BUSINESS LAWYERS LIBRARYにより、テレワーク下でもリサーチ業務の信頼性担保を実現 日本たばこ産業(JT)のBUSINESS LAWYERS LIBRARY導入・活用例
法務部 公開 更新
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130以上の国と地域でたばこ事業を展開し、医薬、加工食品事業なども行っている日本たばこ産業株式会社(JT)。同社の法務部門では、テレワークへの対応策として、法律書籍のオンライン閲覧サービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」を導入しているほか、多くのテクノロジーを積極的に導入・活用し、業務効率化を進めています。
同社でたばこ事業の法務業務を担当する稲村誠氏、太田皓士氏に、テクノロジーによる業務改善に取り組む背景や実践方法、「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」の活用効果について伺いました。
テレワークでも信頼できる書籍・情報にすぐにアクセスできる環境を整備
貴社の法務部門の体制を伺えますか。
太田氏:
当社の法務は、コーポレート業務等を担当する部門と、我々が所属している国内たばこ事業関連を担当する部門とに分かれています。人数は両部門を合わせて30名弱で、我々のチームは8名です。年代的には30歳前後のメンバーが多いですね。
稲村氏:
5、6年前までは法務部門は本社に1つという体制でしたが、より現場に則した業務を行うためにたばこ事業のチームが分離・独立した形です。たばこ事業のチームは、インハウスロイヤーを積極的に採用してきており、現在は弁護士資格を持つメンバーがマジョリティになっています。
たばこ事業を担当するチームではどのような業務を行われていますか。
太田氏:
業界特有の規制や景表法が関係することが比較的多いですが、国内たばこ事業に関連する案件全般を担当しているので幅広い法律がかかわってきますし、海外との取引を取り扱うこともあります。私自身の業務としては、個人情報保護法や廃棄物処理法などを取り扱うことも多いです。
稲村氏:
従業員の不正や不祥事、コンプライアンス等の案件も扱っているので、他の会社ではチームで分かれて担当するような領域を1チームで見ているようなイメージです。
法務部門におけるテクノロジーの活用状況について教えてください。
太田氏:
案件の管理や法律相談、契約書レビューのやり取りなどのシステムは、kintoneを利用して構築しています。案件の検索からナレッジの蓄積、コミュニケーションまでがシステム上で完結できるようになっています。そのほか、契約審査にはAIレビューツールを使っており、英文を扱ううえではAI自動翻訳サービスも活用しています。また、リーガルリサーチには判例検索サービスやBUSINESS LAWYERS LIBRARYなどを導入しており、テレワーク環境下でも信頼できる書籍・情報にすぐにアクセスできるような環境を整えています。
リーガルリサーチは主にどのような場面で行われることが多いですか。
太田氏:
リサーチ業務を行うのは、契約審査や新たな施策、トラブル案件など、法務部門に何らかの相談が寄せられたときが多いです。未知の問題について解決の糸口を探すためには、まずはインターネットで検索することが多いです。インターネット上の情報の質は千差万別ですが、まずとっかかりとなる情報を得るためにはインターネット検索が有用です。そのうえで、当局のガイドラインや公式な資料、関係する法律の書籍などにあたってリサーチをさらに発展させていくという流れです。
リーガルリサーチにはどれくらいの時間をかけていますか。
稲村氏:
「その案件で問題が生じたら会社にとってどの程度インパクトがあるか」をまずイメージしたうえで、想定されるインパクトの大きさに応じてリサーチに割くべき時間や労力を決めています。たとえば、取引額が比較的小さいなど、何か問題が生じたとしても事後的な対処が十分可能な案件と、事業継続自体に重大な影響を及ぼしかねない規模の取引や規制が絡む案件とでは割くべき時間や労力がおのずと異なってきます。特に後者の場合には、自分たちで時間をかけてリサーチすることに加えて、信頼できる外部の専門家から意見をもらうことも多いですね。
半年間の利用による検証を経てBUSINESS LAWYERS LIBRARYを導入
BUSINESS LAWYERS LIBRARYを活用いただいていますが、導入以前はリサーチ業務にどのような課題を感じていましたか。
太田氏:
コロナ禍によってテレワークが主流になったことによる影響もありました。テレワークの制度自体はもともとありましたが、コロナ禍以前は基本的には全員が出社していたため、本棚に行けば必要な書籍にアクセスすることができました。しかし、テレワークがメインになり、必要な書籍にアクセスしづらい状況が生じたことなどから、法律書籍のオンライン閲覧サービスの活用が急務となりました。
