ファイナンス法の基礎

第4回 アセット・マネジメントとは? 資産運用と投資の世界

ファイナンス

目次

  1. 投資ファンドとアセット・マネジメント・ビジネス
    1. 投資ファンドとは?
    2. 投資ファンドとファンド・マネージャー
    3. 投資ファンドとアセット・マネジメント・ビジネス
  2. 投資ファンドの種類と分類
    1. 経済的機能(投資目的)からの分類
    2. 法形式からの分類
  3. 投資ファンドの実務
    1. 外国籍の投資ファンド
    2. ファンド・オブ・ファンズ
    3. オープンエンドとクローズエンド
    4. 投資ファンドの運用方針
  4. 投資ファンドと金融規制
    1. ファンド・マネージャーに対する金融規制
    2. ファンドに対する金融規制

※本連載は、「ファイナンス法- 金融法の基礎と先端金融取引のエッセンス」(商事法務、2016)のダイジェスト版です。本文中、「本書」とはこちらの書籍のことを指します。

投資ファンドとアセット・マネジメント・ビジネス

投資ファンドとは?

 投資ファンドとは、投資家から資金を集め、集めた資金を企業などに投資し、投資先から受ける配当や投資対象の売却益を投資家に還元するファンドやそのファンド・マネージャーをいう。より具体的には、投資ファンドは、企業の株式を含む各種金融商品や不動産など、各種リスクを伴う投資対象に対する投資を専門的に行う。

投資ファンドとファンド・マネージャー

 投資ファンドは、ファンド・マネージャーが投資判断を行う運用型ファンド(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)である場合が多い。投資ファンドにおいて、ファンド・マネージャーと投資ファンドは、各種金融仲介機能最終資金調達者と最終資金提供者の間の資金の融通を仲介する機能)を不可分一体となって投資家に提供している。
 すなわち、アンバンドリング(参照:「第1回 ファイナンス法とは? - ファイナンスと法とのコラボレーション」)が進んだ現在では、伝統的には金融機関が一括して提供してきた各種金融仲介機能が分解され、(ⅰ)ファンド・マネージャーは、投資先に対する信用リスク負担機能(最終資金調達者の信用リスクを自ら負担する機能)を(SPV経由で)投資家に移転し、自らはアセット・マネジメントに関する情報生産機能(資金調達者の信用リスクや経営状況にかかわる分析・判断・監視を行うことを提供する機能)のみを提供している(フィービジネス)。
 他方、(ⅱ)投資ファンドは、金融仲介機能のうち、投資先に対する資金提供機能や、投資先と投資家の間における資産変換機能(ある資産の経済的価値を維持したまま、法形式としては別の資産に変換する機能)を提供している。投資ファンドにおいては、ファンド・マネージャーと投資ファンドが一体となってこれらの金融仲介機能を投資家に提供している。

投資ファンドとアセット・マネジメント・ビジネス

 アセット・マネジメントとは、情報生産機能を利用して各種資産の管理や運用を行い、資産価値を高めたり利益の最大化を図ったりする業務をいう。投資家や資産の所有者に代わってアセット・マネジメントを行うフィービジネスアセット・マネジメント・ビジネス(またはインベストメント・マネジメント・ビジネス)という。アセット・マネジメント・ビジネスは、アンバンドリングによりリスク負担機能と情報生産機能が分解したことにより大きく発展したフィービジネスである。

投資ファンドの種類と分類

 投資ファンドには様々な種類があり、その分類方法も様々であるが、以下では投資対象や目的に基づく分類に従い代表的な投資ファンドを採り上げる。

経済的機能(投資目的)からの分類

(1)ヘッジファンド

 ヘッジファンドとは、①私募など制約要因の少ない形式で組成することにより、(財務)レバレッジを活用するなど自由裁量の下で投資を行い、②金融工学的な投資戦略を活用しながら、流動性の高い資産に対する投資を行い、絶対的な収益を追求し、③その対価としてファンド・マネージャーが成功報酬を徴収するファンドをいう。

