固定資産税の実務上のポイント(3)- 土地の評価方法とは?宅地を中心に

税務
山田 重則弁護士 鳥飼総合法律事務所

 自治体による固定資産の価格に誤りがあると固定資産税の金額も誤っていると聞きました。固定資産税上、土地はどのように評価されるのでしょうか。

 土地は、総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいて評価されます。土地の評価方法は、地目(田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地)によって異なりますが、特に「宅地」の「市街地宅地評価法」を理解することが重要です。

解説

目次

  1. 土地の評価方法を理解する意味
  2. 土地の評価方法
    1. 市街地宅地評価法の概要
    2. 各プロセスの要点
  3. まとめ

土地の評価方法を理解する意味

 「固定資産税の実務上のポイント(2)‐ 固定資産税の決定プロセスと課税ミスの要因とは?」では、固定資産税の金額は基本的には固定資産の価格に応じて決まることや固定資産税の課税ミスの要因のうち最も大きな割合を占めるのが固定資産の価格の誤りであることを解説しました。

 固定資産税は地方税であり、固定資産の評価を行うのも各自治体(市町村+東京都)です。そして、自治体は固定資産の評価を行う際、総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいてこれを行う必要があります(地方税法403条1項)。自治体による固定資産の評価が「固定資産評価基準」に反している場合には、固定資産の価格も法的に誤っているということになります。この点、最高裁においても同様の考え方が示されています(最高裁平成25年7月12日判決・判タ1394号124頁)。

 「固定資産評価基準」に定められている土地の評価方法を把握することで、どのような場合に土地の価格に誤りがあるといえるかを理解することができます。そこで、今回は、土地の評価方法のなかでも特に重要である「宅地」(建物を建てるための土地)の評価方法について解説します。

土地の評価方法

 「固定資産評価基準」は、第1章で土地、第2章で家屋、第3章で償却資産の評価方法をそれぞれ定めています。そして、土地については、土地の地目(田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地)ごとに評価方法が定められています。このうち固定資産税の金額が大きくなり、特に問題が起きやすいのが「宅地」(建物を建てるための土地)です。

 「固定資産評価基準」では、宅地については、「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」が定められていますが、市街地を形成する地域では、「市街地宅地評価法」に基づいて評価が行われます。そこで、以下では「市街地宅地評価法」について解説します。

市街地宅地評価法の概要

 市街地宅地評価法では、以下の①~⑦のプロセスを経て各宅地の価格(評価額)が算出されます(固定資産評価基準第2章第3節)。このプロセスは、大きく分けて、(1)市街地を似たような地域に区分する段階、(2)各街路に路線価を付設する段階、(3)各宅地の個別的要因を踏まえて価格(評価額)を算出する段階の3つに分けて整理することができます。

市街地宅地評価法のプロセス

⑴ 市街地を似たような地域に区分けする

① 市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区等の用途地区に区分する。

② 各用途地区をさらに状況類似地域に区分する。


⑵ 各街路に路線価を付設する

③ 状況類似地域ごとに主要な街路標準宅地を選定する。

④ 標準宅地の適正な時価を算出する。

⑤ 標準宅地の適正な時価に基づき主要な街路に路線価を付設する。

⑥ 主要な街路に比準してその他の街路に路線価を付設する。


⑶ 各宅地の個別的要因を踏まえて価格(評価額)を算出する

⑦「画地計算法」と「所要の補正」を適用して各宅地の価格(評価額)を算出する。

市街地宅地評価法のイメージ

① 市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区等の用途地区に区分する。


② 各用途地区をさらに状況類似地域に区分する。


③ 状況類似地域ごとに主要な街路標準宅地を選定する。



④ 標準宅地の適正な時価を算出する。


⑤ 標準宅地の適正な時価に基づき主要な街路に路線価を付設する。


⑥ 主要な街路に比準してその他の街路に路線価を付設する。


⑦ 「画地計算法」と「所要の補正」を適用して各宅地の価格(評価額)を算出する。

各プロセスの要点

(1)市街地を似たような地域ごとに区分けする

① 用途地区の区分

 市町村の宅地はその利用状況に応じ、商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区に区分され、必要に応じ、さらに細かく区分されます(固定資産評価基準第1章第3節二(一)2(1))。

