ける必要性はないようにも思われます。しかし、B社との加盟店契約②の締結によって、A社を経由せず(すなわち加盟店契約①において決済処理が行われる経路を経ることなく)、新たにB社経由でクレジットカード取引が可能となる契約関係が成立する以上、B社との加盟店契約②の締結については、加盟店契約①とは切り離して、その締結に際しても加盟店調査の実施は必要であり、B社は「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」としての登録を受けることが必要であると解されています。

1つの加盟店との間で複数のACQが加盟店契約を締結する場合(マルチアクワイアリング)

非対面加盟店契約の追加締結のケースについて

 ACQのA社と対面販売に関する加盟店契約を締結している加盟店が当該A社との間で重ねて非対面販売に関する加盟店契約を追加的に締結する場合については、A社においてはすでに当該加盟店についての調査は実施済みであり、非対面用の加盟店契約の締結により、当該加盟店における包括信用購入あっせんの方法によって行う取引の種類が追加されるのみであるため、新たに新規の加盟店調査を実施することまでは必要なく、当該加盟店において行われる取引の種類が追加された旨の調査をし、把握をすることのみで足りると考えられます。

ACQが対面加盟店契約を結んでいる加盟店との間で追加的に非対面加盟店契約を締結する場合

これらを踏まえたCase.Bについての検討

(1)マルチアクワイアリングとの比較  

 Case.B(図5を参照)については、図5中のACQとは異なる主体であるQRコード発行会社経由でのQRコードを介したクレジットカード決済の取扱いを可能としている点ではマルチアクワイアリングのケースと類似すると考えられます。
しかし、Case.B はQRコード決済の際にも、金銭および情報の流通・伝達について最終的には常にACQを経由します。この点で、加盟店契約②に基づくB社経由での決済処理が行われる場合にA社を経由しなくなるというケース(図7)とは異なると考えられます。
 したがって、マルチアクワイアリングのケース(図7)においてB社に「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録が必要であり、B社・加盟店間における加盟店契約②の締結に際し加盟店調査が必要であるとされているからといって、必ずしもCase.BのQRコード発行会社が加盟店とQRコード加盟店契約を締結する場合について同様に考える必要性はないものと考えられます。

(2)非対面加盟店契約の追加締結との比較

 Case.B(図5を参照)におけるQRコード発行会社と加盟店との間の契約は、加盟店に対してカード券面を用いたクレジットカード決済のみならず、QRコード決済という方式での信用販売を可能ならしめることを内容とする契約の締結であると解されます。この点、対面販売のみの取扱いが認められていた加盟店に対して非対面販売でのクレジットカードの取扱いをも追加的に認めることを内容とする非対面用の加盟店契約の追加締結のケース(図8)と類似すると考えられます。

 他方、加盟店に対して取扱方法の追加を認める主体が、非対面用加盟店契約の追加のケース(図8)ではA社であり、既存の対面用加盟店契約の締結主体と同一であるのに対し、Case.B(図5)では既存の加盟店契約の締結主体であるACQとは異なるQRコード発行会社が追加契約の締結主体だという点が違います。

 しかしながら、QRコードの取扱いを認めることを内容とする契約の締結主体が、既存の加盟店契約の締結主体たるACQとは異なるとしても、当該QRコードを通じた決済による金銭・情報の流通・伝達が当該ACQを通じて行われることが担保されているかぎり、非対面加盟店契約の追加締結の場合(図8)と同視して、QRコード発行会社がQRコード加盟店契約の締結についての最終的決定権限を保有しているとしても「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の登録を受ける必要はなく、かつ当該契約の締結に際して、固有の法定の加盟店調査(割賦販売法35条の17の8)を実施することまでは必要ないと考える余地もあり得るのではないかと思われます 2

まとめ

 以上より、前述のごとく本件ノーアクションレターにおいては、Case.Bのような事案についてまでの言及はされておらず、本件ノーアクションレターの射程外の問題となると考えられます。そして、今後Case.Bについては、上記4-3のように考える余地も存すると思われることから、実務上Case.Bのような事案についての割賦販売法対応についての整理を行うにあたっては、同法の適用関係について事案の特殊性を踏まえた検討を実施することが必要となってくるでしょう。

(※)なお、本稿中における意見にわたる記載は、筆者の個人的な見解であり、筆者が現に所属する団体および過去所属した団体における見解を示すものではありません。


  1. このケースについては、実務上、カード会社(ISS(イシュアー)およびACQ(アクワイアラー))とQRコード発行会社が異なる例が多く見られるため、カード会社とQRコード発行会社が異なる例を取り上げて図解します。 ↩︎

  2. ただし、規制の潜脱と解されるような不当な事実関係等が存する場合は除きます。 ↩︎

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