返済が困難になった融資先から一時停止通知が届いた場合の対応方法

事業再生・倒産

 当社は、A社に対して融資をしている銀行ですが、A社から、経営状況が悪化し約定通りの返済が困難になったため元本返済を一旦停止したいことや、相殺・担保権の実行等を控えてほしいということが記載された通知書が届きました。その通知書には、今後について説明をしたいので、金融機関説明会を開催するとの記載もありました。当社は、返済停止等の要請に応じなければいけないのでしょうか。
 また、説明会があるとのことですが、今後、どのようになっていくのでしょうか。

 要請に応じる法的義務はありませんが、従前の経緯等から見て著しく不合理といった事情がない限り、一旦は要請に応じて、債務者企業の再建の状況・推移を見守ることが一般的となりつつあります(ただし、具体的に返済条件を変更する合意書・契約書等を作成して要請に応じる例から、そこまではしないものの、相殺や担保権の実行を控え、債務者企業の再建の状況・推移を一定期間見守るという形で事実上応諾する例など、事案ごとに様々です)。
 金融機関説明会の後は、A社において再建手法・事業再生計画案を検討・立案・提出することになりますので、その合理性・実現可能性等を検討することになります。

解説

目次

  1. 一時停止通知
  2. 債務者企業の状況の確認
    1. まずは速やかに状況確認を
    2. 照会するべき内容
  3. 金融機関説明会
  4. 一時停止依頼への同意・応諾
    1. 金融機関の判断状況
    2. 要請への応諾態様は事案ごとに様々
  5. 金融機関説明会後の推移
    1. 債務者による再生計画案の検討・立案
    2. 債権者による再生計画案の検討
    3. 一時停止通知受領後の流れ

一時停止通知

 経営状況が悪化し、約定の返済が困難になった債務者企業が、経営を立て直すために、その間の返済条件の変更(いわゆるリスケジュール)や一時的な元本返済の停止、相殺・担保権の実行等を控えることを金融機関に依頼するための書面を「一時停止通知」といいます。
 事案により、債務者企業が金融機関に求める内容が異なり、場合によっては、元本だけでなく、利息の支払いの停止を依頼する場合もあります。いずれにせよ、 債務者が何を依頼しているかを正確に理解することが重要 です。
 債権者としては、社内における決裁の時間的な問題もありますので、受け取った一時停止通知の趣旨が不明な場合には、金融機関説明会を待たず、債務者や債務者の代理人弁護士らに照会することも必要でしょう。

債務者企業の状況の確認

まずは速やかに状況確認を

 一時停止通知を受け取った場合には、債務者企業の状況を速やかに確認することが必要です。メインバンクであれば、事前に説明・相談を受けている場合もありますが、そうでない場合は、一時停止通知によってはじめて債務者企業の窮境を知る場合もあるかもしれません。金融機関説明会でも説明がなされると思いますが、やはり、いち早く状況を確認する方が良いでしょうから、債務者企業や債務者企業の代理人弁護士らに照会し、状況確認に努めるべきでしょう。

照会するべき内容

 照会内容としては、債務者企業の当面の資金繰りや事業継続の可否(一時停止の依頼に応じない場合の民事再生や破産等の法的手続への移行の可能性)、一時停止の対象債権者の範囲、メインバンクその他の関係者の理解・協力の有無・程度、再建手法(自力再建するのかスポンサーを選定するのか)、今後の進行のスケジュール感、仕入先・得意先がこの状況を認識しているか、などが考えられます。
 なお、債務者企業としては、仕入先・得意先への信用不安を生じさせないように、秘密裏に、金融機関にのみ一時停止の通知を送付しているはずですから、情報の取扱いには注意してください。

主な照会内容
  • 当面の資金繰り
  • 事業継続の可否(一時停止の依頼に応じない場合の民事再生や破産等の法的手続への移行の可能性)
  • 一時停止の対象債権者の範囲
  • メインバンクその他の関係者の理解・協力の有無・程度
  • 再建手法(自力再建するのかスポンサーを選定するのか)
  • 今後の進行のスケジュール感
  • 仕入先・得意先がこの状況を認識しているか

金融機関説明会

 以上のような状況の中で、金融機関説明会が開催されます。金融機関説明会では、そのような状況に陥った原因や、今後の再建手法、スケジュール感、一時停止の依頼内容などについて説明されるのが一般的ですので、ここでも債務者企業の状況等を確認できます。

一時停止依頼への同意・応諾

金融機関の判断状況

 以上のような状況確認の上で、貴社としては、債務者企業の一時停止の依頼に応じるかどうかを判断することになります。依頼に応じるか否かは、最終的には、各金融機関の判断に委ねられています。
 ただし、平成21年12月4日に施行された中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(いわゆる円滑化法)では、金融機関に中小企業者に対する円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべきことを要請しており、円滑化法自体は平成25年3月末に期限を迎えたものの、上記要請は円滑化法の終了後も変わっていません。

参考:「中小企業等に対する金融円滑化対策について」(金融庁)

 また、法的手続に移行した場合、仕入先にも迷惑をかけることになるため事業価値が大きく毀損し、通常は、私的整理による再建に比べて弁済額が減少することが見込まれます(「私的整理とはどのような手続きか」参照)。
 そのため、現在の実務では、従前の経緯等を見ると私的整理を進めることが著しく不合理であるとか、私的整理を進めることにより無用に資産が散逸するおそれがあるといった事情がない限り、金融機関は、一旦は要請に応じているのが実情です。

要請への応諾態様は事案ごとに様々

 ただし、要請に応じるといっても、具体的に返済条件を変更する合意書・契約書等を作成して要請に応じる例から、そこまではしないものの、相殺や担保権の実行を控え、債務者企業の再建の状況・推移を一定期間見守るという形で事実上応諾する(再建手続を進めることに反対はしない)例など、事案ごとに様々です。
 なお、合意書・契約書等の作成を求められる場合は、具体的な書面の内容のほか、作成時期はいつか、窓口は誰になるのかなど、手続面も確認すると良いでしょう。

金融機関説明会後の推移

債務者による再生計画案の検討・立案

 金融機関説明会以降の流れとしては、債務者企業側で再建手法を検討・立案して、再建手法とともに、金融機関への弁済方法を明示した事業再生計画案が提案されることになります。
 再建手法としては、まずは債務者企業が、金融機関からリスケジュールの支援を得て、自力で再建することを検討することになるのが一般的です。
 自力再建が難しい場合は、スポンサーの支援を募ることを検討することになります。
 また、それぞれの再建手法に応じて、貸付債権の減免が求められることがあります。   

債権者による再生計画案の検討

 金融機関としては、事業の継続可能性、弁済額の多寡、実現可能性等の諸般の事情を踏まえ、債務者企業の提案する事業再生計画案が合理性を有する妥当なものであるかどうかを検討することになります。
 事案によっては、当該事業再生計画案の合理性・妥当性の担保(第三者による検証)と、金融機関調整のため、手続の進め方について一定の指針が示されている準則型私的整理手続が利用されることもあります。

 詳しくは、以下の設問をご参照ください。

一時停止通知受領後の流れ

 一時停止通知を受領した後の流れは以下のとおりです。

一時停止通知受領後の流れ

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する