② 状況類似地域の区分

 各用途地区は、さらに街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて相当に相違する地域(状況類似地域)に区分されます(固定資産評価基準第1章第3節二(一)2(2))。

(2)各街路に路線価を付設する

③ 主要な街路と標準宅地の選定

 状況類似地域ごとに標準的な街路と標準的な宅地を選定します。具体的には、状況類似地域内において、道路幅員、交通接近状況、土地の利用状況、価格事情等が標準的な街路を主要な街路として選定します。また、その主要な街路に沿接する宅地から奥行、間口、形状等が標準的なものを標準宅地として選定します(固定資産評価基準第1章第3節二(一)2(2))。

 厳密にいえば、主要な街路を選定したうえで標準宅地を選定するという二段階の過程を経ますが、実務上は、主要な街路の選定と標準宅地の選定は同時に行われることが多いといえます。

④ 標準宅地の適正な時価の算出

 標準宅地の適正な時価を算出します。標準宅地の適正な時価は、「評価替え」が行われる年の前年の1月1日時点の「地価公示価格」および不動産鑑定士による鑑定評価価格を活用し、これらの価格の7割を目途とされます(固定資産評価基準第1章第12節一)。

 「評価替え」とは、自治体による3年に1度の固定資産の価格の見直しのことです。評価替えの年を法律上、「基準年度」といいます(地方税法341条6号)。

 「地価公示価格」とは、国(国土交通省土地鑑定委員会)が毎年1月1日時点の標準地(令和2年は全国26,000地点)の正常な価格を、不動産鑑定士による鑑定評価により決定するものです。地価公示価格は、土地取引の際の指標や不動産鑑定の規準等になります。基準地が標準宅地としても選定された場合には、通常、改めて不動産鑑定士が標準宅地として鑑定評価をするのではなく、地価公示価格をもとに標準宅地の適正な時価を算出します。

 このように標準宅地の適正な時価は、不動産鑑定士という専門職の鑑定に基づくものです。なお、一般に、「固定資産税評価額は時価の7割である」と言われるのは、このように、個々の宅地の価格の前提となる標準宅地の適正な時価が地価公示価格または鑑定評価価格の7割を目途として決定されているためです。

⑤ 標準宅地の適正な時価に基づく主要な街路の路線価の付設

 標準宅地の適正な時価に基づき主要な街路の路線価(1平方メートル当たりの土地の価格)を付設します。

 なお、実務上は、不動産鑑定士の作成した鑑定評価書の「1平方メートル当たり標準価格」の7割を路線価として付設します(平成4年8月20日付け事務連絡 自治省税務局資産評価室土地係長通知)。

⑥ その他の街路の路線価の付設

 主要な街路の路線価を基礎として、その他の街路の路線価を付設します(固定資産評価基準第1章第3節二(一)3(2))。実務上は、主要な街路とその他の街路との街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件(価格形成要因)とを比較し、主要な街路の路線価を加減することで、その他の街路の路線価を付設します。

 たとえば、商業地区において、その他の街路は、主要な街路よりも「最寄り駅から近い」という交通接近条件があるとします。この場合、その他の街路は、主要な街路と比べて集客が見込めるため、主要な街路と比較して、たとえば10%の増額がなされます。他方で、その他の街路が主要な街路よりも「容積率が低い」という行政的条件がある場合には、高層のビルが建てづらくなり、土地の利用価値が下がるため、主要な街路と比較して、たとえば8%の減額がなされます。このように、その他の街路の路線価は、主要な街路との価格形成要因の違いに応じて増減が行われることで付設されます。

 なお、一般財団法人資産評価システム研究センターがWEB上で公開している「全国地価マップ」の「固定資産税路線価等」では、各地域の標準宅地、主要な街路の路線価、その他の街路の路線価といった情報を確認することができます。


