偽造品の輸入を税関で差し止めるにはどうすればよいか

知的財産権・エンタメ

 海外で製造され、日本に輸入される偽造品について、税関で差し止めてもらうことはでき可能ですか。可能であれば、どのような対策を行えばよいですか。

 海外で製造された偽造品の日本への輸入を、商標権侵害、不正競争防止法等を理由とする知的財産権侵害物品として税関で差し止めてもらうために、税関に対し輸入差止申立てを行うことが、水際対策として有効です。

解説

目次

  1. 知的財産侵害物品の輸入差止申立て
  2. 輸入差止申立ての対象となる知的財産侵害物品
  3. 輸入差止申立手続の概要
  4. 認定手続の概要と手続の流れ
  5. 知的財産権侵害物品の輸入の刑事罰

知的財産侵害物品の輸入差止申立て

 税関は、知的財産権を侵害するおそれがある物品の輸入・輸出を差し止めることができます(関税法69条の2、69条の11)。
 税関は、知的財産権を侵害するおそれのある物品の輸入を発見した場合には、職権でこれを差し止める権限を有しますが、税関による多くの輸入差止は、権利者から知的財産侵害物品の輸入差止申立を受けた物品について行われています。
 したがって、海外で製造・販売された偽造品が日本に輸入されることを防止するためには、税関に対し、知的財産侵害物品の輸入差止申立を行うことが有効です。

輸入差止申立ての対象となる知的財産侵害物品

 輸入差止申立ての対象となる知的財産侵害物品は、以下の各知的財産権を侵害する物品となります(関税法69条の11第1項9号)。

  1. 特許権
  2. 実用新案権
  3. 意匠権
  4. 商標権
  5. 著作権・著作隣接権
  6. 回路配置利用権
  7. 育成者権
  8. 不正競争防止法(2条1項1号~3号、11号、12号)

 上記の知的財産権のうち、他人が製造・販売する真正品のロゴやマークまたはこれと類似するロゴ・マークを、第三者が権限なく使用して、他人の真正品をコピーまたは模倣した商品(「偽造品」)の輸入差止を求める申立てを行う場合には、商標権侵害と不正競争防止法2条1項1号から3号規定の不正競争行為を被侵害権利として行うことが通常です。

輸入差止申立手続の概要

 輸入差止申立ては、税関所定の輸入差止申立書の書式に必要事項を記載し、税関指定の資料等を添付して、全国の9税関の本関に配置されている「知的財産調査官」のうち、いずれかに提出することによって行います。

 申立書には、主として対象権利の内容・存続期間、権利者、輸入差止を求める物品の品名等、真正品と偽造品の識別ポイント等を記載します
 申立書に添付する主たる資料としては、委任状(代理人を選任する場合)、知的財産権の登録原簿謄本および公報知的財産権侵害の事実の疎明資料真正品と偽造品の識別ポイントの説明資料等があります。
 輸入差止申立ての有効期間は最長4年間で、申立人の希望する期間を設定することが可能です。ただし、申立ての対象権利の存続期間が4年以内に満了する場合は、その権利の存続期間の最終日までが有効期間となります。輸入差止申立ては、対象権利の存続期間中、更新することができます。
 税関への輸入差止申立て自体に手数料はかかりませんが、申立書の作成・提出を弁護士・弁理士に委任して行う場合には、その費用がかかります。

認定手続の概要と手続の流れ

 税関が、輸入貨物の検査を行い、輸入差止の対象となる知的財産権を侵害する物品に該当すると疑われる貨物(「侵害疑義物品」)を発見した場合には、その侵害疑義物品を差し止めた上で、知的財産侵害物品に該当するか否かを認定するための手続(「認定手続」)を開始し、以下の流れにより手続が進みます。

(1) 認定手続が開始されると、税関は、権利者および輸入者に対し、認定手続開始通知書を送付し、権利者に対する通知書には、疑義物品の内容、点数、輸入者の氏名・名称と住所が記載されます。また、輸入申告書等の書類から生産者が判明している場合には、その氏名・名称、住所も通知されます。

(2) 税関は、輸入者に対し、疑義物品の輸入差止を争う意思があるか否かを書面で確認し、争う意思がある場合には、認定手続開始通知を受けてから10営業日以内に、その旨の意見書を提出するよう求めます。

(3) 輸入者が輸入差止を争う意見書を税関に提出しない場合、税関は、権利者の輸入差止申立に基づく情報および資料に基づき疑義物品を、知的財産権を侵害する物品と認定し、輸入を差し止めます。

(4) 輸入者が輸入差止を争う旨の意見書を税関に提出した場合、税関は、権利者および輸入者の双方に対し、10営業日以内に、疑義物品の真贋、その他知的財産権侵害の有無に関する意見および証拠を提出するよう求めます。

(5) 上記の意見・証拠の提出期間中、権利者・輸入者双方とも、自ら税関を訪問して疑義物品を点検する方法か、税関から電子メールで送付される疑義物品の画像を調査する方法により、疑義物品の真贋確認を行うことができます。

(6) 権利者は、疑義物品が偽造品であることを確認した後、税関に対し、疑義物品が知的財産権を侵害する物品(偽造品・侵害品)である旨の意見書を提出します。
 また、疑義物品が、権利者が輸入差止申立てを行った物品とは異なる種類の物品である場合には、疑義貨物が真正品ではない旨の証拠としての真贋鑑定書を提出します。真贋鑑定書には、疑義貨物と真正品の仕様の相違を識別ポイントとして記載します。

(7) 税関は、権利者・輸入者双方の提出した意見および証拠を審理した後、疑義物品が侵害品であるかどうかを判断し、税関が疑義物品を知的財産侵害物品と認定した場合、税関は、その旨の認定通知書を権利者・輸入者の双方に送付します。この認定通知書の送達日から3か月以内に輸入者による不服申立て等がない限り、税関は、知的財産侵害物品として認定した貨物を没収し、廃棄処分します(関税法69条の11第2項)。
 逆に、税関が、疑義物品を知的財産権侵害物品に該当しないと認定した場合には、税関は、その旨の認定通知書を権利者・輸入者の双方に送付し、当該貨物について輸入を許可します。

税関ホームページ「知的財産侵害物品の取締」より)

知的財産権侵害物品の輸入の刑事罰

 知的財産侵害物品を故意に輸入した者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科の刑罰を課せられます(関税法109条2項)。代表者・従業員が、法人の業務として、知的財産侵害物品を故意に輸入した場合には、その法人に対しても1,000万円以下の罰金が課せられます(関税法117条1項)。
 したがって、税関は、知的財産侵害物品の疑いがある疑義貨物を発見した際、その輸入行為が悪質と判断した場合は、上記の関税法違反による刑事責任を追及するため、犯則調査を行うことがあり、その結果、輸入者に上記の刑事罰が課させることがあり、また、悪質の程度によっては、輸入者が関税法違反により逮捕される場合もあります。

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