固定資産税の実務上のポイント(4)- 固定資産税上の家屋の評価方法は?

税務
山田 重則弁護士 鳥飼総合法律事務所

 自治体による固定資産の価格に誤りがあると固定資産税の金額も誤っていると聞きました。家屋は固定資産税上、どのように評価されるのでしょうか。

 家屋は、総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいて評価されます。そして、「固定資産評価基準」は、再建築価格方式を採用しています。再建築価格方式とは、評価時においてその家屋を再度、建築したと仮定した場合に通常必要となる建築費を求め、これに建築時からの経過年数、損耗の程度等による減価を考慮して評価を行うものです。

解説

目次

  1. 家屋の評価方法を理解する意味
  2. 家屋の評価方法
    1. 再建築価格方式の概要
    2. 再建築費評点数
    3. 損耗の現況による減点補正率
    4. 需給事情による減点補正率
    5. 物価水準による補正率
    6. 設計管理費等による補正率
  3. まとめ

家屋の評価方法を理解する意味

 「固定資産税の実務上のポイント(2)- 固定資産税の決定プロセスと課税ミスの要因とは?」では、固定資産税の金額は基本的には固定資産の価格に応じて決まることのほか、固定資産税の課税ミスの要因のうち最も大きな割合を占めるのが固定資産の価格の誤りであることを解説しました。

 固定資産税は地方税であり、固定資産の評価を行うのも各自治体(市町村+東京都)です。そして、自治体は固定資産の評価を行う際、総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいてこれを行う必要があります(地方税法403条1項)。自治体による固定資産の評価が「固定資産評価基準」に反している場合には、固定資産の価格も法的に誤っているということになります。この点、最高裁においても同様の考え方が示されています(最高裁平成25年7月12日判決・判タ1394号124頁)。

 「固定資産評価基準」に定められている家屋の評価方法を把握することで、どのような場合に家屋の価格に誤りがあるといえるのか理解することができます。そこで、今回は実務上、特に重要といえる「非木造家屋」(鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)の評価方法について解説します。

家屋の評価方法

 「固定資産評価基準」は、第1章で土地、第2章で家屋、第3章で償却資産の評価方法をそれぞれ定めています。そして、家屋は、木造家屋と木造家屋以外の家屋(非木造家屋)とに分けることができますが、そのいずれも「再建築価格方式」により評価が行われます。

 「再建築価格方式」とは、評価時においてその家屋を再度、建築したと仮定した場合に通常必要となる建築費を求め、これに建築時からの経過年数、損耗の程度等による減価を考慮して評価を行うものです。

 一般に、家屋の適正な価格(時価)を求める際には、次のいずれかまたは複数の方法が用いられます(国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第7章第1節・各論第1章第3節)。

  1. 原価法(対象不動産を再調達する場合の原価を求め、これに減価修正を行って対象不動産の価格を求める手法)
  2. 取引事例比較法(同種の不動産の取引事例の価格に各種の補正、修正を行い、地域要因および個別的要因の比較を行って対象不動産の価格を求める手法)
  3. 収益還元法(対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の価格を求める手法)

 しかし、「固定資産評価基準」は、家屋の評価方法としては再建築価格方式(原価法)のみ採用しています。

 木造家屋も非木造家屋も「再建築価格方式」により評価が行われますが、実務上、その価格に問題が起きやすいのは「非木造家屋」です。

再建築価格方式の概要

 再建築価格方式の全体像は、以下のとおりです(固定資産評価基準第2章第1節、第3節)。このうち、①再建築費評点数は、家屋評価の中心をなしますので、特に重要です。他方で、それ以外の②~⑤は、一定の定められた補正率を乗じるのみです。

再建築価格方式の全体像

家屋の評価額=(1)評点数 ×(2)評点1点当たりの価額

(1)評点数=①再建築費評点数 × ②損耗の状況による減点補正率 × ③需給事情による減点補正率

(2) 評点一点当たりの価額=1円 × ④物価水準による補正率 × ⑤設計管理費等による補正率

再建築費評点数

 再建築費評点数は、その家屋を再度、建築したと仮定した場合に通常必要となる建築費を意味し、家屋評価の中心をなします。再建築費評点数の計算の方法は、その家屋を初めて評価する場合(新築の家屋の場合)と2回目以降の評価の場合(既存の家屋の場合)とで異なります。

 その家屋を初めて評価する場合には、その家屋に使用されている資材や設備等の種類や量を把握し、これを点数化することで計算されます。他方で、2回目以降の評価の場合には、前回の評価の際の再建築費評点数に一定の補正率を乗じることで計算されます。

(1)その家屋を初めて評価する場合の再建築評点数の計算方法

 家屋が新築されると自治体の職員は家屋の実地調査を行い、再建築費評点数を計算します。新築家屋の再建築費評点数は、大まかにいえば、家屋の以下の部分に、どのような資材や設備が、どれだけ使用されているかを、その家屋の内訳書や図面等から把握し、それぞれの部分を点数化することで求められます(固定資産評価基準第2章第3節二)。

  1. 躯体部分(主体構造部、基礎工事、外周壁骨組、間仕切骨組)
  2. 仕上部分(外壁仕上、内壁仕上、床仕上、天井仕上、屋根仕上)
  3. 設備等(建具、特殊設備、建築設備、仮設工事、その他工事)