サービスはどのような基準で選定されましたか。
太田氏:
一番重要なことは、業務に役立つ書籍がどれだけあるのかという点です。BUSINESS LAWYERS LIBRARYの導入前に他社サービスを試験導入していましたが、まだ1つのサービスを導入すれば十分とまではいかず、もう少しオンライン上で閲覧できる書籍の数を増やしたいと考えていました。BUSINESS LAWYERS LIBRARYは雑誌のラインナップが充実しており、新しい知見に触れやすいところが大きな特長だと思います。
ジュリスト、法学教室、ビジネス法務、会社法務A2Z、BUSINESS LAW JOURNAL、税経通信といった法律雑誌も閲覧可能
稲村氏:
こうしたサービスは、新しい書籍が自動的にラインナップされていくことも魅力ですね。新刊や改訂版が出ているかどうかを自分で毎日調べてフォローしていくのには限界があります。書籍のラインナップがさらに拡充され、改訂版への切り替えも早くなれば、そうした労力を本業に回すことが出来るという点で、メリットはより大きくなるように思います。
導入を進めるうえでのハードルなどはありましたか。
稲村氏:
会社全体としてテクノロジーの活用に積極的なこともあり、正直なところ、そこまで障害はなかったと感じています。ただ、やはりサービスを導入するうえでは、他社の事例や評判、具体的な効果について調べておくことは重要です。そのうえで、まずは試験的に導入し、一定期間利用して効果を検証した後に、本導入するかどうかを議論していくという流れが良いと考えています。BUSINESS LAWYERS LIBRARYも半年間利用しながら検証しました。
太田氏:
サービスの導入にあたっては使ってみないとわからない部分も多いです。使ってみたうえで、実際にチームメンバーの日々の業務に役立った文献がどれだけあったのか、どれだけ利用されているのかといったことや、チームメンバーの感想を集めるなどして本当に有用かどうかを調べるということも必要になると思います。
紙の書籍に比べて幅広い書籍でのリサーチが可能
BUSINESS LAWYERS LIBRARYの利用シーンについて教えてください。
太田氏:
リサーチの中盤から終盤に使うことが多いです。ある程度調査が進み、キーワードがわかってきたところで、BUSINESS LAWYERS LIBRARYを含めた書籍でのリサーチに移っていきます。
紙の書籍では、まずアクセスする定番の文献が決まっていることも多いですが、BUSINESS LAWYERS LIBRARYでは検索によって思いもよらなかった書籍と出会えることがあります。紙の書籍によるリサーチよりも幅広い関連書籍にあたりやすいことは、大きなメリットだと感じています。
書籍の「タイトル検索」により、検索結果を一覧で表示できる
コンメンタールが収録されている点もよいですね 1。こういった書籍は場所も取りますし、全員が自宅に一式持つというわけにもなかなかいかないので役立っています。
また、当社では複数アカウントを契約しているので、該当文献のリンクを貼るだけで他のメンバーに簡単に情報を共有できています。
ページURL共有機能によって、閲覧中のページを簡単に共有できる
そのほか、「論点検索」機能のβ版も利用できますが、今後この機能が拡張されていくと、新しい検索方法の1つとして有用なものになると感じています2。
検索結果の一覧から書籍を選ぶ際は、参照する書籍をどのように決めていますか。
太田氏:
書名や著者名に加えて、検索結果の一覧に表示される検索キーワード前後の記載内容を加味して選んでいます(下図参照)。紙の書籍と違ってクリックすれば該当ページが開かれるので、まずはあまり吟味をせずに幅広く開き、前後の内容をパッと見て、詳しく閲覧する書籍を決めることも多いです。その際は、右クリックから「新しいタブで開く」を選択し(ブラウザによりCtrl+左クリックやcommand+左クリックなどでも操作できます)、検索結果の一覧は開いたまま別のタブに書籍を開くことで、複数の書籍を見比べています。
クリックすることで書籍内の当該ページへ遷移することができる
BUSINESS LAWYERS LIBRARYの導入効果についてはどのように感じられていますか。
稲村氏:
このサービスがなければテレワークへ対応できず、業務が停滞したか、もしくは質が低下していたと思います。BUSINESS LAWYERS LIBRARYがあることで、リサーチできる範囲が広がり、自信をもって業務が継続できています。
コロナ禍の以前と以後で、業務を取り巻く状況が比較できないほど変わっています。そのため、以前と比べてどれだけ効率化したかよりも、このサービスがあったからこそできるようになったことという観点から導入効果を捉えています。
