固定資産税の実務上のポイント(5)- 固定資産の評価額が違法となるのはどのような場合か?(前編)

税務
山田 重則弁護士 鳥飼総合法律事務所

 自治体による固定資産(土地、家屋)の評価額が違法となるのは、どのような場合でしょうか。

 自治体による固定資産(土地、家屋)の評価額が違法となる場合は、以下のように整理することができます。今回は、判断枠組み①と②、そして、評価額が違法となる事例①について解説し、事例②~④については次回、解説します。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 最高裁平成25年7月12日判決の示した判断枠組みとその意義
    1. 最高裁平成25年7月12日判決の示した判断枠組み
    2. 最判平成25年7月12日の意義
  3. 登録価格が違法となる事例①(固定資産評価基準を正しく適用した価格を超える場合)
    1. 土地の場合
    2. 家屋の場合
    3. 実務上の検証ポイント
  4. まとめ

はじめに

 「固定資産税の実務上のポイント(2)‐ 固定資産税の決定プロセスと課税ミスの要因とは?」で解説したとおり、固定資産税の課税ミスの最大の要因は固定資産の評価額の誤りです。

 自治体は固定資産の評価を行い、その評価額を固定資産課税台帳に登録します(地方税法411条)。これを固定資産の「登録価格」といいます。すなわち、固定資産の登録価格は、自治体による固定資産の評価額を意味します
 自治体が固定資産を誤って高く評価し、その登録価格が過大となっている場合には、固定資産税も過大に徴収されます。

 そこで、今回は、どのような場合に自治体の固定資産の登録価格(=評価額)が違法となるのか解説します。

最高裁平成25年7月12日判決の示した判断枠組みとその意義

最高裁平成25年7月12日判決の示した判断枠組み

 最高裁平成25年7月12日判決・判タ1394号124頁(以下「最判平成25年7月12日」といいます)は、自治体の土地の登録価格が違法となる場合の判断枠組みについて、以下のとおり判示しました。

最判平成25年7月12日の示した判断枠組み
…土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格の決定が違法となるのは、当該登録価格が、①当該土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るとき…であるか、あるいは、②これを上回るものではないが、その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合…であって、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るとき…であるということができる。

 最判平成25年7月12日は、土地の登録価格が違法となる場合の判断枠組みについて判示しましたが、これは家屋の登録価格についても妥当すると考えられています。また、その後の裁判においては、最判平成25年7月12日の示した判断枠組みを前提に判断がなされています。

最判平成25年7月12日の意義

(1)固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超える場合には違法となるという点が示されたこと

 最判平成25年7月12日は、自治体の固定資産の登録価格が「評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るとき」は、それが適正な時価を上回るか否かにかかわらず、違法となると判示しました(上記判断枠組み①)。

 自治体は、法律上、固定資産の評価を行う際、総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいてこれを行う必要があります(地方税法403条1項)。したがって、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超える場合に違法となるのは、一見すると当然のことのように思われます。

 しかし、従前は、「自治体の固定資産の登録価格は適正な時価を超えてさえいなければ(固定資産評価基準を適用した価格を超えていたとしても)違法とならない」と解する余地が残されていました。
 現に平成25年最判の原審(東京高裁平成23年10月20日判決・民集67巻6号1304頁)は、「固定資産課税台帳に登録された価格が適正な時価を超えた違法があるかどうかを検討すれば必要かつ十分である」と判示し、登録価格が適正な時価を超えたかどうかのみが審査の対象とされていました。

 最判最判平成25年7月12日は、固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超える場合に違法となるという最高裁の考え方を明確に示した点に意義があります。

(2)固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えない場合の判断枠組みが示されたこと

 最判平成25年7月12日は、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えない場合には、固定資産評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、またはその評価方法では適正な時価を適切に算定することができない特別の事情があり、現に登録価格が適正な時価を超える場合に違法となると判示しました(上記判断枠組み②)。

 固定資産評価基準は適正な時価を算定する方法として「一般的な合理性」を有するため、その評価方法では適正な時価を適切に算定することができない「特別な事情」がない限り、固定資産評価基準を適用した価格は、適正な時価を超えることはないと考えられています。

 すなわち、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えない場合には、通常、適正な時価を超えることはないと考えられます。そのため、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えないにもかかわらず、適正な時価を超えるのは、固定資産評価基準の定める評価方法が当該固定資産の適正な時価を算定する方法として「一般的な合理性」を有するものではないといえる場合か、または、その評価方法では当該固定資産の適正な時価を適切に算定することができない「特別の事情」があるといえる場合といえます。

 このように、最判平成25年7月12日は、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えない場合の判断枠組みを明確に示した点に意義があります。

(3)3つの価格の関係性に言及しつつ、固定資産の登録価格が違法となる場合の判断枠組みが示されたこと

 最判平成25年7月12日によって、自治体の固定資産の登録価格の適正さを検証する際には、まずは、自治体の固定資産の登録価格が固定資産評価基準を適用した価格を超えるかどうかを検討し(判断枠組み①)、超える場合は違法となります