「全国地価マップ」の「固定資産税路線価等」

全国地価マップ

出典:全国地価マップ

(3)各宅地の個別的要因を踏まえて価格(評価額)を算出する

⑦「画地計算法」と「所要の補正」の適用による各宅地の価格の算出

 ここまで解説したプロセスにより、各地域の主要な街路とその他の街路の路線価が付設されます。そして、各宅地の価格は、各宅地に「画地計算法」と「所要の補正」を適用することで算出されます。

ア 画地計算法

 「画地計算法」は、「固定資産評価基準」(土地)の「別表第3画地計算法」にて詳細に定められています。具体的には、その宅地が接する街路の路線価の価格、接する街路の本数、間口や奥行の長さによる価格補正、宅地の形状等の個別的要因を踏まえて、その宅地の価格が算出されます。


画地計算法の具体例(角地)

画地計算法

 角地にある宅地の評価は、路線価の高い方の路線(正面路線)に、路線価の低い方の路線(側方路線)の影響を加算して計算します。具体的には以下のとおりです。

(1)基本1平方メートル当たり評点数

  = 1,000(正面路線)× 0.97(奥行35mの奥行価格補正率)= 970

(2)加算1平方メートル当たり評点数

  = 900(側方路線)× 1,00(奥行20mの奥行価格補正率)× 0.08(側方路線影響加算率)= 72

(3)1平方メートル当たり評点数

  = 970(1)+ 72(2)
  = 1,042

(4) 評点数(価格)

  = 1,042(3)× 地積(20 × 35)
  = 729,400


イ 所要の補正

 「画地計算法」には、価格を増額する要因として複数の街路に接する場合(角地、二方路線地、三方路線地、四方路線地)が定められており、価格を減額する要因として不整形地(形の悪い土地)、無道路地(街路に接していない宅地)、間口が狭小な土地、奥行が長大な土地、がけ地(傾斜により使用できない部分を含む宅地)の場合が定められています。しかし、各自治体は、これら以外にも独自に「所要の補正」として価格を増減させる要因を定めることができます(固定資産評価基準第1章第3節二(一)4)。実務上は、以下のような要因を減額要因として定める自治体が多いといわれています。各自治体の所要の補正の内容は、「土地評価要綱」や「土地評価事務取扱要領」といった資料に記載されており、WEB上でこれを公開する自治体もあります。

減額要因とされることの多い要因

  1. 接面道路との高低差のある宅地
  2. 接面道路の幅員の狭い宅地
  3. 接面道路と土地との間に用排水路等のある宅地
  4. 接面道路に歩道橋が設置されている宅地
  5. 新幹線、在来線、空港、高速道路等に近隣する宅地
  6. 土砂災害防止法等の規制区域内の宅地
  7. 地下鉄、公共下水道等の地下阻害物のある宅地
  8. 建築基準法上の規制のある宅地
  9. 高圧線下の宅地
  10. 都市計画予定地を含む宅地


所要の補正の具体例(高低差補正)

画地計算法

 先ほどの場合と同じく角地の場合ですが、接面道路(正面路線)よりも宅地が低い位置にあります。この宅地の存在する自治体においては、「所要の補正」として次のような道路低差補正率表を定めているとします。この宅地の価格は、以下のように計算します((2)の計算までは先の例と同じです)。

(1)基本1平方メートル当たり評点数

  = 1,000(正面路線)× 0.97(奥行35mの奥行価格補正率)= 970

(2)加算1平方メートル当たり評点数

  = 900(側方路線)× 1,00(奥行20mの奥行価格補正率)× 0.08(側方路線影響加算率) = 72

(3)1平方メートル当たり評点数

  =(970(1)+ 72(2))× 0.85(道路低差補正率)
  = 886

(4)評点数(価格)

  = 886(3)× 地積(20 × 35)
  = 620,200

まとめ

 今回は、実務上特に重要である「宅地」の評価方法である「市街地宅地評価法」について解説しました。次回は、建物の評価方法について解説をします。

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