(2)プライベート・エクイティ・ファンド

 プライベート・エクイティ・ファンドPEファンド)とは、未上場の株式(プライベート・エクイティ)に対する投資を専門的に行うファンドをいう。PEファンドには、①ベンチャーキャピタル・ファンド創業期・初期段階にある未上場のベンチャー企業に投資を行うPEファンド)、②バイアウト・ファンド成長段階以降にある企業に投資を行うPEファンド)や③事業再生ファンド経営困難な状態にある企業に投資を行うPEファンド)がある。

(3)アクティビスト・ファンド

 アクティビスト・ファンドは、主に上場企業の株式を数%~数十%取得し、大株主としての発言力を活用して、配当増額や役員交代などの株主提案を行う、いわゆる「もの言う株主」をいう。

(4)不良債権投資ファンド

 不良債権投資ファンドとは、デフォルトリスクのある不良債権に投資を行うファンドをいう。別名をディストレスト・ファンドともいう。

(5)不動産ファンド

 不動産ファンドとは、不動産を取得・開発し、不動産の賃料や売却益などにより利益を獲得するファンドをいう。不動産ファンドには、①公募ファンド不特定多数の投資家から投資を受けるファンド)である上場REIT(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)と、②私募ファンド特定少数の投資家からのみ投資を受けるファンド)であるTMK(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)やいわゆるGK-TKスキーム合同会社と匿名組合出資を組み合わせた不動産投資スキーム)がある。

法形式からの分類

 国内投資ファンドの法形式には、会社型信託型組合型があるが(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)、ここでは実務的に利用頻度の高い投信法上のファンド広義の投資信託)の説明を行う。広義の投資信託は、(i)信託型(契約型)投資信託狭義の投資信託)と(ii)会社型投資法人に分かれる。また、投資信託は、誰がファンドの運用を行うかにより、①委託者指図型投資信託委託者である投資信託委託会社の指図に基づいて信託財産を運用する投資信託)と②委託者非指図型投資信託委託者の指図に基づかずに受託者が信託財産を運用する投資信託)に分かれる。

 委託者指図型投資信託は、投資対象により、証券投資信託主として有価証券、不動産その他政令で定める資産(特定資産)に対する投資を行う投資信託)と証券投資信託以外の投資信託有価証券を除く特定資産に対する投資を行う投資信託)に分かれる。委託者非指図型投資信託は証券投資信託以外の投資信託となる。投資法人は、投資対象により、証券投資法人不動産投資法人(REIT)などに分かれる。

以上を示したものが【図4-1】である。

【図4-1 :投資信託の種類】

(出典)経済法令研究会編『四訂 信託の基礎』(経済法令研究会、2012)の図をもとに筆者が作成

投資ファンドの実務

外国籍の投資ファンド

 外国法を準拠として外国で設立・運用される外国籍の投資ファンドにも、会社型、信託型、契約型が存在する。外国籍の投資ファンドの代表例としては、信託型ファンドであるユニット・トラストなどがある。外国における組合は、一般的にパートナーシップと呼ばれる。

ファンド・オブ・ファンズ

 ファンド・オブ・ファンズ(FOF)とは、株式や債券等に直接投資を行うのではなく、それらに投資を行っている別のファンドに対して投資を行うファンドをいう。異なる資産に対する投資を行う複数のファンドに投資することにより、分散投資を実現するものである。

オープンエンドとクローズエンド

 オープンエンド(型ファンド)とは、投資家によるファンド持分の解約・払い戻しを自由に認めるものをいう。クローズドエンド(型ファンド)とは、かかる解約・払い戻しを自由に認めないものをいう。

投資ファンドの運用方針

 投資ファンドの運用方針には、マーケット・ポートフォリオの期待収益率(ベンチマーク)と等しい収益率を目指すパッシブ運用や、ベンチマーク以上の期待収益率を目指すアクティブ運用などがある。投資対象となるポートフォリオのパフォーマンス評価にあたっては、リターン(期待収益率)リスク(分散や標準偏差)のバランスが考慮される。証券のリスクを表す指標としては、CAPMにおけるベータ(β)などが存在する。

