【連載】改正犯罪収益移転防止法に企業はどう対応するべきか?

ファイナンス

目次

  1. FATFとは
  2. FATF勧告遵守の必要性
  3. 平成26年犯収法改正の経緯
    1. FATF勧告に基づく犯罪収益移転防止法の改正
    2. マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会の設置と2度目の犯収法改正
  4. 本連載のアプローチ

FATFとは

 FATF(Financial Action Task Force : 金融活動作業部会。「ファトフ」と読みます)は、マネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策(以下、「マネロン等対策」といいます)における国際協力を推進する政府間会合であり、1989年(平成元年)にフランスのパリで開催されたアルシュ・サミットでの経済宣言を受けて設立されたものです
 当初は麻薬犯罪に関する資金洗浄防止を目的とした金融制度の構築を主な目的としていましたが、平成13年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件発生以降はテロ組織への資金供与の対策にも取り組んでいます。 現在、34の国・地域および2の国際機関が参加しており、我が国を含め、G8各国もこれに加盟しています。

FATF勧告遵守の必要性

 FATFは、その主な活動として、各国が遵守すべき国際基準(FATF勧告)を策定し、参加国における勧告の遵守状況を監視するため相互審査を行っています。FATF勧告に沿った法整備等がなされないと、我が国の金融機関や法人および個人の海外取引に支障が生じる可能性があり、また、我が国がマネロン等対策の抜け穴になるリスクがあります。
 こうしたことから、我が国としても、FATF勧告を遵守し、グローバルスタンダードなマネロン等対策に真摯に取り組む必要があります。

平成26年犯収法改正の経緯

FATF勧告に基づく犯罪収益移転防止法の改正

 我が国については、平成20年10月に、第3次FATF相互審査の結果、すなわち勧告毎の評価と指摘が公表されましたが、FATF勧告の多くが「遵守できていない」(non-compliant)または「一部しか遵守できていない」(partly-compliant)という状況であり、改善に向けたフォローアップが求められることになりました。

 FATF勧告は、マネロン等対策について網羅的な国際基準を定めたものであり、その内容は多岐にわたりますが、このうち顧客管理の強化という観点からは、我が国では「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯罪収益移転防止法」または「犯収法」といいます)により対応することとされています。同法は、上記第3次FATF相互審査の結果を受け、まず平成23年に同法の一度目の改正が行われました(同改正法については、平成25年4月1日より施行されています)。

マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会の設置と2度目の犯収法改正

 しかしながら、FATFからは平成23年の改正内容では、なおFATF勧告への対応が不十分であるとの指摘がなされ、また、FATFは平成24年2月にFATF勧告を改訂し(これを一般的にFATF第4次勧告といいます)、日本を含めFATF加盟国については、この第4次勧告に基づく相互審査も今後予定されています。
 こうしたことを受け、警察庁は、第3次対日FATF相互審査結果のフォローアップやFATF勧告の改訂など、マネロン等対策を取り巻く内外の情勢の変化を踏まえ、我が国におけるマネロン等対策に関わる新たな制度設計について幅広く検討を行うため、平成25年6月に、「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会」を設置しました。
 本懇談会においては、平成25年6月から12月にかけて計5回、我が国のマネロン等対策のあり方について議論が進められたところ、平成26年7月17日にその成果物として「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会報告書」(「懇談会報告書」)が公表されました。
 その後、警察庁を中心に、犯収法の改正法案が取りまとめられ、国会における審議を経て、同法案は平成26年11月19日に可決成立しました。(「平成26改正犯収法」)。公布は同月27日です。
 その後、平成26年改正犯収法の政省令案のパブリックコメント結果(「パブコメ結果」)が平成27年9月18日に公表され、平成26年改正犯収法およびその政省令については、いよいよ本年10月1日より本格施行されることになりました。

本連載のアプローチ

 本連載では、懇談会で議論された以下の10の論点を踏まえた改正内容を中心に金融機関を始めとする特定事業者に求められる実務対応につき、連載で解説します。

  1. 関連する複数の取引が敷居値を超える場合の取扱い
  2. 写真なし証明書の取扱い
  3. 取引担当者への権限の委任の確認
  4. 法人の実質的支配者
  5. PEPsの取扱い
  6. 継続的な取引における顧客管理
  7. リスクの高い取引の取扱い
  8. リスクの低い取引の取扱い
  9. 既存顧客
  10. リスクベース・アプローチ

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