 たとえば、家屋の躯体部分のうち主体構造部(基礎、柱、梁、床版、小屋組、屋根版、階段等、家屋の主体となる構造部分)の再建築費評点数は、通常、その家屋に使用されている資材の種類と数量を「固定資産評価基準」の定める「別表12の2 単位当たり標準評点数」にあてはめることで求められます。たとえば、その家屋に、亜鉛めっき加工の施された鉄骨が100トン使用されている場合、294,580 × 100=29,458,000(点)が再建築費評点数として計上されます。

固定資産評価基準第2章(家屋)別表12の2 単位当たり標準評点数(一部抜粋)

固定資産評価基準第2章(家屋)別表12の2 単位当たり標準評点数(一部抜粋)

 家屋に使用されている資材の種類と数量を把握するために有益な資料が「内訳書」と呼ばれる資料で、通常、竣工時に施工会社から施主に交付されます。たとえば、部分別内訳書では、躯体部分について以下のような記載がされます。

躯体積算細目内訳書(一部抜粋)

躯体積算細目内訳書(一部抜粋)

 その家屋で使用されている資材の種類と数量を「内訳書」で把握し、これを先の「別表12の2 単位当たり標準評点数」の算出表にあてはめることで、再建築費評点数を求めることができます

 また、再建築費評点数を計算するためには、「内訳書」だけでなく、各種図面の読み取りも必要になります。たとえば、空調設備や防災設備の再建築費評点数を計算するためには、これらの設備が効用を及ぼすと想定される範囲の床面積を計算する必要があります。これは主として設備関係の竣工図から確認することができます。

 このように、その家屋を初めて評価する場合の非木造家屋の再建築費評点数は、内訳書や各種図面からその家屋に使用されている資材や設備等の種類、数量、使用面積を把握し、これを「固定資産評価基準」にあてはめることで計算されます。家屋が新築されると自治体の職員は、家屋の所有者に対して各種の資料の借用を求めますが、これは再建築費評点数を計算するためにこれらの資料が必要になるためです。自治体による再建築費評点数の計算過程は、自治体の作成する家屋の評価調書に記載されます(地方税法409条)。

家屋評価調書の一例(一部抜粋)

家屋評価調書の一例

(2)2回目以降の評価の場合の再建築費評点数の計算方法

 家屋の価格は、3年に1度、見直されます。実務上、この価格の見直しを「評価替え」といいます。大まかにいえば、評価替えの際の再建築費評点数は、前回の評価の際の再建築費評点数に、「再建築費評点補正率」(令和3年度の非木造家屋は1.07)を乗じることで計算されます(固定資産評価基準第2章第3節四)。つまり、2回目の評価の場合には新築時の再建築費評点数に一定の補正率を乗じることで計算され、3回目の評価の場合には2回目の評価の際の再建築費評点数に一定の補正率を乗じることで計算されます

 このように2回目以降に家屋を評価する場合であっても、その家屋を初めて評価した際の再建築費評点数が計算の基礎となります。自治体が各種資料からその家屋に使用されている資材や設備等の種類、数量、使用面積を正確に把握することができなかった場合、その家屋の新築時の再建築費評点数は誤っていることになりますが、その誤りの影響はそれ以降の評価にも及んでしまうことになります。そして、各種資料を読み解いてその家屋に使用されている資材等を把握するのは、その家屋を初めて評価する際の一度限りです。そのため、仮にそれが誤っていたとしてもその後、自治体がこれに気づくことは極めて稀です。納税者から指摘を受けて初めて当初のミスに気付くというのが実態です。

損耗の現況による減点補正率

 損耗の現況による減点補正率は、新築後の年数の経過に応じて生じる価格の減価を評価において考慮するものです。原則として経年減点補正率が適用されますが、積雪寒冷地域に所在する一定の家屋についてはさらに積雪寒冷地域の補正が反映されます。また、天災、火災その他の事由により家屋に通常以上の損耗が生じている場合には、損耗の程度に応じる減点補正率が適用されます(固定資産評価基準第2章第3節五)。

 損耗の現況による減点補正率は、建物の構造ごとに異なります。過去には、自治体が建物の構造の認定を誤ったために、この補正率の適用にミスが生じた事案が度々報道されています。

固定資産評価基準第2章(家屋)別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準表(一部抜粋)

固定資産評価基準第2章(家屋)別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準表(一部抜粋)

需給事情による減点補正率

 需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている家屋、所在地域の状況によりその価格が減少すると認められる家屋について、市町村長が定めた率により一定の減価補正を行うものです(固定資産評価基準第2章第3節六)。

物価水準による補正率

 物価水準による補正率は、家屋の資材費、労務費等の工事原価の地域的格差等を反映するものです。令和3年度から5年度までは、非木造家屋については全市町村を通じて1.00とされています(固定資産評価基準第2章第4節二)。

設計管理費等による補正率

 設計管理費等による補正率は、工事減価に含まれていない設計管理費、一般管理費等の費用を基礎として定めるものです。令和3年度から5年度までは、非木造家屋については全市町村を通じて原則として1.10とされています(固定資産評価基準第2章第4節二)。

まとめ

 今回は、非木造家屋の評価方法である再建築価格方式について解説しました。再建築価格方式では、各種資料を読み解き、資材や設備等の種類、数量、使用面積を1つずつ把握しなければならないため、その過程で誤りが生じやすいといわれています。また、このような作業を正確に行うためには、少なくとも一級建築士に相当する建築に関する知見が求められるため、そもそも自治体がこれを正確に行うのは困難ともいわれています。

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