投資ファンドと金融規制

 アセット・マネジメント・ビジネスでは、投資家が投資先の信用リスク市場リスクを引き受けることになるため、金融規制の適用を受ける場合が多い

ファンド・マネージャーに対する金融規制

 ファンド・マネージャーアセット・マネージャーは、金融規制を受ける金融機関である場合が多い。このような金融機関としては、金融商品取引法(金商法)上の投資運用業者投資助言業者、信託業法上の信託会社や兼営法上の信託銀行、保険業法上の保険会社などがあげられる(詳細は連載第5回で解説)。
 上記のような業規制に加え、ファンド・マネージャーやアセット・マネージャーは、インサイダー取引規制利益相反規制など、各種の行為規制にも従う必要がある(詳細は連載第5回で解説)。

ファンドに対する金融規制

(1)特別法上のファンド規制

 投資家保護のための制度(金融規制)を含むファンドに関する特別法には、(i)会社型または信託型のファンドに関する特別法と、(ii)組合型のファンドに関する特別法がある。前者((i))には、流動化型ファンドに適用される資産の流動化に関する法律(SPC法)、運用型ファンドに適用される投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)などがある(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)。例えば、投資信託やTMKについては届出、REITについては届出と登録が必要とされる。外国籍の投資ファンドの場合、これらが投資信託や投資法人に類するものである場合には届出が必要となる。後者((ii))には、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)、有限責任事業組合契約に関する法律(LLP法)、不動産特定共同事業法(不特法)などがある。

(2)金商法上のファンド規制

 集団投資スキーム(参照:「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)のエクイティ投資においては、十分な情報提供がないまま投資勧誘が行われるリスク、投資対象の毀損や価格の下落により損害を受けるリスク、ファンド・マネージャーの運用能力の欠如により損害を受けるリスクなど、各種リスクを伴う。このため、各種法令においては、集団投資スキームにおけるエクイティ投資家を保護するため、ファンド自身(自己)により行われる(ⅰ)投資家に対する投資の勧誘や(ⅱ)投資家から集めた資金の運用などにつき法規制が行われている。かかる規制の代表例としては、金商法上の(i)自己募集規制と(ii)自己運用規制がある。

(ⅰ)自己募集規制

 ファンドSPVがファンド投資家に対してファンド(持分)の投資(出資)を勧誘する場合、金商法上の自己募集業に該当し、原則として第二種金融商品取引業の登録が必要となる(詳細は連載第5回で解説)。

(ⅱ)自己運用規制

 ファンド投資家からの投資(出資)を利用(運用)し、主として有価証券やデリバティブ取引に対する投資を行う場合、金商法上の自己運用業に該当し、原則として投資運用業の登録が必要となる(詳細は連載第5回で解説)。

 実務上は、金商法上認められている各種適用除外を利用し、上記各登録を行うことなく自己募集や自己運用が行われることも多い。かかる適用除外の代表例が適格機関投資家等特例業務QII等特例業務)である。QII等特例業務においては、適格機関投資家1名以上と少人数(49名以下)の適格機関投資家以外の投資家(本書において一般投資家という)から投資を受けたファンドの場合、届出のみで自己募集や自己運用を行うことができる。以上をまとめたのが【図4-2】である。

【図4-2:集団投資スキーム規制とQⅠⅠ等特例業務】

注1)本図は、【図3-2】(「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは? - ファンド / SPVを利用した資金調達」)と同じものをベースに作成している
注2)金融庁への届出が必要
注3)適格機関投資家が1名以上必要
注4)適格機関投資家以外の投資家が49名以下である必要あり
注5)「主として」(=50%超)有価証券に投資する場合

 なお、外国の集団投資スキームに対しては、基本的に上記と同様の集団投資スキーム規制が課される。

 以上、アセット・マネジメントについて説明を行った。次回は、金融規制法について説明を行う予定である。

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する