 他方で超えない場合は、固定資産評価基準の定める評価方法が一般的な合理性を有しないか、その評価方法では適正な時価を適切に算定できない特別な事情があるか、また、実際に登録価格が適正な時価を超えたといえるかを検討することとなります(判断枠組み②)。

 最判平成25年7月12日は、「自治体の固定資産の登録価格」、「固定資産評価基準を適用した価格」、「適正な時価」という3つの価格の関係性を明らかにし、固定資産の登録価格が違法となる場合の判断枠組みを明確に示した点にも意義があります。

登録価格が違法となる事例①(固定資産評価基準を正しく適用した価格を超える場合)

 自治体の固定資産の登録価格が、固定資産評価基準を正しく適用した価格を超える場合、先の判断枠組み①により、その価格はただちに違法となります。土地と家屋のそれぞれの固定資産評価基準に言及しつつ、この点を解説します。

土地の場合

 固定資産評価基準は、土地の地目ごとに評価方法を定めていますが、実務上は、市街地を形成する地域の「宅地」(建物を建てるための土地)の評価方法である「市街地宅地評価法」が特に重要です(「固定資産税の実務上のポイント(3)- 土地の評価方法とは? 宅地を中心に」参照)。
 市街地宅地評価法では、以下の①~⑦のプロセスを経て各宅地の価格が算出されます。

市街地宅地評価法のプロセス

(1) 市街地を似たような地域に区分けする

① 市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区等の用途地区に区分する

② 各用途地区をさらに状況類似地域に区分する


(2) 各街路に路線価を付設する

③ 状況類似地域ごとに主要な街路標準宅地を選定する

④ 標準宅地の適正な時価を算出する

⑤ 標準宅地の適正な時価に基づき主要な街路に路線価を付設する

⑥ 主要な街路に比準してその他の街路に路線価を付設する


(3) 各宅地の個別的要因を踏まえて価格(評価額)を算出する

⑦ 「画地計算法」と「所要の補正」を適用して各宅地の価格(評価額)を算出する

 したがって、市街地宅地評価法で評価されている宅地については、上記の①~⑦のプロセスのいずれかに誤りがあり、その結果、自治体の登録価格がこれらのプロセスを適切に行った場合の価格を超えた場合に違法となります

家屋の場合

 固定資産評価基準は、家屋については「再建築価格方式」を採用しています(「固定資産税の実務上のポイント(4)- 固定資産税上の家屋の評価方法は?」参照)。
 再建築価格方式の全体像は以下のとおりです。

再建築価格方式の全体像
家屋の評価額=(1)評点数 × (2)評点1点当たりの価額
(1)評点数=①再建築費評点数 × ②損耗の状況による減点補正率 × ③需給事情による減点補正率
(2)評点1点当たりの価額=1円 × ④物価水準による補正率 × ⑤設計管理費等による補正率

 したがって、家屋については、上記①~⑤の数値のいずれかに誤りがあり、その結果、自治体の登録価格が正しい数値を用いた場合の価格を超えた場合に違法となります

 実務上、特に問題になるのは、①再建築費評点数と②損耗の状況による減点補正率です。その家屋を初めて評価する場合の①再建築費評点数は、内訳書や各種図面からその家屋に使用されている資材や設備等の種類、数量、使用面積を把握し、これを固定資産評価基準にあてはめることで計算されます。

 もっとも、特に施工費が15億円を超えるような大規模な非木造家屋(鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)の資材や設備等の種類、数量等を正確に把握することは、現実には極めて難しく、自治体が再建築費評点数を誤って過大に計算している事案も散見されます。

 また、②損耗の状況による減点補正率は、建物の構造ごとに異なりますが、自治体が建物の構造(鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)の認定を誤ったために、この補正率の数値を誤った事案も度々報道されています(「固定資産税の実務上のポイント(1)- 課税ミスがあった場合、払いすぎた固定資産税は全額還付されるか?」参照)。

実務上の検証ポイント

 自治体の登録価格が固定資産評価基準を正しく適用した価格を超える場合、その価格はただちに違法となります。実務上は、宅地については、画地計算法、所要の補正に誤りがないかが特に問題となります。また、非木造家屋については、建築当初の再建築費評点数、損耗の状況による減点補正率に誤りがないかが特に問題となります

まとめ

 最判平成25年7月12日は、自治体の固定資産の登録価格が違法となる場合の判断枠組みを明示しました。また、それまで明確とはいえなかった、「自治体の固定資産の登録価格」、「固定資産評価基準を適用した価格」、「適正な時価」という3つの価格の関係性を示した点にも重要な意義があります。
 次回は、自治体の固定資産の登録価格が違法となる事例②~④について解説します。

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