固定資産税の実務上のポイント(2)- 固定資産税の決定プロセスと課税ミスの要因とは?

税務
山田 重則弁護士 鳥飼総合法律事務所

 固定資産税はどのようなプロセスを経て決定されるのでしょうか。また、固定資産税の課税ミスの要因にはどのようなものがあるのでしょうか。

 固定資産税は、固定資産の価格の決定、課税標準や税額の特例の適用を経てその金額が決定されます。
 課税ミスの要因は、土地と家屋とで異なりますが、そのいずれにおいても最大の課税ミスの要因は、価格の誤りです。

解説

目次

  1. 土地、家屋の固定資産税の決定プロセス
    1. 固定資産税の概要
    2. 税額決定までのプロセス
  2. 課税ミスの要因
  3. まとめ

土地、家屋の固定資産税の決定プロセス

 「固定資産税の実務上のポイント(1)− 課税ミスがあった場合、払いすぎた固定資産税は全額還付されるか?」では、固定資産税の課税ミスが多発していることやそのリスクについて解説しました。その際に言及した新聞報道によれば、自治体は十数年以上、過大徴収の事実に気づかず、その結果、数億円もの固定資産税を過大に徴収していました。数十年にわたって過大徴収がなされたとしてもわずか5年の還付にとどまる可能性があるというのは、納税者にとって大きなリスクです。

 このように固定資産税の過大徴収のリスクは大きいため、特に大規模な土地、家屋を所有し、多額の固定資産税を納付している納税者としては、 固定資産税の税額の推移について注意を払い、必要に応じて自らその金額の適正性について検証すべきといえるでしょう。もっとも、固定資産税の税額が決定されるまでのプロセスは広く知られているとはいえません。そこで、まずは土地と家屋の固定資産税の決定プロセスを理解するうえで特に重要なポイントを解説します。

固定資産税の概要

 市町村(東京23区は東京都)は、毎年1月1日時点の土地、家屋の所有者に対し、固定資産の価格に応じて固定資産税を課税します。土地と家屋の他に償却資産に対しても固定資産税は課されますが、以下では土地と家屋の固定資産税を解説の対象とします。

(1)賦課期日

 毎年1月1日を「賦課期日」といいます(地方税法359条)。固定資産税の納税義務者や固定資産の価格等は、毎年1月1日の時点で判断されます(地方税法349条1項)。すなわち、市町村は、X年1月1日時点の所有者を納税義務者、同時点の固定資産の価格を課税標準として、X年4月1日からX+1年3月31日までの年度の分の固定資産税を課税します。

 たとえば、X年1月2日に固定資産の売買がなされた場合、X年1月1日時点の固定資産の所有者は売主ですので、X年度の固定資産税は売主に課されます。また、たとえば、X年1月2日に家屋が建てられた場合、X年1月1日時点で家屋は存在していないため、この家屋の固定資産税は翌年度のX+1年度から課されます。

(2)固定資産評価基準

固定資産税の税額は固定資産の価格に応じて決まります(地方税法349条)。すなわち、基本的には、固定資産の価格(課税標準)に1.4%の税率を乗じてその金額を計算します(地方税法350条)。

 そして、この固定資産の価格は、各自治体が総務省の定める「固定資産評価基準」に基づいて評価をします(地方税法403条1項)。

(3)評価替え

 上記のとおり、固定資産税の税額は固定資産の価格に応じて決まります。そして、自治体による固定資産の価格の見直しは3年に1度行われます(地方税法349条1項~3項)。実務上、この価格の見直しを「評価替え」といいます。また、この評価替えの年を法律上、「基準年度」といいます(地方税法349条1項)。公平な課税という観点からは、本来は、毎年、評価替えを行うべきですが、土地、家屋は膨大な数にのぼるため、現実には毎年、評価替えをするのは不可能です。そこで評価替えは3年に1度とされています。固定資産の価格は、原則として3年間は据え置きとなり、その結果、固定資産税の税額も3年間は変わらないということになります。

(4)審査の申出

 納税者は、自治体が決定した固定資産の価格に不服がある場合、通常、納税通知書の交付を受けてから3か月以内に、各自治体の固定資産評価委員会に審査の申出をする必要があります

 そして、評価替えの年(基準年度)は、固定資産の価格を全面的に争うことができますが、評価替えの年以外の年は、非常に限られた場合にしか固定資産の価格を争うことができません。

 したがって、実務上、固定資産の価格を法的に争うことができるのは、評価替えの年(基準年度)で、かつ、納税通知書の交付を受けてから3か月以内に審査の申出をした場合に限定されています。すなわち、固定資産の価格に不服がある場合、法的には、3年に1度、しかも、わずか3か月間あまりの間に審査の申出という手続を行う必要があるということになります。なお、2021年はこの3年に1度の評価替えの年にあたります。

(5)まとめ

 固定資産税は、毎年1月1日(「賦課期日」)時点の固定資産の所有者に対し、同日時点の固定資産の価格に応じて課税されます。そして、固定資産の価格は、「固定資産評価基準」に基づいて計算されます。
 自治体による固定資産の「評価替え」は3年に1度であり、その間、税額も変わりません。また、実務上、固定資産の価格を法的に争うことができるのも3年に1度であり、通常、納税通知書が届いてから3か月以内に、固定資産評価委員会に対し「審査の申出」をする必要があります。