テクノロジーを活用し、“人間臭い” 仕事に注力していく
今後、テクノロジーを使ってどのように業務の改善・効率化に取り組んでいきたいとお考えですか。
太田氏:
ナレッジの蓄積はシステムで行えるようになってきているので、今度はそれをより活用しやすいように整備していくことが重要になると思っています。ナレッジが溜まっていくということには、必要な情報にたどり着きづらくなってしまうという側面もあります。必要な情報により簡単にアクセスできるようナレッジが整理しやすく、さらに使える知見として共有しやすいシステムづくりを行うことで、業務効率化を図っていきたいですね。
たとえば、BUSINESS LAWYERS LIBRARYとkintoneとを組み合わせれば、過去の案件に回答した際に参考にした書籍にも即座にアクセスでき、類似案件や派生案件を検討する際により効率的に業務を行えるようになります。導入している複数のシステムをさらに連携の取りやすい形で使えるようにもしていきたいと考えています。
稲村氏:
省いたほうが他の仕事の質が上がる業務であれば、そこにテクノロジーをどんどん活用していきます。それは法務に限らず、どの部門の仕事も同じでしょう。省けるものを省いて、自分たちの付加価値を出せる領域に力をシフトさせていかなければなりません。個人のキャリアを考えても、この先ずっと必要とされる人材でいるためには、誰がやってもできるような業務はなるべく省き、置き換えが不可能な業務に注力していく必要があると思います。
テクノロジーによって業務効率化を実現した先に、より注力していくべき仕事はどのようなものだとお考えですか。
稲村氏:
我々のチームへの相談では、適法か違法かという判断だけで話が済むようなケースはほぼありません。参考となる先例が十分にないなどの事情で法令解釈にグレーな部分が残る場合でも、客観的な法的分析のみで終わることはなく、「そのうえで会社としてやるべきかどうか」というところまで踏み込んだ意見が求められます。そこでたとえば「違法とまでは言えないが、当社として実施すべきではない」という意見を現場の人たちに納得してもらうためには、普段からどれだけ踏み込んだ有用なアドバイスをして、信頼関係が構築できているかが重要になります。
少なくとも企業で働いている以上は、本当に困ったときに相談してもらえるように、まずは普段から気軽に相談してもらえるような関係性をつくっていくことを意識すべきでしょう。企業内の法務にとって重要なことは、どれだけ社内からの信頼を得て仕事をしていけるかです。外部の弁護士の意見だけで足りるのであれば、アウトソースしてしまって良いわけです。
テクノロジーが急速に進化していくなか、法務人材として生き残っていくためには、むしろこうした人間臭い仕事の実力のほうが問われるようになってくるのではないでしょうか。
(写真:弘田 充、文:周藤 瞳美、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)
「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」は、以下の特徴・機能を備えた法律書籍・雑誌の月額閲覧サービスです。
- 1,300冊以上の書籍・雑誌のオンラインでの閲覧(2022年8月現在)
- PCに加え、タブレット・スマートフォンによる書籍・雑誌の閲覧
- タイトル・本文について、キーワードによる書籍・雑誌の横断的な検索
また、本サービスでは法人向けの年間契約プランを提供しています。サービスの詳細はこちらからご確認いただけますので、この機会にぜひ法人プランを活用のうえ、実務にお役立てください。
新型コロナウイルスによる影響が続くなか、「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」が新しい働き方に取り組む法務ご担当者様の一助になれば幸いです。
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BUSINESS LAWYERS LIBRARY コンメンタール収録例
・我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法[第7版] 総則・物権・債権』(日本評論社、2021年)
・松岡久和、松本恒雄、鹿野菜穂子、中井康之『改正債権法コンメンタール』(法律文化社、2020年)
・半田正夫、松田政行『著作権法コンメンタール[第2版]』(勁草書房、2015年)
・稻本洋之助、澤野順彦『コンメンタール借地借家法[第4版]』(日本評論社、2019年)
・西埜章『損失補償法コンメンタール』(勁草書房、2018年)
・大塚正之『臨床実務家のための家族法コンメンタール(民法相続編)』(勁草書房、2017年)
・大塚正之『臨床実務家のための家族法コンメンタール(民法親族編)』(勁草書房、2016年) ↩︎