税額決定までのプロセス

 土地、家屋の固定資産税は、基本的には、その価格に1.4%の税率を乗じて計算します。より具体的には、以下のプロセスを経て税額が決定されます。

  1. 市町村の固定資産評価員等が固定資産の実地調査を行います(地方税法408条)。
  2. 固定資産評価員等が固定資産の評価を実施し、評価調書を作成のうえ、市町村長へ提出します(地方税法409条)。
  3. 市町村長は、毎年3月31日までに固定資産の価格等を決定します(地方税法410条)。価格等の決定は、固定資産評価基準と評価調書に基づいて行われる必要があります(地方税法403条1項、410条1項)。
  4. 市町村長は、固定資産の価格等を決定した場合は、ただちにこれを固定資産課税台帳に登録のうえ、公示しなければなりません(地方税法411条)。
  5. 固定資産税は、土地については土地課税台帳等に登録された価格、家屋については家屋課税台帳等に登録された価格を課税標準として計算されます(地方税法349条)。
  6. 必要に応じて課税標準の特例を適用して課税標準を修正します。たとえば、住宅用地については、その課税標準を土地の価格の3分の1または6分の1とする課税標準の特例があります(地方税法349条の3の2)。
  7. 課税標準に税率を乗じて固定資産税を算出します。固定資産税の標準税率は、1.4%です(地方税法350条)。
  8. 必要に応じて土地の負担調整措置による税額の減額(地方税法附則18条)や新築住宅等の税額の減額(地方税法附則15条の6ないし11)等を適用します。
  9. 以上の過程を経て税額が確定した後、市町村は、納税者に対し納税通知書、課税明細書の交付を行い、固定資産税の徴収がなされます(地方税法364条)。納税通知書、課税明細書の交付は、通常、毎年4月から6月にかけて行われます。

 以上のとおり、固定資産税は、基本的には、固定資産の価格(課税標準)に1.4%の税率を乗じることで計算されますが、課税標準の特例や税額の特例によって課税標準や税額が修正されることもあります。

 このような税額決定までのプロセスを踏まえると、納税者が固定資産税の税額を検証する際には、「固定資産の価格が適正かどうか」、「課税標準の特例や税額の特例は適切に適用されているかどうか」といった点に着目すべきといえます。

課税ミスの要因

 固定資産税の課税ミスが多発していることはすでに解説したとおりですが、以下では、固定資産税の課税ミスの要因について解説をします。総務省が平成24年8月28日に公表した調査結果によれば、課税ミスが生じた要因は次のとおりです(平成24年8月28日付け総務省「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」)。

土地 家屋
① 課税・非課税認定の修正 7.5% 1.4%
② 新増築家屋の未反映 20.6%
③ 家屋滅失の未反映 23.6%
④ 現況地目の修正 15.8%
⑤ 課税地積・床面積の修正 3.1% 2.9%
⑥ 評価額の修正 29.9% 29.7%
⑦ 負担調整措置・特例措置の適用の修正 22.9% 1.9%
⑧ 納税義務者の修正 15.2% 13.4%
⑨ その他 5.6% 6.4%

 ①は、本来、非課税となる固定資産に誤って課税をしてしまった場合です。たとえば、行政が取得した土地、文化財として指定された家屋およびその土地、保安林として指定された土地、公道として利用されている土地、宗教法人や学校法人、公益社団法人、社会医療法人、社会福祉法人等の所有する一定の固定資産などは非課税となります(地方税法348条、附則14条)。固定資産の状況の異動について、都市計画担当課、林政担担当課、文化財担当課、道路担当課等の関係部局は把握しているものの、固定資産税課に共有されず、その結果、課税ミスが生じることがあるようです。

 ②と③は、家屋が新築、増築または滅失した事実を自治体が把握することができず、課税漏れや従前通りの課税をしてしまった場合です。

 ④は、土地の地目の認定を誤ってしまった場合です。土地の固定資産税は土地の価格に基づいて決定されますが、土地の価格の評価方法はその土地の地目(田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地)によって異なります(固定資産評価基準第1章第1節 − )。そのため、地目の認定を誤ると、その価格(評価額)も誤っているということになります。

 ⑤は、土地の地積や家屋の床面積の認定を誤ってしまった場合です。土地の地積や家屋の床面積は、土地や家屋を適正に評価するうえで必須となる基礎的な情報です。

 ⑥は、土地や家屋の価格(評価額)に誤りがあった場合です。上記で解説したとおり、固定資産の価格は、固定資産評価基準に基づいて適正に決定される必要があります(地方税法403条1項)。

 ⑦は、課税標準や税額の特例の適用ミスです。

 ⑧は、納税義務者の認定誤りです。マンション管理組合法人単独所有の土地の納税義務者を区分所有者と誤って認定した例や所有権移転登記後も納税義務者を従前の所有者と誤って認定した例などがあげられます。

 以上のとおり、課税ミスの要因は次のように区分することができます。

  • 課税客体となる土地や家屋の現況の把握ミス(①~③)
  • 価格(評価額)のミス(④~⑥)
  • 課税標準や税額の特例の適用誤り(⑦)
  • 納税義務者の認定ミス(⑧)

 ④の地目の認定ミスや⑤の土地の地積や家屋の床面積の認定ミスは、⑥の評価額のミスとは別にあげられていますが、理論上は固定資産の価格(評価額)の誤りに含まれます。

 上記の総務省の調査結果では、①~⑨の具体的な内容については明らかにされていませんが、財団法人資産評価システム研究センターはこの点に関する調査研究を行い、その結果を公表しています(平成25年3月財団法人資産評価システム研究センター「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究-課税に対する信頼の確保等について-」)。財団法人資産評価システム研究センターは、すべての自治体を会員とし、主として固定資産の調査研究、自治体職員の研修を行う団体です。自治体が固定資産の評価を行ううえで参考にすべき調査研究、図書の販売等も行っています。

まとめ

 固定資産税は、固定資産の価格の決定、課税標準や税額の特例の適用を経てその金額が決定されます。そして、この過程において、最もミスが生じやすいのが価格の決定です。そこで、次回は、土地の評価方法について解説します。

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する